【律side】俺は今、事務所のソファで小島マネージャーと向かい合っていた。「律。あなたは今、人生で最も重要な岐路に立っているの」彼女の声は、いつになく厳しい。「寧々という女性との関係が、あなたのキャリアの足枷になっていることが分からない?」俺は、唇をきつく噛み締める。「彼女は関係ない。俺の仕事の問題です」「違うわ。あなたが最近、仕事に集中できていないのは明らか。心ここにあらず、という状態が続いている」「……っ」小島さんの指摘に、俺は何も言えなかった。確かに最近、撮影中でも寧々のことが頭から離れない。彼女の寂しそうな表情や、自分に気を遣ってくれる優しさを思い出すたび、胸が痛んだ。「彼女を……失いたくない」俺は、静かにつぶやく。「だったら、今は距離を置きなさい。あなたが本当に彼女を愛しているなら、今は耐える時よ」小島さんの言葉に、俺の心は引き裂かれそうになった。寧々と、距離を置くなんて……。彼女とは、俺が上京して以来、ずっと離れていて、やっと再会できたのに……!俺は、窓の外に目をやる。寧々を守りたい。でも、同時に仕事への責任もある。パリコレ出演は、やっと掴んだチャンスなんだ。俺は、どうしたらいいんだろう。***その夜。マンションに帰った俺は、リビングで一人待っている寧々の姿を見つけた。もう日付が変わったのに、まだ起きていたのか……。ソファに腰かける彼女は小さく縮こまって、まるで傷ついた小鳥のように見える。こんなふうに、俺は寧々を傷つけていたのか……。その姿を見た瞬間、俺の心の中で何かが決定的に変わった。仕事は大切だ。だが、寧々を失うことなんてやっぱり考えられない。最近は、小島さんに言われたこ
Last Updated : 2025-10-12 Read more