บททั้งหมดของ 少女がやらないゲーム実況: บทที่ 31 - บทที่ 40

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30.宮木野線

 私はもう一度コッヘルを振るって犬歯を転がしてみた。 チンチロリン。 賭の合図のような音がひび割れたアスファルトに染み込んでいく。でも犬歯は転がるばかりで特にどこを指すという事はなかった。「どこも指さないな」 Dはバックパックを背負い直しセイタカアワダチソウの群生に一歩近づいて、「夕霧の薬指は方位磁石じゃなかったですよね」 作者のくせに忘れたんですかという口ぶりだった。 薬指のモチーフは「辻沢シリーズ」で何度も出てきて主人公達を導いた。でもそれは物理的に方向を示すものではなかった。「『ボクにわ』で薬指を扱うシーンありますよね」 Dが言ったのは、主人公達が薬指を手にしたはいいが使い方が分からないでいる場面。まさに今の私と同じ状況。その時主人公がもらったヒントを私はこう書いたのだった。「これから起こる場面の中にいる自分をイメージする」「それをフジミユはビジョンって言ったんです」 軽いめまいがした。 ヤオマン・インでDの口からその言葉を聞いた時、私は新しい概念だと思った。でも、ビジョンとはフジミユが言った言葉としてすでに自分の作品の中で触れていたのだった。 Dが私の顔をじっと見ていた。やっと思い出したという表情をしていた。 Dはバックパックの中からヘッドランプを二つ取り出して帽子に付けた。そしてもう一つを私に渡してくれた。私が装着して明かりを灯すと目の前のセイタカアワダチソウがこちらを威嚇するように迫って見えた。私が気圧されてたじろいでいると、「行きましょう」 Dが再び先頭に立って黄色い外来種の中に分け入った。 踏み分けても踏み分けても背の高い茎が現れてなかなか先に進めなかった。セイタカアワダチソウを倒すと花粉を盛大に振りまく。それが無音の悲鳴のようで気味が悪かった。ザラザラする葉が手に触れるとそこから何かが浸入してくる気がした。軍手を持ってくれば良かったと思った。 私とDは時々前後を交代しながら進んだ。コッヘルは後ろが持った。茎を足で踏んで倒すとき体勢が崩れて転びそうになるからだ。 行軍が永遠に続くかと思った時Dが言った。「月が南中しましたね」 夜空を見上げると真上に満月があった。夜風が黄色い穂の上を渡っていく。 Dが周りの茎の列を踏みしだきだした。それを段々広くして行くのを見てDが何をしたいの
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31.辻沢の手触り

 私とDが切り開いたセイタカアワダチソウの下にレールがあった。そこに耳を当てると、 チンチンチン。 遠くから振動の音が響いてきていた。私たちはこれを失われた宮木野線と確信して対になるレールを探した。でも私たちが作ったスペースの中では探し当てられなかったので捜索範囲をさらに広げた。しばらくしてDが、「休みませんか?」 掘り起こす手を止めると腕が重くて上げられなくなっていた。進むとき以上に馬力を入れて探したせいで半端なく疲れていたのだった。「そうしよう。いつまで?」「朝まで」 ヘッドランプの電池が残り少ないからと言った。そういえば時々光が不安定になっていた。 Dは再び倒した茎を使って屋根組みを作り始めたが私はやめにした。セイタカアワダチソウのざらつく茎を素手で触ったせいで掌が真っ赤に腫れていたからだった。 屋根組みが出来るとDはバックパックから出した寝袋に入り、そこに収まった。寝袋からマスクの顔だけ出したDの姿は運搬される遭難者のようだった。 私はDのシェルターの横に寝そべった。一応これでもベッド・イン・ビジョンなのかなと思いつつ、なにか足りない気がして脇に避けてあった犬歯入りのコッヘルをDと私の間に置いた。「おやすみ」 返事はなかった。もう寝たらしい。寝つき良すぎ。 私たちは線路の側でキャンプをしている。それで『スタンド・バイ・ミー』という映画のワンシーンを思い出した。12才の少年たちは町でニュースになった轢死体を探して鉄路沿いに旅に出る。主人公は将来売れっ子作家になるゴーディーだ。何日目だったか一行は線路脇でキャンプをする。その朝、汽車が通過する音でゴーディーが目覚めると鉄路の向こうに鹿がいる。ゴーディーはそのことをまだ寝ていた皆には言わなかったとナレーションが入って別のシーンになる。 とても印象深いシーンだけど、何でそこに鹿がいたのかは説明されない。映画を初めて観た時私は偶然と思っていた。でもあとで知ったのだが鹿はよく線路に現れるのだ。それは鉄路のミネラルを舐めに来るから。そして最も鹿を殺すのは猟師ではなく、鉄道会社ということも。 汽車が通過する音で目が覚めた。私とDの屋根組みの間はコッヘルが置けるくらいしか距離がないのに、そこをチョコレート色の汽車が通過して行った。私は起き上がって汽車がセイタカア
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32.極小辻沢

 私とDはバイパスの工事現場を覆い尽くすセイタカアワダチソウの中にいた。この群生の中に極小辻沢があることは地図で分かった。でも私たちはそこへ行こうとは思っていなかった。都市伝説「辻沢行き」では宮木野線に乗れば辻沢へ行けるとあった。だからまず宮木野線に乗るための駅を探す。 前衛が茎をラッセルして鈍色のレールを探しながら進む。後衛は手に持った犬歯入りコッヘルを時々鳴らす。そうしてレールを辿れば駅の跡が見つかって、朝に逃した汽車に乗れるかもしれない。 朝から歩いてそろそろ昼になろうとしていた。 そのうち群生の外から女性の声が聞こえるようになった。近くに女子高でもあるのだろうか。時折弾けるような笑い声がする。しばし続いて普通の話し声に戻る。私は笑い声が聞こえた穂の上を見て言った。「長いこと、あんな大声で笑ったことないな」「あたしも高校以来ないですね」 Dも茎を踏みしだく足を止めてそちらを見ていた。私も大声で笑ったのは高校生のころまでだった。大学でも友だちはいたが一緒に笑い合えるような関係ではなかったし、卒業して付き合いは終わった気がしている。けれど高校の友だちはずっと会ってなくても会えばすぐに元のように笑い合えるような気がする。 それからも群生の中をかき分け続けた。女性の声も遠のいたり近づいたりはあったがずっと聞こえていた。 日差しが避けられないので汗が出て余計に喉が渇いた。ペットボトルの中身はあと二口三口くらいしか残っていない。これを飲んでしまったらいよいよまずいことになると思うと飲めなかった。「少し休みましょう」 Dは踏んで傾けた茎に寄りかかって座った。バックパックの中からミネラルウォーターのペットボトルを二本出すと一本を私にくれた。「どうぞ」 あのバックパックにはいったいどれだけのものが入ってるのか?「食べ物はないです」  物欲しそうな顔してたらしい。Dがポケットからミンスクを出した。目でいりますかと聞くので私は手を振って断った。 そうして休息している間も女性の声は聞こえていた。笑い声も聞こえていたし、これまでになく声が近くになった気がした。その時Dが何かに気が付いて立ち上がった。「あの子たち!」 とさらに背伸びをしたり飛び上がったりしている。私も同じようにしたら、黄色い穂の平原に何人ものセーラー服
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33.辻沢行き

 私とDは幻の宮木野線に乗っていた。車内は女子学生の話し声と熱気でいっぱいで、車両の隅で縮こまっているしかなかった。「あなたたち、どこの高校?」 Dが近くにいた女子学生に話しかけた。突然話しかけられたせいか、真面目そうなその子の頬が赤くなった。「成実女子です」「辻沢シリーズ」で成実女子といえばギャルを量産する工業高校だ。でもここにいる女子学生はまったくギャルではなかった。「成実女子工業高校?」 と私は思わず聞いた。話しかけられた女子学生は私を一瞥して何かをスキャンすると、Dに返事をした。「今は成実女子IT高校」 名称変更をしたらしい。いったいいつの間に? 私はそれを小説に書いた記憶が無かった。これまでもそうだが、私以外の誰かが「辻沢シリーズ」に手を加えているのか、ちょいちょい私の知らない世界変更が起る。〈ねぬす。ねぬすデス。っぎは、ねぬす。すぃてんデス〉  それまで雑談していた女子学生たちに緊張が走った。「ミク。着いたらダッシュ!」「10分に間に合うよね」「お前次第だ」 乗り換えの時間がないらしい。〈ねぬすデス。まもなくすぃてん〉 みんなが学生カバンを胸元に持ち直してドアに寄せだした。汽車がホームに入り停車する。ガガガ、ガコン、ガシュー。 ドアが開くと同時に女子学生がホームに吐き出され、全員陸橋の階段へダッシュだ。私もその勢いに押されて階段に向かい途中まで上がったところで、「たけるさん。そっちじゃない」 Dの声が背後から聞こえて来た。振り返ると階段下のホームでDがこっちを見上げていた。しかし私は後から後から上がって来る女子学生の流れに逆らうことが出来ず、最上段まで上がってしまった。そのまま人の波に流されたら二度とDに会えない気がして恐ろしくなった。だから私は壁の広告看板に手を伸ばして掴み、女子学生の流れから脱出した。その後も女子学生の塊が私の体やコロコロにぶつかって流れに巻き込まれそうになる。陸橋の壁にへばり付いて女子学生の行く手に目をやると、その先の天井から紫色の陽炎が滝のように落ち掛かっていた。その壁の向こうは何があるか見えなくなっていて、女子学生がその中にどんどん突っ込んで行くのが見えた。あそこに入ったらきっと戻って来られないだろう。 女子学生の流れがまばらになって逆方向に歩けるようになっ
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34.辻沢着

 私とDが乗った宮木野線の車両は、断続的な走行音を響かせてN市街を通り過ぎた。N市を出るとすぐに車窓は田舎の風景になった。Dが窓の外を見ながら、「本当に、『田んぼと畑と田んぼと畑と田んぼと畑と田んぼ。たまに竹林』なんですね」 『田んぼと畑と』とは辻沢シリーズで宮木野線沿線の風景に使われている表現だ。それは移動の感覚を言葉のテンポにしたフレーズだけれど、実際の風景に照らしてもまったく違和感がないのには、作者の私も驚いた。 しばらくしてDは見飽きたのか、窓外を見るのをやめて座り直した。そして、「さっきの駅、通らなかったですよね」 宮木野線は単線だ。折り返し運行だから、来た時と同じところを通るはずだった。ところがここまでセイタカアワダチソウの駅は通っていなかった。街中では私とDとはあの駅を通過するのを期待して、窓に額をつけて外を見ていたから見過ごしてはいないと思う。「地図を見てみようよ」 Dは座席に置いたバックパックからクリアファイルに挟んだ地図を出した。N市街地と辻沢の2枚の地図を、どっち? という仕草で私に渡そうとするので、「N市街地図を」 と折りたたまれた地図を受け取って広げた。N市駅から大通りまでの住宅地の道。大通りのどん詰まりの先の空き地はバイパス工事現場だ。極小辻沢はその中にあるけど線路や駅はない。 私はメッセンジャーバッグからシャープペンを出して、「書いてもいい?」「どうぞ」 N市駅からバイパスまで線路を描いてみた。それで分かったのは、宮木野線がN市駅からバイパスに行くためにはきつめのカーブを描かなければならないことだった。しかし今しがた市街を通った時は、ずっと直線だったのだ。「宮木野線はこの地図の上を走ってないのかも」 Dが引かれたラインを見て言った。「じゃあ、どこを?」 そんなのわかりようがなかった。
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35.ここが世界の境界線

 辻沢駅の駅舎は木の香りがしていた。小説のレイカが久しぶりに辻沢に帰って来た時ここで山椒の香りを嗅いで帰郷した感を強くするのだが、私の鼻には山椒は感じなかった。 駅舎のスペースに土産物コーナーがあった。商品が並べてあったので見に行こうとしたら、「スオウ山椒園に連絡してみます」 Dがスマフォを出して耳に当てた。私も連絡しておこうと思ったのだけれどDがそれを手で制止して、「ついでにあたしが……」 と言うので任せることにした。蘇芳ナナミとはバ先で会えば話せる。 土産物コーナーは、ひざ下までの低い商品台の上に山椒せんべい、山椒ウエハース、山椒ふりかけと、ほぼすべてが山椒関連の商品が並べられてあった。お菓子だけど甘いのか辛いのか分からない系のものが多い。その脇に萎れた幟が立っている。「ゴマすりで町おこし ようこそ山椒の里 辻沢へ」 ゴマをするスリコギの材料が山椒の木ということからきた辻沢町のキャッチフレーズ。外から来た人にすれば、下手に出すぎで小ばかにされてるように感じる。いったい誰がこんなキャッチを思いついたんだ? ―――私だった。「大きな荷物持って。ダンナは辻沢は初めてかい?」 土産物売り場のおじさんだった。この人は、小説ですり鉢やスリコギを勧めて来る。「なら、ゴマスリセット、お土産に買っていきなよ」 ほらね。 本格ゴマすりセット(スリコギと鉢ともに)(7400円)、MYゴマすりセット(3080円)、ゴマすりストラップ(840円)。 私の記憶より高くなってる。物価の高騰はこんなところまで波及してた。「お土産にはちょっと荷物になるかな。でもおすすめですよ。本格ゴマすりセット。もしもの時、攻撃と防御にも役立つし、ってね」 おじさんはすり鉢かぶってスリコギを手に構えている。この恰好はバトルゲーム「スレイヤー・R」の一般装備だ。行方不明のレイカさんを探して樹海のような青墓の杜に踏み込めば必要になるが、今ここで買うことはなさそうだった。「いいよ」 おじさんは残念そうに被ったすり鉢を台に戻して、「じゃあ、これはどうです? MYゴマスリセット。こんなでも、本物の山椒のスリコギ棒なんですよ」 押しが強い。「これ! お連れさんに上げたら喜ばれますよ。ストラップ。二つ買っておそろで。このスリコギの頭のトコロにボタンがあるでしょ。そうそ
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36.辻沢バス

 私とDはヤオマン・カフェにいて、辻沢駅前の人の往来を眺めながら遅い昼飯を食べていた。「宿取れました」 Dがスマフォの画面を私に見せた。それは「ヤオマンホテル・大曲」からの予約完了メールだった。「3日の予定で取りましたけど、状況次第で」 延長もありか。ダブルベッドの部屋が一室。値段は三泊で10万を超えていた。また痛い出費。帰ったらすぐバイト探さないと。「スオウ山椒園は明日だよね」「はい。8時半に」 それなら、今日は辻沢を見物しないかと言おうとしたが止めた。私たちは人探しに来たのだった。しかも状況は切迫している。「聖地巡礼でもしますか?」 逆にDから提案されてしまった。「いいの?」「焦ってもしかたないですから」 まだ3時を過ぎたところで今からホテルに行ってもやることが無い。「行ってみたいところある?」「辻沢女子高校?」 行き先が決まったところで、私とDは荷物を持ってカフェを出た。「一旦大曲のホテルへ行って荷物を置いたがいいか、このまま辻沢の町を突っ切って行ったがいいか」 Dはしばし思案してから、「辻バスに乗りましょう」 辻女は駅から歩いても行けるが、小説のレイカたちは辻バスを使っていた。「じゃあ、ゴリゴリカード買おう」「それな」 町長の肝いりで導入されたプリペイドカードで、辻沢内なら何にでも使えてポイントも付く。もちろんバスにも乗れる。 バス停に停まっていた六道辻行きのバスに乗った。辻沢の旧市街を通るためか小型のバスだ。「辻女行きますか?」 乗る前に運転手さんに確認する。「行きますよ」 運転席の前で、「2000円のゴリゴリカード2枚ください」 と言うと、16種類のカードが並んだシート冊子を見せてくれた。「どれがいいですか?」 カードには女子高生モデルが宮木野線沿線8女子高の夏冬の制服姿でプリントされてある。これも町長の趣味。 私は中から辻女の夏服を選ぶ。それを見てDは辻女の冬服を取った。代金は私がまとめて交通系のICカードで払った。「辻女前まで」〈♪ゴリゴリーン〉 早速ゴリゴリカードを使う。 Dと二人で出口近くの座席に着く。乗客は私たちの他は中年の女性客が2人、大学生風の男子が一人だ。「この女子高生モデルって、失踪した子なんですよね」 Dがカードをしまいながらぼそりと言った。辻女生の
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-14
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37.聖地巡礼

 狭いバス通りの途中でバスが停車した。〈辻女前です〉 私とDは降車した。「あの子たちに会えたなんて聖地巡礼幸先いいですね」「確かに」 コッヘルを鳴らしてないのに会えた。「辻女も期待できるかな」 辻女へ行く路地を探す。ここからは住宅地の中を歩かなければならない。「あそこなんじゃないですかね」 角にパン屋さんがある路地が見えた。あれが辻女までの通学路にあるパン屋さんか。お店はもう少し奥まったところにあるかと思っていたからバス通りに面していたのは意外だった。「あそこであれ買いたいです」 Dが早足になってバス通りの横断歩道を渡る。私もそれについて行きパン屋さんの前に立った。「女バスセットください」 Dの声が幾分うわずって聞こえる。「女バスセット」とは小説のレイカがバスケの部活の帰りにこのパン屋さんで買うアンドーナツと三角牛乳のことだ。セットと言うからにはビニールにまとめてあってすぐ出てくるかと思ったら、店員の女性は不思議そうな顔をしている。それを見て察しのいいDは、「三角牛乳とアンドーナツください」 と言い直した。 会計を終えて、「レイカワードだったんですね」 Dが女バスセットが入った紙袋をバックパックにしまいながら言った。「そうみたいだね」 作者としては辻女界隈では流通しているつもりだったのだが。 下校時間は過ぎている。通学路だから女子学生に会えると思ったが一人も出会わなかった。 民家の向こうに体育館が見えてきた。「女バス、練習してますかね」 角を曲がった時Dが言った。小説の時点でレイカは卒業しているので在籍していないけれど、私も辻女のバスケのユニフォームは見ておきたかった。しかし辻女の敷地に近づいても体育館から歓声や床を踏む音は聞こえてこない。出入り口も窓も閉め
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38.地下道のミヤミユ

 大曲のバス停からヤオマンホテルに行くには地下道を抜けなければならなかった。この地下道には屍人のミヤミユがいるかもしれない。Dはそれを嫌がったのでバイパスを強行横断しようと思った。けれど通行量が多すぎるのと中央分離帯をコロコロを引いて乗り越えるのは無理だった。「しかたないですね」 このままここにいるわけにいかないので地下道へ向かう。 ところが地下道の入り口まで来るとDは立ち止まって動かなくなった。ぐずぐずしていると本当に日が暮れてますます暗くなってしまう。私は尻込みするDに、「ミヤミユ」 と呼びかけた。するとDは体を強張らせ、「どこ? ミヤミユはどこですか?」 と階段の底に沁み出す暗闇を覗き込んだ。「いや、あなたを呼んだんだよ」 Dは後ろを振り向いて私を睨みつけると、「わざとですよね。驚かそうとして」 と非難した。 実は私はこの偶然に気が付いてしまったのだ。これまでDのことをミヤミユと呼んで来たのは、それをDが望んで私がDを小説のミヤミユによく似ていると認めたからだった。現実のミヤミユと小説のミヤミユ。その二人がここで鉢合わせたらいったい何が起こるのか。それが何にせよ、私はきっと心の底から震えてしまうだろう。「これこそセレンディピティな出会いだ」 と言うと、「そうかもですが、幸福な発見なんかじゃないです。相手は屍人なんですよ。襲われて食い殺されたらどうするんですか?」 ひたすら怖がるDには気休めかもしれないが、「下にいるって決まったわけじゃないから」 屍人のミヤミユの最初の出現場所はここだけれど、後に大曲ホテルの自分の部屋でフジミユと対決したことから、地縛霊のようにずっとここに居座っていたわけではない。それを説明するとDは、「分かりました。行きましょう。でも、もし出会ったら」「ダッシュだ。小説でもダッシュで振り切った」「めっちゃ必死でしたけど」 Dはそう言うと、ドカ、ドカ、ドカ、ドカ。大げさにコロコロの音をさせて階段を降りだした。階段の下で一旦立ち止まり地下道の中を覗く。向こうの出口が明るく見えているけどかなりの距離があった。電灯がついているのにやけに暗いのは、今にも消えそうな黄色い明かりが出口までの間に一つだけ点滅しているからだった。そしてここからは分からないが、中央あたりにもう一つ地下道
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-18
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39.905号室

 Dは大曲のラブホの前でへたり込んで呆然としていた。自分と同じ顔の屍人に首を絞められたことが相当ショックだったのだ。きっと、「あれはあたしだった」 という言葉がDの頭の中でリフレインしているのだろう。 バイパスから来たスポーツタイプの車が、私たちの前を徐行しながらラブホの駐車場に降りて行った。助手席の女性が私たちを凝視していた。ラブホの前にしゃがむ若い女性とそれをなだめるおじさんはさぞかし奇異に見えたろう。 私はDに肩を貸して立たせると、今日泊まることになっているヤオマンホテル・大曲へ向かった。 フロントに着くと、「予約した、鞠野です」「ようこそ鞠野様。奥様と」 と区切って一旦、私の横でうなだれたDを見てから、「二名様でダブルのお部屋を3日のご予定でお取りしております。ご案内しますのでお荷物を」 と言われてようやく、コロコロを私のもDのも地下道に置いてきてしまったことに気がついた。まだ屍人のミヤミユがいるだろうから明日明るくなってから取りに行くことにした。「荷物はないです」 フロント係からカードキーを渡されたボーイさんが、「こちらへどうぞ」 とエレベーターホールへと向かった。エレベーターホールの床に敷かれたフカフカの赤い絨毯、豪華な生け花、日本画の巨大な壁絵。ビジネスホテルのヤオマン・インとは比べられないほど豪華だった。 エレベーターが降りて来るのを待っている間に、Dがボーイさんに聞いた。「部屋番号は?」「905号室です」 途端にDが血相を変えて、「部屋、変えないと」 と言い出した。同意を求めるように私の顔を見ている。「そうか。まずいか」 このホテルの905号室こそ、私がベッド・イン・ビジョンで観た屍人のミヤミユとフジミユが対決した部屋だった。辻沢に来てすぐ幽霊JKに出会い、つい今しがた屍人のミヤミユに遭遇した。私たちはもう辻沢の物語に触れ始めている。その流れからすると、次はあの場面にかち合う可能性も否定できないのだった。  私たちはフロントに戻って部屋を変えてもらうよう頼んだ。渋られるかと思ったが、今はオフシーズンだということで、すんなりと変えて貰えた。「同じ9階ですが反対側の通路になりますので」 と渡されたカードキーには915号室とあった。Dにそれを見せると、「ここでいいです」 と言った
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