朝日が窓辺に差し込む頃、葉月はすでにオフィスでスケジュール帳を確認していた。スタッフがみんな揃うと、葉月は軽く机を叩いた。「ある案件についてみんなの意見を聞きたいの」人気芸能人に会えると葉月が言うと、スタッフたちは目が輝かせ、一斉にわあわあと喋り出し、屋根が吹き飛ぶんじゃないかと思うほどだ。「私が行く!」「私も!私も行く!」「私も行きたい!」「私のことも忘れないで!」「あー、行きたいけど、来週の予約がもう埋まってて、これ間に合うかな〜」スタッフみんなが行きたがってた。なぜなら芸能人に会えるから、当然興味が湧くのだ。ただ数人のスタッフは既に先の予約が詰まっていたため、この案件に参加する時間が取れるか心配していた。「じゃあこうしましょう」葉月はスケジュール帳を閉じ、卓上カレンダーの日付を軽く指した。「案件は再来週からだから、来週水曜以降の予約は全部受付をストップしよう」葉月はスタッフたちの期待の眼差しを見て思わず微笑んだ。「ちょっとブランド側と話してみるね。メイクの方向性をざっくりでも教えてもらえるか確認してみる。その上で、みんなそれぞれブランドのテーマに合わせてメイクを考えて、実際に仕上げてみて。それをまとめてブランド側に提出して、最終的に向こうがメイクを見て人選するって流れにしようと思ってるけど、どうかな?」これが葉月が考え出せる最もフェアなやり方だ。この案にスタッフ全員が納得した。実力勝負なら文句なしだ。打ち合わせが終わった後、七海は急いで卓也のアシスタントに連絡し、葉月の案を伝えると、すぐに返事が来た。女性向けの新作はエネルギッシュ系とインテリ系で、男性向けの新作は爽やか系と大人系がコンセプトだ。ほぼ全年齢層をカバーできるラインナップだ。葉月は一通り目を通し、七海に言った。「みんなに準備するように伝えておいて」スタッフたちはみんな張り切っていたのか、週末に入る前には全員がメイクアップ案を提出した。葉月はスタッフたちの案を写真で卓也に送付した。卓也から返信があった。【月曜日に選考結果をお知らせします】【わかった】と葉月も返信した。月曜日になると、卓也から選考結果が届いた。葉月は選ばれたメイクアップ案を携え、スタッフみんなで打ち合わせをした。葉月はタブレットをみんなに向けた。
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