「ようやく笑ってくれたね、師匠」 周歓は胸をなでおろし、ほっと息をついた。 「弟子としてはさ……やっぱり師匠は、笑っている時が一番素敵だと思うよ」 阮棠は人差し指を折り、周歓の額を軽く小突く。 「またそんな甘い口を利いて。……どこか怪我はなかったのか?」 周歓は不満そうに眉を寄せた。 「怪我なんてないよ。でも師匠、それを聞くの、いささか遅すぎやしない?どうして最初に訊いてくれなかったんだ。おかげで俺は、師匠が俺のことなんてこれっぽっちも気にかけていないんだって、ずっと落ち込んでたんだぞ」 「……こ、コホン」 阮棠は咳払いをしてから視線を逸らし、気まずそうに言った。 「俺だって面目というものがある。あれだけ大勢の目がある前で、そう露骨に肩入れするわけにもいかないだろう?」 周歓とて、阮棠が照れ屋なのは百も承知だ。だが回ってきた酒のせいで胆も据わっている。この機を逃して甘えぬ手はない。 「ええ、これっぽっちの傷なんて、師匠の尊い面目に比べたら取るに足らないよ」 わざとらしくそう言い、ふて腐れたように顎を上げると、大きな器の酒をぐいとあおった。 阮棠は、彼が拗ねる姿を初めて目にし、思わず噴き出した。 「……なんと嫌味な。堂々たる一人前の男が、そんなに狭量でどうする?」 周歓は鼻を鳴らす。 「狭量で何が悪い!俺は狭量なうえに、今、かなり怒ってる。機嫌を取ってくれなきゃ直らない」&nb
Last Updated : 2026-02-16 Read more