川瀬家に着いたばかりなのに、まさか川瀬承太郎(かわせ じょうたろう)と鉢合わせするなんて思ってもみなかった。彼はちょうど外から戻ってきたところらしく、友人たちに囲まれていた。私の姿を見た瞬間、取り巻きが下品に笑った。「雪菜、お前って本当にしつこいな。毎日毎日あの手この手で承太郎とわざと鉢合わせを狙って、今度は家にまで押しかけてきたのか?」「月野家にこんな娘がいるなんて恥ずかしいな。ご両親、よく人前に出られるよな」承太郎も、露骨に嫌そうな顔をした。「何年も俺の後をつけ回して、散々迷惑をかけてきただろ。今度は家まで来て、一体何のつもりだ?」「月野家と川瀬家の業務提携が決まって、川瀬おじさんから晩餐会に招かれたの。あなたを探しに来たわけじゃないわ」「……業務提携だと?」承太郎の友人たちがざわめいた。無理もない。提携のことは、まだ公にはされていなかったからだ。私の祖父と承太郎の祖父は、生死を共にした仲だった。二人の間には約束があった。将来もし両家が提携することになれば、私と結婚した者が川瀬家を継ぐ、と。私が承太郎を想っていることは誰もが知っていた。だから川瀬家の晩餐会に招かれたという事実は、彼が家業を継ぐと受け取られたも同然だった。川瀬家ほどの名門で後継者になるのは、決して容易なことではない。「承太郎、おめでとう!これで将来は社長だな」友人たちが次々と祝いの言葉をかけた。承太郎は得意げな笑みを浮かべながらも、私を見る目だけは冷たかった。そして、初めて自分から歩み寄り、耳元で低く囁いた。「俺は前世の失敗を繰り返すつもりはない。結婚したいなら、俺と柔美が一緒にいることを受け入れろ。名義だけの立場は用意してやる。だが、愛は柔美にしか与えない」心臓が大きく跳ねた。そうか。彼もまた転生していたのだ。我に返って言葉を返そうとしたとき、背後から柔らかな声が聞こえた。「……お姉さん」振り向くと、月野柔美(つきの よしみ)が頼りない足取りでゆっくり近づいてきた。顔色は青白く、いつも以上に病弱そうに見える。承太郎は慌てて駆け寄った。「柔美、どうして一人で来たんだ」彼女は身を寄せながら、小さく笑った。「承太郎、お姉さんを責めないで。ちょっと風邪っぽいだけだから。今日は両家にとって大事な日だから
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