「紗奈!」私は恥ずかしさと怒りがこみ上げてきて、紗奈をにらんだ。「これ以上デタラメ言ったら、本気で怒るからね!」紗奈はようやく大人しくなり、私の腕に絡みつきながら言った。「ごめんごめん、もういいでしょ?ちょっとスッキリする展開を妄想しただけじゃん!嫌なら次から言わないってば!」そのあと、私たちは店を変えた。昼食を終えると、それぞれ家に帰った。家に着くなり、私はパソコンを開いて、小説の更新に取りかかった。編集からは、作品を上下二部構成にしたらどうかと提案されていて、プロデューサーのほうはまず上巻だけを映像化する予定らしい。上巻の反応がよければ、続けて下巻も準備するとのことだ。ただし、上巻は年内に完結させる必要があり、そうしないと撮影スケジュールに支障が出てしまう。つまり、時間にはかなり余裕がない。少しでも進めるため、私は深夜までパソコンの前に座り続け、その日だけで二万字を書き上げた。物語の多くが自分の実体験をベースにしているせいか、ネタに行き詰まることもほとんどなく、筆は自然と進んだ。編集者も驚いていて、新人とは思えない、とても何冊も書いてきた作家のようだと評されたほどだった。【夜永さん、最近お時間ありますか?この作品は大きな企画なので、撮影前にスポンサー側、プロデューサー、監督と顔合わせをするのが通例なんです】届いたメッセージを見て、断りたい気持ちはあったけれど、私も世間知らずというわけではない。普通の付き合いなら、むやみに断るつもりはない。ただ、以前に投資元が神崎グループ傘下のメディア会社だと聞いていたのを思い出した。そこで私は尋ねた。【スポンサー側として出席されるのは、神崎グループの方ですか?】この小説は、自分の身に起きたことを多少脚色したもので、完全な自伝というわけではない。それでも、知り合いに知られるのは正直気まずい。もし神崎グループ側の出席者が高司だったら……考えただけで、気まずさが倍増する。だから、先に確認しておきたかった。編集者が返信してきた。【少し待ってください、確認します】すぐに、編集者から連絡があり、スポンサー側のトップが直接出席されるとの返事が来た。原作者である私も、できれば参加したほうがいい。大物に会える機会なんて、そうそうないからだという。
続きを読む