「誰だって?津賀優子?」信じられなくて、思わず聞き返した。奈央がうなずきながら言った。「そうよ。あんたのお兄ちゃん、口が堅いわね。ずいぶん前から付き合ってるらしいのよ。でも彼女は芸能人だから、迷惑かけたくないってずっと隠してたみたい」孝之も笑いながら話し始めた。「どうりでここ数年、女の影ひとつなかったわけだ。結婚の話も出ないから、何か問題でもあるのかと思ってたけど……最初から心に決めた人がいたんだな」二人の言葉は、私の常識をひっくり返すものだった。優子は時生との間にもう三歳の子どもがいるのに、同時に兄とまで付き合っていたなんて?しかも今、彼女は時生と一緒にバリにいる。じゃあ、兄はそこにどういう立場で現れたの?一体いつからこんな関係が始まってたの?次々と疑問が湧いてきて、顔色が曇っていくのが自分でもわかった。奈央が心配そうに声をかけてくる。「昭乃、どうしたの?」言葉を整えるのに少し時間がかかった。優子の正体を暴いてやりたい気持ちはあったけど、奈央も孝之もこの未来の嫁を気に入っている様子。私はまず、さりげなく探りを入れることにした。「お父さん、お母さん、この前の優子のスキャンダル記事、見た?パトロンがいるって話。あの背中の写真、あれ……どう見てもお兄ちゃんじゃないよね」そう言うと、奈央はすぐさま不機嫌そうに眉をひそめた。「あんなデマ信じてるの?昭乃、あなた芸能記者でしょ?ああいうネタがどうやって作られるか、わかってるはずでしょ」孝之もうなずきながら言った。「私も記事見たけど、男の顔なんて全然写ってなかったぞ。そんなぼやけた写真ひとつで人の評判を傷つけるのは良くない」二人がすっかり信じ込まされているのを見て、今すぐにでも優子の正体を暴きたくなった。だって、私は彼女の決定的な写真を二億円払って手に入れたのだから。いっそ、二人を私の家に連れて行って、目の前で見せつけてやりたいくらいだった。でも、その言葉を飲み込んで、私は別のことを聞いた。「お兄ちゃんは……彼女をもう両親に紹介したの?両家で顔合わせとかは?」奈央は目を細めて笑った。「私たちも早く会いたいのよ。でもお兄ちゃんが言うには、彼女は芸能人でマスコミがうるさいからって、今準備しているところらしいわ。遅くても来週には連れてくるって」その瞬間、胸がざわつ
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