──ガチャ。バタン。瞬に連れられ、私はそのまま私たちのマンションに戻って来てしまった。満足に自分1人で歩く事も、行動する事もできない私には、瞬の行動を止める事すらできなかった。瞬に抱えられながらマンションに戻ると、扉の開いた音に反応したのか──。「お帰りなさい!」パタパタ、と足音が聞こえてきて、リビングと廊下を繋ぐガラス扉が開いた。扉を開けたのは──。「……麗奈、なんで、ここに……」どうしてもう、麗奈が部屋に──。私の呟きに、私を抱えていた瞬は至極当然のようにあっさりと答えた。「心の世話をさせるって言っただろ?麗奈に先に部屋に来て貰っていた。このまま寝室に運ぶぞ」「寝室に…?ちょっと、待って……!」私たちの寝室に、麗奈を入れたくない。せめて、私の私室に連れて行ってもらいたい。そう思って瞬を呼び止めるが、瞬は私の顔なんてもう見ていなくて、麗奈と話している。瞬の横顔はとても嬉しそうで、常に笑顔を浮かべている。今までは、私に向けられていた瞬の笑顔。優しげな眼差し。愛おしげに細められた瞳。そららが、今は全て麗奈に向けられている。その光景を目の当たりにした私は、一瞬頭の中が真っ白になった。頭では、分かっていた。麗奈が帰国してから、私に向けられていた瞬の愛情も何もかも全て麗奈に移っているのは頭では、分かってた。けど、今実際自分の目でその光景を見るまでは何処かで現実じゃない、と。何かの間違いなんだ、と認めたくなかったのかもしれない。けど、もう。私の事なんてまるで見えていないような瞬の態度。まるで瞬と麗奈、2人だけの世界に私という異物が紛れ込んだような感覚に。私はもう駄目なんだ、とその言葉がストンと胸に落ちた。「麗奈。苦労をかけると思うが、頼む」「ううん、大丈夫よ瞬。精一杯お世話するね」「助かるよ」2人はそんな会話を交わしながら、瞬は寝室に私を連れて来て、そのままベッドに下ろす。私をベッドに下ろした後、瞬は軽くワイシャツを緩めて麗奈に顔を向けた。「シャワーを浴びてくる。心を頼む」「分かったわ、瞬。着替えを持って行くね。いつもの所に置いておく」「ああ、ありがとう麗奈」頬をだらしなく緩め、瞬は麗奈の頬に手を添えようとしてハッとして、ぎこちなく手を下ろした。きっと「いつもは」あ
最終更新日 : 2025-10-12 続きを読む