祐一はしばし沈黙したまま、由奈から視線を外した。そして、鼻で笑うように小さく嗤った。「――よく覚えてるな」「……」覚えていないわけがなかった。彼の口から出た、彼女を傷付ける言葉のひとつひとつが、全部覚えていた。その重みを、六年もかけてようやく悟ったのだ。遅かったけれど、それでも一生気づかないよりは、まだましだった。病院に着くと、由奈は祐一の少し後ろを歩き、歩実の病室へ向かった。病室の扉が開き、祐一の姿を見ると、歩実は起き上がって穏やかに微笑んだ。「祐一、来てくれた……」と言いかけ、その後ろに立つ由奈を見て、表情が凍りついた。指先が、シーツをぎゅっと掴む。――どうして、あの人を連れてきたの?由奈はその視線を受けても、まるで気づかないふりをした。そして静かに近づき、柔らかな笑みを浮かべる。「長門先生。これまであなたにご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」歩実は目を瞬かせた。まさかこの女が、こんなにもあっさり頭を下げるなんて。由奈はそのまま、深くて丁寧に一礼をした。「これからは、どうかご健康で、長く穏やかな日々をお過ごしください」「……」歩実は息を呑む。深々としたお辞儀――まるで、弔いのようじゃない。祐一は眉をひそめ、由奈の腕を取って無理やり引き離した。「それが謝罪のつもりか?」「祐一、もういいわ」歩実が慌てて言葉を挟む。「本気で謝ってくれたし、それで十分よ」そう言ったものの、その視線は、祐一が由奈の手を握っていることに釘づけだった。由奈は腕をすっと引き抜く。「当事者が『もういい』と言ってくれました。それに、滝沢社長は『頭を下げろ』と言いましたよね。私はこの通り、深いお辞儀をしました。それじゃ、足りませんか?」祐一の目が細くなる。どこか、以前とは違う彼女の気配に気づいたようだった。由奈はその視線を避け、穏やかに言った。「用は済んだので、これで失礼します」そう言い残し、病室をあとにした。歩実は祐一の横顔を睨みつけ、唇を噛む――あんな女に、まんまと顔を潰された。悔しさが胸に込み上げる。……由奈は化粧室で手を洗い、鏡の前で表情を整えると、外に出た。だが、廊下に出た瞬間、足が止まった。少し離れたところに、祐一が立っていた。由奈は顔を伏せ、そのまま通り過ぎよう
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