夜、桜良はベッドに横たわり、何度も寝返りを打っている。目を閉じると、すぐに康英の顔が脳裏に浮かんでくる。あの人のことは考えまいと必死に自分に言い聞かせているのに、康英はまるで執念深い影のように、いつまでも彼女にまとわりついて離れない。ようやく眠りに落ちても、夢の中で彼女はあの日、千絵子と共に拉致された場面に戻ってしまう。そして、康英がためらうことなく千絵子を選んだ瞬間、心はまるで万匹の蟻に食い尽くされるかのような、言葉にできない苦痛に襲われた。「やめて……!」桜良は悪夢から飛び起き、涙が頬を伝って顔を濡らしている。もう康英に未練はないはずなのに、なぜ自分は毎晩こんな夢を見てしまうのだろう。悪夢に悩まされ、桜良は夜通し眠れない日々が続いている。そのことを知った晴奈は胸を痛め、すぐに心理カウンセラーの予約を取ってくれた。治療室に入った瞬間、桜良の目が思わず見開かれた。晴奈が選んでくれた最も有名な心理カウンセラーと聞いて、てっきり白髪交じりの年配の男性だと思っていたのに、目の前にいたのはすらりとしたかっこいい男性だ。白衣を着ていなければ、まるでどこかのランウェイに立つモデルのようで、白衣さえも一種のファッションにしてしまっているかのようだ。「笠置さん、こんにちは。嶋屋秀洋(しまや ひでひろ)と申します」桜良は手を差し出した。「こんにちは、嶋屋先生。笠置桜良です」簡単な挨拶の後、治療が始まった。桜良は学生のようにおとなしく椅子に座り、秀洋の質問を待っている。秀洋は笑みを浮かべて言った。「笠置さん、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。何か飲み物はいかがですか?コーヒーかジュースでも?」「いいえ、水で大丈夫です。飲み物はあまり好きじゃありませんので」「わかりました」秀洋はコップに白湯を注ぎ、彼女の前に置いた。桜良はそれを一口だけ口にした。「笠置さん、星座は何座ですか?」桜良は驚いて顔を上げた。「星座が治療に関係しているんですか?」秀洋は再び微笑んだ。「星座から患者さんの性格の一部を知ることができるんです」そう言って一息つくと、彼は続けた。「それに、僕は星座に詳しくて、特にホロスコープには自信がありますよ」桜良は一気に興味を引かれた。暇なときによく星座占いを調べたり、星座占いの
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