陸side「あの……遠藤取締役に確認して発注承ったって書いてあります」担当者は、俺の方をチラリと見てから言いにくそうに読み上げた瞬間、全員の冷たい視線が一斉に俺の方に集まった。美月との電話でのやり取りがスローモーションで再生される。30,000個の誤発注。その差額は、数千万円に上る。しかも、納期の調整もせずに正式に受け取ってしまった。「先方には私から確認をしておく。そのままにしておいてくれ」課長は、そう言ってスマホをもってフロアを出ていくと、ガラス張りのドアからペコペコと頭を下げている姿が見えた。他の社員たちもざわついていて嫌な空気が流れている。十五分ほどして課長が戻ってくると、胸のあたりを手で押さえて、言いにくそうに俺の元へと近付いてきた。「取締役……。発注の件ですが、注文書が誤っていたようで、30,000個のはずが60,000個と入力していたようです。私のチェックミスでもあります。申し訳ございません。それで、先方に電話で確認したところ、既に40,000個まで納品の準備をすすめていたため、20,000個はキャンセル扱いにするが、余分の10,000個を含む40,000個は買い取って欲しいとのことでした」「何を言ってる!?うちが欲しいのは30,000個なんだろ?それなら、10,000個は無駄に払えと言ってい
Last Updated : 2025-11-01 Read more