All Chapters of 夜明けと共に忘れるはずの恋だった: Chapter 31 - Chapter 40

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31.誤発注と指名の訪問

陸side「あの……遠藤取締役に確認して発注承ったって書いてあります」担当者は、俺の方をチラリと見てから言いにくそうに読み上げた瞬間、全員の冷たい視線が一斉に俺の方に集まった。美月との電話でのやり取りがスローモーションで再生される。30,000個の誤発注。その差額は、数千万円に上る。しかも、納期の調整もせずに正式に受け取ってしまった。「先方には私から確認をしておく。そのままにしておいてくれ」課長は、そう言ってスマホをもってフロアを出ていくと、ガラス張りのドアからペコペコと頭を下げている姿が見えた。他の社員たちもざわついていて嫌な空気が流れている。十五分ほどして課長が戻ってくると、胸のあたりを手で押さえて、言いにくそうに俺の元へと近付いてきた。「取締役……。発注の件ですが、注文書が誤っていたようで、30,000個のはずが60,000個と入力していたようです。私のチェックミスでもあります。申し訳ございません。それで、先方に電話で確認したところ、既に40,000個まで納品の準備をすすめていたため、20,000個はキャンセル扱いにするが、余分の10,000個を含む40,000個は買い取って欲しいとのことでした」「何を言ってる!?うちが欲しいのは30,000個なんだろ?それなら、10,000個は無駄に払えと言ってい
last updateLast Updated : 2025-11-01
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34.婚約解消

美月side「おい、待て!今回の支払い以外の二つはなんだ?」陸は、録音していくことすら忘れて完全に冷静さを失い、怒鳴り散らしてきた。「一つずつ説明します。二つ目の価格改定の同意について。今までこちらが何度お願いしても改定に一切同意して頂けなかったせいで、同業他社に比べて明らかに低い単価で私たちは受注を受けています。これも、不当な取引条件として第三者機関に調べてもらう内容に入れても構いません。ですので、同水準までの引き上げに同意してください」この会社を、陸の会社からの要望を何でも聞く『泣き寝入りする下請け』ではなく対等な取引先に関係を改善したかった。陸は、大きく息を吐くと少し落ち着いたようで渋々、声のトーンを下げて慎重に回答をしてきた。「……一旦持ち帰って検討しようじゃないか。価格改定の件は、仕事のことだから分かった。だが三つ目の婚約は何だ?仕事とは関係ないだろ?」「大いに関係あります。この結婚は、当初、断りを入れたにも関わらず、御社が取引数を大幅に減らしたり、会社へ圧力をかけて倒産危機に陥らせたことで承諾したものです。商大せざるを得なかった。そして、前回と今回のこともあり、下請けいじめをするような会社の人間との結婚はできません――――――」私が宣言するように力強く言うと、陸は怒りに満ちた顔で私を睨みつけてくる。しかし、私も負けじと視線を逸らさずに陸の目をまっすぐ見ていた。私の中にあった怯えが消え、強固な意志に変わっていること
last updateLast Updated : 2025-11-03
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35.飼い犬に手を噛まれる

陸side美月の会社を出て車に戻ると、むしゃくしゃしてハンドルを思いっきり叩いた。その反動でクラクションがやかましく辺りに鳴り響いた。「なんだよ、あの女。俺がどんだけ金をはたいて可愛がってやったと思ってるんだ。それが手のひらを返したように噛みつきやがって」俺のモノとしていることが当然だった美月が、脅しをかけてきたなんて飼い犬に手を噛まれたような気持ちになり、沸々とした怒りがこみ上げてくる。「大体、何なんだよ。婚約者の俺を馬鹿にした男にわざわざ会いに行くなんて気違いにもほどがある!あいつは、俺の妻になることを全く分かっていないバカ女だ。何が誓約書だ。くそっ……。このままあいつの言いなりになるのも癪だな」鞄から誓約書の入った封筒がチラリと顔を出している。視界に入らないように乱暴に押し込んでから、なんとかこの状況を乗り切ることは出来ないかと考えていた。(そうだ……)俺は、あることを思いついて笑みを浮かべた。(飼い主に噛みつこうとした罰として美月を、そして父親の会社もろとも握り潰してやる。お前たちは、俺の手の平で大人しく転がされていればいいんだ)公正取引委員会に駆け込むには準備と時間がかかる。その間に、会社を倒産寸前に追
last updateLast Updated : 2025-11-03
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38.反撃の狼煙③

陸side「これはどういうことだ?間違いなくお前の声だ。私にも注文書の通りに従来の納期で作れと指示しているように聞こえたが、違うというのか?」社長は、全身を小刻みに震わせて怒りを滲ませて、俺を睨みつけていた。「それは…………勝手に録音するなんて卑怯なことしやがって」「話をすり替えるんじゃない! お前がやっていることは、自分の非を認めずに他の者に責任を押し付ける最低な行為だ。もういい、内容は分かったからお前はひっこんでろ」俺の言い訳じみた言葉と態度に、社長は大声で俺に社長室から出るように言いつけると、すぐに美月たちの方を向いて、謝罪の言葉を口にしてから深々と頭を下げていた。「この度は、息子が多大なるご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした――――。私の方で誠意をもって対応します」―――――二時間後、再び社長室に呼ばれて力なく部屋に入ると、さきほどの怒りが収まらない様子で、鋭い視線がこちらに向けられているのを痛いほどに感じていた。「先方と話をして、取引委員会に通報しない代わりに、今回の話はすべて飲むことを約束した。今回のイレギュラー対応で発生した経費も全てこちらで負担することにした。単価も同業他社より高めに設定して、安定的な需給と今後の取引の継続をお願いしたよ」
last updateLast Updated : 2025-11-05
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39.運命

美月side遠藤製薬の誤発注をきっかけに、陸の横暴な態度が社内外に露呈され、取引内容の根本的な見直しがされた。取引条件や単価引き上げをした結果、会社の利益率は大幅に上がり、新しい従業員を雇えるほどに経営状況が改善した。そして、婚約も解消され、晴れて私は自由の身となったのだった。業績の向上に大いに貢献したとされ、私は従業員から役員への昇格を果たし経営に携わるようになっていった。父や幹部たちに交じって会社の舵取りをすることが楽しくて、充実感に溢れている。「美月ちゃんのおかげで、給料も上がって社員たちのやる気も上がってありがたいよ」小さい頃から私のことを知っている年配の人たちが口を揃えて喜んでくれ、最初は業務改善に抵抗があった社員たちも、今では改善して良かったと言ってくれるようになり、私は自分の力で居場所と価値を築けたことに安堵と達成感を感じていた。陸との全てが清算されてから、私は一年ぶりにネットに柳世羅の名前を入力した。世羅との出逢いは、私に陸と立ち向かう勇気をくれた重要な転換点だった。会社が軌道に乗るまでは、世羅のことを考えないように検索するのをやめていたけれど、婚約解消と、陸が地方に異動となり会うことがなくなって終止符を打てたと思い、世羅の情報を探した。しかし、世羅の情報は特段、新しいことは更新されていない。
last updateLast Updated : 2025-11-06
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