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Lahat ng Kabanata ng 血と束縛と: Kabanata 221 - Kabanata 230

242 Kabanata

第7話(7)

 ぐうっと内奥深くにまで欲望を埋め込んだ千尋が、一度律動を止め、和彦の両足の間に手を差し込んでくる。中からの刺激によって和彦のものは、はしたなく透明なしずくを滴らせながら、反り返って震えていた。 もっと反応しろといわんばかりに扱かれ、和彦は懸命に嬌声を堪える。和彦のその反応に、千尋はひどく興奮したようだった。緩やかに腰が動かされ、狙い澄ましたように最奥を突かれる。 室内に、二人の妖しい息遣いと、湿った淫靡な音が響いていた。 そこに突然、障子の向こうから声がかけられた。「――先生、起きているか」 三田村だった。ビクリと体を震わせた和彦は、いまさら隠すようなことではないのに、何も答えられなかった。いくら声を取り繕ったところで、必ず三田村に今の状況を悟られる。 和彦の動揺を察したのか、いきなり千尋が大胆に腰を使い、和彦の体は激しく前後に揺さぶられる。声を押し殺せなかった。「ああっ、うっ、うあっ、ああっ――」「いいよ、先生。ものすごく、中が締まってる。俺が突くたびに、ビクビク痙攣して、悦んでる。俺だけじゃなく、オヤジや三田村にも、同じことされたら、こんなふうに反応してるんだよね」 腰を抱き寄せられ、丹念に内奥深くを突かれると、息も満足にできないほど強烈な快感が迸り出てくるようだった。それに、あえて外の三田村に聞かせるような言葉に、ひどく官能を刺激される。「千、尋……。千尋、もう、もた、ない……」「うん、俺も、もう限界」 そう応じた千尋が、力強い律動を繰り返し、和彦は翻弄される。なんとか自らの手で扱いて絶頂に達すると、それを待っていたように千尋の動きが速くなり、限界まで高ぶった欲望が一息に内奥から引き抜かれる。 一応、和彦の体の負担を考えてくれたらしく、千尋も最後の瞬間は自分の手の中で迎えたようだ。 剥ぎ取られた浴衣で後始末をされ、和彦は仰向けにされる。のしかかってきた熱い体を両腕で抱き締めてやると、千尋は満足そうに吐息を洩らした。和彦は、千尋のその反応にほっとする。
last updateHuling Na-update : 2025-11-26
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第7話(8)

 甘やかされたい、大事にされたい、愛されたい。臆面もなく千尋からぶつけられるそれらの感情を、和彦は大事に思っている。ぶつけてくれる限りは、一欠片も余すことなく受け止めて、自分の中に残しておいてやりたいとも。 そんな気持ちになれる千尋とのセックスを、和彦はいとおしんでいる。 だが――、今日は少し文句を言いたかった。「……お前は、心配の仕方が間違っている。いや、違うな。心配の解消の仕方が、間違っているんだ」 いつの間にか、障子の向こうの三田村の気配は消えており、ほっとする。 行為の最中の嬌声を聞かれることに諦めはついているが、行為のあとの会話――睦言ともいえるのかもしれないが――を聞かれるのは、苦痛だ。和彦の体は三人の男たちで共有されているが、睦言だけは、それぞれの相手に独占してもらいたいという傲慢な気持ちが、心のどこかにあった。 人が真剣に話しているというのに、そんな和彦の唇に軽いキスを落とした千尋は、悪びれた様子もなくきっぱりと言った。「俺、難しいことわかんない」「……殴るぞ」「怖いなー、先生」 千尋が笑い声を洩らして肩に額をすり寄せてきて、和彦は殴る代わりに、手荒く千尋の髪を撫でてやる。「――心配かけて悪かった」「うん。気をつけて。……本当なら先生は、危ない目に遭わなくて済む世界で生きてた人なんだから。だから、こちら側の物騒な世界にいる先生を守るのは、俺たちの役目だし、責任だよ。俺だけじゃなくてさ、オヤジも三田村も、顔には出さないけど、すごく不甲斐ない思いをしてる。あと、先生に対して申し訳ないとも」「似合わないな、ヤクザにそんな殊勝さは」「許してやってよ。だって、先生が大事でたまらないからさ、俺も、オヤジたちも」 こんな言葉で情に訴えかけてくるのも、ヤクザの手口なのだろうかと思いながら、その手口に和彦はまんまと乗せられていた。「……ぼくだけじゃなくて、お前も気をつけろよ。お前に何かあるほうが、組長にとっても、組にとっても痛手だ。――ぼくも、つらい」
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第7話(9)

** 夜に突然、部屋にやってきた和彦を見ても、賢吾は驚いた様子もなく、それどころか余裕たっぷりの笑みを浮かべた。「――長嶺組組長のところに夜這いにくるなんて、大胆だな、先生」 浴衣姿で座卓につき、分厚い本を開いている賢吾は、見惚れるほど渋い紳士そのものだ。だが、口から出た言葉は、紳士からは程遠い。 四十半ばの男が言うようなことかと思い、和彦は顔をしかめる。賢吾にとっては満足のいく反応だったらしく、機嫌よさそうに手招きされ、和彦は障子を閉めた。 賢吾の部屋は、一階の奥まった場所にある。書斎と寝室として二部屋を使っているが、壁や襖で区切られているわけではないので、広くて開放感がある。ただし、せっかくの立派な中庭は見えない。 主の身を守ることに重点が置かれているこの家は、賢吾の部屋に行くまでに、組員が詰めた部屋の前を通り、さらに、頑丈なドアを開けてもらわなくてはならないのだ。和彦も、できることなら足を踏み入れたくない一角だ。「今夜はもう、とっくに眠ったのかと思った。いろいろありすぎて、疲れただろ。しかも、うちのバカ息子が、心配しすぎて暴走した挙げ句に、その先生に無茶をやらかした」 傍らに座った和彦に、賢吾がそう話しかけてきながら、片手を握り締めてくる。和彦はちらりと隣の部屋に視線を向けたが、すでに寝床は整えられていた。賢吾もそろそろ休むところだったのかもしれない。「千尋の無茶は、いつものことだ。ぼくも慣れた。……暴走しているようで、きちんと加減を知っていて、ぼくを傷つけることも、痛い思いをさせることもないし」「俺の躾のおかげか?」 賢吾が意味ありげに笑いかけてきたので、軽く睨みつけてやった。「――それで、どうかしたのか、先生」「大したことじゃない……と、ぼくには判断ができないから、寝る前に一応報告しておこうと思ったんだ」 昼間、薬のせいで嫌というほど眠ったせいで、夜になってからはなかなか寝付けなかったのだ。そして、何度も寝返りを打ちながらあれこれ考えているうちに、和彦はあることを思い出した。
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第7話(10)

「……携帯電話を落とした。鷹津という刑事の前で。多分――」「奴なら、嬉々として拾っただろうな」 自分のミスを責められた気がして、和彦は唇を噛む。すると、握られた手を引っ張られ、賢吾に抱き寄せられた。「そんな顔するな。先生は何も悪くない。三田村に、秦という男に連絡を取らせて、詳しい状況は把握した」 賢吾の言葉に、和彦は身を強張らせる。秦にされたことを意識して頭から追い払おうとするが、千尋との濃厚な行為の余韻も加わり、煩悶したくなるような疼きを呼び起こしてしまう。 和彦のこの反応は、秦が望んでいるものだろう。罪悪感と恐怖から、すべてを賢吾に話すことなど不可能だった。「あの場は、逃げ出して正解だ。下手に騒動になったら、それこそ公務執行妨害だなんだと難癖つけられて、警察に引っ張られる口実を与えるだけだ」 話しながら賢吾の指にうなじをくすぐられ、髪の付け根を刺激される。和彦が小さく身震いすると、賢吾の唇が耳に押し当てられた。「……鷹津に近づくな。あいつは、俺相手に報復したくてウズウズしている。そこに、先生みたいな美味そうな餌がふらふらしていたら――」 耳朶にゆっくりと歯が立てられ、和彦は呻き声を洩らす。痛みと、ゾクゾクするような疼きが背筋を駆け抜けていた。「喰らいつかれるぞ。先生がひどい目に遭わされると、さすがの俺も牙を剥かないわけにはいかなくなるからな。ヤクザと警察の円満な関係のためにも、先生はしっかり護衛に守られてくれ」 最初に自分に喰らいつき、ひどい目に遭わせてきたのは誰だと思いながらも、和彦は吐息を洩らすように応じた。「ああ……」「携帯は諦めろ。先生の携帯なら、見られて困るような人間の番号や、メールはないだろ」「長嶺組組長直通の携帯番号を登録してある。あと、その息子の携帯番号も」「だったら、番号を変更するついでに、三人仲良く、同じ携帯に買い換えるか?」 和彦は本気で呆れてため息をつき、その反応がおもしろかったのか、賢吾は声を洩らして笑う。そして、両腕で抱き締められた。この腕の強さと熱さは、体
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第7話(11)

**** コンサルタントのオフィスを出てロビーに降りると、オフィスビルらしく、スーツや制服姿の人間が行き交っている。和彦は辺りを見渡し、ある男の姿を苦もなく見つけ出した。 本人は、自分の存在感を限りなく消しているつもりなのだろう。地味な色のスーツを端然と着こなし、イスに腰掛けてやや前屈みの姿勢で新聞を開いている。強面ではあるのだが、世のビジネスマンには、そんな人間は数え切れないほどいる。 本来であれば目立つはずもないのだが、やはり三田村は、周囲から浮いていた。「――こんな場所で、そんなに警戒しなくても大丈夫だろ」 静かに歩み寄った和彦が声をかけると、驚いた素振りも見せず三田村は新聞を畳む。「先生が鷹津に絡まれたのは、どこだった?」「……プロに、余計なことを言って悪かった」 和彦が素直に謝ると、三田村は顔に貼りついたような無表情の下から、微かな笑みを覗かせてくれた。もっとも、ほんの一瞬だ。すぐに鋭い視線を、油断なく周囲に向けた。 ここのところ、和彦の護衛は別の組員が務めることが多く、だからといって不満はなかったのだが、やはり三田村のこんな姿を見ると安心する。「打ち合わせは?」「ああ、済んだ。スタッフ募集の広告を頼むことにしたから、来週、またちょっと顔を出すことになると思う」 歩きながら和彦が説明すると、三田村は微妙な顔となる。「三田村?」「普通の人間を雇うと、おおっぴらに先生について歩けなくなるな。若い美容外科医が護衛をつけるなんて、何も知らない人間に対して、只事じゃないと知らせるようなものだ」 三田村の口調はあくまで淡々としているが、つい和彦は、言葉の裏にある三田村の気持ちを深読みしてしまう。正確には、期待していた。 状況が許せば、三田村は自分の護衛を続けたいと思ってくれているのか、と。「……クリニックを開業しても、どうせぼくは、あのビルからほとんど外に出ることはない。今ほど護衛は必要じゃなくなる」「だったら俺は、用なしだな」「送
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第7話(12)

「先生は意地が悪い」「お宅の組長には負ける」「……返事に困るようなことを言わないでくれ」 気持ちが解れるような会話を交わしながらビルを出て、来客用の駐車場へと向かう。 この後、和彦は自宅マンションに戻り、三田村はそこで護衛を外れるため、単なる移動の時間であったとしても、二人きりでいられる時間を惜しんでいた。明日も三田村が確実に護衛をしてくれるとは限らず、いつ顔を合わせられるかすら、わからないのだ。「――体調は、もうなんともないのか?」 ふいに三田村に問われ、和彦は目を見開く。「えっ……」「先生がひっくり返って、まだ三日しか経ってないんだ。俺だけじゃなく、組長や千尋さんも心配している。気になることがあるなら、一度じっくり病院で診てもらったほうがいい」 気遣う言葉をかけてきながらも、三田村の眼差しがいくぶん険しくなったように見えるのは、和彦が抱えた後ろめたさのせいかもしれない。 和彦は、秦との間に何があったのかと、誰かに詰問されることを恐れていた。問い詰められたら、隠しきれる自信はない。 賢吾は怖いし、三田村に気苦労をかけたくもない。それに、鷹津の登場で組全体がピリピリしている中、秦に体を触れられた程度で、余計な騒動を引き起こしたくもなかった。もちろんこれは、隠し事をしているという罪悪感を薄めるための、言い訳だ。「ひっくり返ったなんて、大げさだ。酒が回りすぎて、酔っ払っただけなのに」 まだ何か言いたそうな顔をしながら、三田村が車のキーを取り出す。 これで、この話は終わりだ――と思ったが、三田村が先に車に乗り込もうとしたとき、その三田村の携帯電話が鳴った。 素早く携帯電話を取り出した三田村は、液晶を見るなり眼差しを一際鋭くする。組からの呼び出しなのだろうかと思いながら見守る和彦の前で、三田村は電話に出て、ぼそぼそと会話を交わす。そして、和彦に向けて携帯電話を差し出してきた。「先生に話したいことがあるそうだ」 和彦は、まだ新しい携帯電話を買っていない。そのため、用のある誰かが三田村経由で連絡してきたのだ。
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第7話(13)

「もしもし……」『わたしの柔な神経だと、三日目が限度でした』 開口一番の秦の言葉に、和彦は眉をひそめる。このとき、サイドミラーを通して三田村に表情を見られるのが嫌で、思わず背を向けていた。「なんのことだ」 あんなことをされて、秦に敬語を使う気にもなれなかった。秦のほうも、些細なことだと感じているのか、会話を続ける。『いつ、わたしの元に、長嶺組の怖い方々が押しかけてくるかと、ずっと怯えていたんですよ』 言葉とは裏腹に、秦の声はどこか楽しげだ。本当はそうなると思っていなかったかのように。 どうして、と言いかけて和彦は、口元に手をやる。「……ぼくが、〈あんた〉との間にあったことを、組の誰かに話すと思ったのか」『すっかり先生に嫌われましたね』「当たり前だっ」 声を荒らげた次の瞬間には、車内の三田村の耳を気にして、声を潜める。「あんなこと……言えるはずがない。ぼくの中では、なかったことにした。もう二度と、あんたとは関わらない。そっちからも連絡をしてくるな」 一息に告げたところで和彦は、あることに気づいた。「なんで、三田村の携帯番号を知っている」『先生が意識を失ったとき、迎えにきた三田村さんに、あとで詳しい事情を聞きたいからと言われて、番号を交換しておいたんです。あの場は、一刻も早く先生を連れ帰るのが先で、ゆっくり話せる状況じゃありませんでしたからね』 賢吾に詳しい報告をするために、確かに三田村ならそうするだろう。あのとき、眠り込む和彦を無理やり起こして事情を聞くこともできたはずだろうが、そうしなかったのは、三田村の優しさだ。もしかすると、賢吾が命令したのかもしれないが。『三日目の今日、確信しました。先生は、わたしとのことを秘密として認めてくれたと』「そんなことを確信して、なんの意味があるんだ」『――秘密を楽しむためです。何より、刺激的だ。わたしと先生との間にあったことなら、官能的とも言えますね』「ふざけているのか……」
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第7話(14)

『今、先生はドキドキしているでしょう? 側に三田村さんがいるんですよね。わたしにとっては運がよかったですよ。三田村さんに、先生と連絡が取れるよう頼むつもりだったんですが、その三田村さんと一緒だったんですから』「……ぼくにとっては、最悪のタイミングだ」『なら、今すぐ三田村さんに、わたしとの間に何があったか報告しますか? それなら少なくとも、わたしからの連絡に身構えなくて済みますよ』 自分は被害者なのだと、頭ではわかっているのだ。秦の外面のよさにすっかり騙された挙げ句、鷹津という刑事に絡まれて動揺しているところに、気づかないまま、アルコールとともに安定剤を飲まされた。 意識が朦朧としていなければ、あんなことは許さなかった――。「面倒を引き起こす気はない。あんたと二度と関わらなければ、それで済む話だ。……ぼくを脅迫するようなマネをしたら、洗いざらい、組長にぶちまけるからな」『怖いですね』「これはハッタリじゃない。ぼくは本気でヤクザが怖いし、長嶺組と、その組長が何より怖い。だから、誤解を生むようなことはしたくない」 ここで和彦は、感じた疑問を率直に秦にぶつけた。「ヤクザの怖さを知っているのは、そっちも同じはずだ。なのにどうして、ぼくに――長嶺組長のオンナに、あんなリスキーなことをした。ぼくが組長に泣きつく可能性のほうが高かっただろ。そうなったら絶対、無事では済まない」『先生はできませんよ』「なぜ言い切れる」『――あなたは、長嶺組長のオンナではあっても、ヤクザじゃないから。そんな人が、暴力に訴えられるとも思えない。自分の手を汚さず、ヤクザに頼むとなったら、なおさらだ。先生にとっては大事な一線でしょう、それは。知り合ったばかりの男のために、越える勇気がありますか?』 その勇気があるなら、そもそもヤクザのオンナになどなっていないだろう。 穏やかな口調で、秦にそう嘲られたような錯覚を覚える。だがこれは、和彦自身の心の声なのかもしれない。 和彦は、自分が抱えた矛盾や迷いを、あえて直視することを避けてきた。そうしないと、自我を保って日々を過ごせなか
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第7話(15)

 気遣う言葉をかけてきながら、三田村の眼差しは鋭い。和彦と秦の間に何かあると確信している目だ。 こうなった三田村ですら怖いのに、本当のことを賢吾に告げたらどうなるか――。 想像して、背筋が冷たくなる。「……なんでもない……」 和彦はそう答えると、携帯電話を三田村の手に押し付け、顔を背けた。** 秦の目的を知るにはどうすればいいのか、部屋に戻ってから和彦はずっと考えていた。目的がわからなければ、動きようがなく、最終的に長嶺組に――賢吾の力に頼ることになるかどうか、判断もできない。 電話で秦に言われた言葉は、確実に和彦の判断力と決断力を鈍らせた。迂闊に誰にも相談できなくなったのだ。もちろん、和彦を大事にしてくれる〈オトコ〉にも。 帰りの車の中で、和彦と三田村はほとんど会話を交わさなかった。和彦の口を重くしたのは、罪悪感と、秦とのことを知られてはいけないという恐怖心からだが、三田村の場合は、よくわからない。もともと多弁な男ではないし、話しかけないでほしいという和彦の気配を敏感に読み取ったともいえる。 秦からの電話を受けて和彦の様子がおかしくなったと、賢吾に報告したのかどうか、今はそれが心配だった。 こんな心配をする自分の賢しさも、罪悪感に拍車をかける。 膝を抱えてソファに座った和彦は、口寂しさを紛らわせるようにワインを飲む。寝酒でもしないと、今夜は眠れそうにない。 深いため息をついたとき、インターホンが鳴った。こんな時間に誰だと思いながら立ち上がり、テレビモニターを覗く。映っていたのは三田村だった。『――こんな時間にすまない。本当は電話でもよかったんだが、昼間、先生の調子が悪そうだったのが気になったんだ』 三田村と関係を持つ前なら、ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような無表情から、なんの感情も読み取れなかっただろうが、今は違う。モニターを通しても、三田村が本気で心配してくれているとわかる。『直接顔を見たら、すぐに帰る。だから……少し寄ってもかまわないか?』 短く返事をしてロ
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第7話(16)

「こういうとき、見舞いに何を持ってきたらいいかわからないんだ」「だから、ワインなのか?」「気に入らないなら、違うものを買い直して――」 三田村が立ち去ろうとしたので、慌てて和彦は玄関に引き込む。すかさず三田村に片腕でしっかり抱き締められた。「これでよかったか?」「ちょうど今、一人でワインを飲んでたんだ。だけど――こうして会いにきてくれただけで、嬉しい」 和彦がそう言うと、背にかかっていた三田村の手が後頭部に移動し、優しい男には似つかわしくない動作で後ろ髪を掴まれる。それが三田村の激しさを物語っているようで、妙な表現だが、和彦は嬉しい。 まずは互いの想いを確かめるように、濃厚な口づけを交わす。荒々しく唇を吸われ、熱い舌で犯すように口腔をまさぐられてから、和彦は両腕をしっかりと三田村の背に回し、しがみついた。 玄関で立ったまま、長い口づけを堪能する。絡めていた舌をようやく解き、息を喘がせながら和彦は、三田村の舌にそっと噛みつく。その行為に応えるように、ずっと和彦の抱き寄せ続けていた三田村の片腕に、ぐっと力が加わった。「……部屋に上がらないか?」 和彦がそう誘うと、三田村は小さく首を横に振る。「そうすると、聞かれたくない話ができなくなる」 思わず和彦が顔を強張らせると、三田村は今度は頷いた。 どうやら、この部屋に盗聴器が仕掛けられていると、三田村も察したらしい。おそらく寝室だけだと思うが、和彦も詳しく調べたわけではない。 一度体を離して三田村がくれたワインを靴箱の上に置くと、すぐに手を掴まれ、和彦はまた三田村の腕の中に戻った。「――組長には、まだ何も報告していない。あくまで俺の中で、先生の体調が少し悪そうだということで処理している。ただ、もしまた、秦から連絡があったら、さすがに報告しないわけにはいかない」 和彦は、三田村の肩に額を押し当てる。「すまない……。ただでさえ、ぼくのことで気をつかわせているのに、組長にウソをつくようなことをさせて」「ウソはついていない。俺も万能じゃないから、一つぐらい些細な
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