Semua Bab 私と先輩のキス日和: Bab 11 - Bab 20

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第三章『愛情表現のキス』 その1

週明け、梢はいつも通りに『ひかり書房』に出社した。が、スケジュール帳を見るなり、げんなりした顔になった。今日は、梢が担当をしている小説家、西園寺久子との打ち合わせ日である。元々はミステリーを中心に執筆していた久子だが、ここ数年はティーンズ向けの青春小説や官能小説とまでは言わないがやや過激描写の多い恋愛小説まで、ジャンルは幅広くなっている。それだけではなく、近頃は情報番組のコメンテーターとしてメディア出演も顕著になっており、歯に衣着せぬ発言が視聴者の注目の的となっていた。同じ時間帯、笑理は朝食を食べていた。一昨日は梢も一緒だったが、一人になった今朝の笑理の朝食は、トーストにインスタントのコーンスープというシンプルなものである。リモコンでテレビをつけると、朝の情報番組が放送されている。そこには、デシベルの高いキーキーした声で、何やら政治家の批判をしている和服美人が映っている。「こういう不祥事をする政治家が後を絶たないから、税金泥棒なんて言われてるんじゃないですか。みんな、先生とか呼ばれて天狗になって。バカバカしい話ですよ。こんな人たちに、日本の政治を任せて良いものなんですかね」トーストをかじりながら、笑理はテレビに映る久子の辛口コメントを聞いていた。「小説家が、こんなにもメディアに出ちゃダメでしょ。しかも政治家批判なんて」笑理は、母親に近い年齢の久子を見ながら、ブツブツと呟いた。笑理にとって久子は同業者であったが、当然接点はなく、久子の作品を読んだことは一度もなかった。また、メディアに映る久子のキャラがどうも生理的に合わず、笑理はそのままチャンネルを変えてしまった。情報番組の生放送を終えた久子が『ひかり書房』を訪れたのは、午前十時を回ってすぐだった。こちらに向かってくる着物姿の女性が久子であることは、遠目から見ても梢には分かった。梢はデスクから立ち上がり、そのまま久子を迎えた。「西園寺先生、おはようございます」「おはよう、山辺さん。あら、今日は随分顔色が良いけど、何か良いことでもあった?」梢は一瞬ドキッとしたが、「普段は、顔色悪いですか?」「仕事に追われて、余裕がない感じがするか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-17
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第三章『愛情表現のキス』 その2

梢と久子は、新作小説についての意見交換をしていた。久子が用意した企画書と手書きプロットを見ながら、梢は感心するように、 「西園寺先生の頭の中って、どうなってるんですか? こんな濃密な恋愛関係描いたら、先生のファンが増えるのは間違いないですよ」 久子のプロットを見て、梢は生々しい展開が妙にリアリティがあり、ディスカッションを重ねていけば、久子の筆力ならば壮大な恋愛模様が描けると感じていた。 「頭の中は大したことないわよ。これは、私の体験がモデルになってるの」 「え……?」 中年女性が社交ダンスの相手となった年下男性と禁断の恋に落ちるという内容のプロットを見た梢だったが、頭の中が混乱していた。 「体験って言うのは……?」 「この歳になって独身で良かったって思えたわ。読者が私の作品を読んで疑似体験をしてもらうためには、ちゃんと実体験を書かないと、リアリティがないからね」 「あの……まさか西園寺先生って、作品のために……?」 梢は恐る恐る問いかけた。 「若い男に抱かれるのって、ドーパミンがドバドバ出て良いものよ。これで作品が書けるんだもの、一石二鳥じゃない」 久子の爆弾発言に、梢はポカンと口を開けたままだった。 「どうしたの?」 「いえ……ちょっと、情報の整理がつかなかったので」 「作品のために、恋愛経験しようとする小説家なんて、公表しないだけでいくらでもいるんじゃないかしら」 「そうですかね……」 梢の中で、ふと笑理の顔が思い浮かんだ。久子と同じように恋愛小説を執筆する笑理も、もしかしたら作品のために自分に告白をして、付き合い始めたのだろうかと考えてしまった。 「眉間に皺寄ってるわよ」 久子に言われ、梢は慌てて額をこすった。 「プロットありがとうございました。まずは出版会議に向けて、進めていきましょう」 「よろしくね」 呑気そうに帰っていく久子を梢は頭を下げて見送ったが、胸中は穏やかではなかった。新聞小説の連載も受け持っている笑理は、書斎兼作業部屋でひたすらパソコン画面に向き合っていた。通常の小説と違い、文字数がある程度限られ、読者が離れないよ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-17
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第三章『愛情表現のキス』 その3

二日後、梢は単行本の返却を口実に笑理のマンションを訪れた。この二日間、梢は久子に言われたことが頭から離れず、笑理の真意を確認したかったのだ。「読み終わるの早かったね。さすが編集者だわ」「いえ……」「何かあった?」突然笑理に尋ねられたので、梢は重い口を開き始めた。「私、ある作家さんの担当もしてるんですけど、その方、作品のためだったら平気でいろんな人と付き合って、体の関係にもなるんですって。恋愛経験のない私には、その気持ちが理解できなくて。他の作家にも、作品のために恋愛する人もいるって言われて……笑理先輩は、どういう気持ちで私に告白したのかなと思って……」梢はそう言うと、寂しそうにうつむいた。笑理はしばらく梢を見つめると、突然ケラケラと笑い出した。「梢ちゃん、そんなこと気にしてたの?」「だって……」「誰が言ったか知らないけど、少なくとも私は、作品のために梢ちゃんと付き合ってるわけじゃないってことは、はっきり言っとく」梢は笑理を見つめ、嘘をついている目ではないと思った。すると笑理は、梢の隣に来てそのまま肩を抱き寄せると、諭すように、「私は、むしろ逆。梢ちゃんがいてくれるから、作品が書けるんだよ」「笑理先輩……」「梢ちゃんがそばにいてくれると、頑張って作品を書こうって思えるんだもん。この間言ったでしょ、梢ちゃんのこと愛してるって。あの言葉に嘘はないよ」梢は少しでも自分への愛を疑ったことを情けなく思った。久子に言われたことを気にして、笑理に不信感を募らせたことを心底申し訳なく感じていた。「ごめんなさい……、私……」「『ひかり書房』から本を出してる作家で、そんなデリカシーのないこと言う人なんて、どうせ西園寺久子でしょ」図星を指され、梢は黙り込んでしまった。「やっぱりね。朝の情報番組の発言と言い、あの人はどうも好きになれない」「西園寺
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第三章『愛情表現のキス』 その4

「今日も泊まっていきなよ」笑理にそう言われ、梢は断る理由がなかった。が、少しでも疑いの目で笑理を見てしまった後ろめたさもあってか、「良いんですか?」と、不安そうに尋ねた。それでも笑理は、気にも留めない様子だった。「恋人のマンションにお泊まりするのに、良いも悪いもないでしょ」「笑理先輩……」「ご飯食べた?」「いえ、まだです」「じゃ、デリバリー頼もうか。ピザで良い?」「はい」笑理はスマホのアプリで、ピザを注文した。「お風呂もう沸いてるから、先入っといでよ。パジャマ、また用意しとくから」笑理に促され、梢はそのまま脱衣所へ向かい、衣服を脱ぐと、湯舟につかった。立ち込める湯気の中で、梢はもっと恋人として笑理のことを信じてあげなければと自分に言い聞かせていた。もう疑うことなんて絶対にしないと、湯を顔にかけながら梢は誓った。梢が風呂に入っている間、笑理は眉間に皺を寄せて、ソファーに深く腰掛けた。梢に変な考えを持たせた、デリカシーのない久子のことが苛立って仕方がなかったのだ。「あのババア、一体何考えてるんだか……」朝の情報番組に映っていた久子と言い、打ち合わせで梢に向けて発した発言と言い、笑理にとって久子は同業のライバルというよりも、完全なる敵となっていた。大きな溜息をついて腕を組みながら、笑理はゆっくりと瞼を閉じた。パジャマに着替えた梢がダイニングへ戻ってくると、笑理はソファーに座り込んだまま、うたた寝をしていた。ふと梢は、自分が笑理の寝顔を見ることが初めてであることに気が付いた。ただでさえ、普段は妖艶でキリッとした顔立ちの笑理だが、やはり寝顔までもが美しく見えている。「笑理先輩の寝顔、綺麗……」梢は鞄からスマホを取り出すと座り込み、笑理の寝顔の写真を撮影した。そしてもう一度、笑理の寝顔を見つめた。「たまには、私から行かないと……」梢は自分に言い聞かせるように呟くと、深く深
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第三章『愛情表現のキス』 その5

床に横たわった状態になっている梢の顔は笑理の両腕に挟まれており、笑理の顔が至近距離にあった。漫画でしか見たことのない床ドンをされて、梢の心拍は急上昇している。「今、私にキスしたよね?」首を傾げた笑理に尋ねられた梢は、恐る恐る返答をした。「だって、好きな人にキスするのに、理由なんていりますか?」すると笑理はフッと微笑んだ。「確かに、梢ちゃんの言う通りだね。じゃあお返しに」と、笑理の顔がまた近づいた途端、インターホンが鳴った。「もう、タイミング悪いんだから」笑理がインターホンに出ると、相手は一時間前に笑理が注文をしたデリバリーピザ屋の店員だった。テーブルに置かれたシーフードピザを食べている時間も、梢にとっては楽しいものだった。されど自分からのキスかもしれないが、自分の中では大きな一歩であり、より笑理を近い存在に感じたのだ。自信がついたのか、梢はふと笑理に対して、「あの……先輩にこんなこと言うのは何なんですけど」「どうしたの?」「恋人なので、そろそろ敬語を辞めたいんですけど」「ああ、確かにそうだね」笑理は納得するように頷いた。「私は梢って呼ぶから、梢も私のこと笑理って呼んでよ」「うん……笑理」慣れない口調で、梢は初めて笑理を呼び捨てで読んだ。「何、梢?」こちらを見つめる笑理の微笑みに耐え抜けず、梢は顔と耳を真っ赤にしてうつむいた。「いい加減慣れてよ」「ごめん」「ほら、よく私の顔見てごらん」前のめりになった笑理に顎クイをされた梢は、まじまじと笑理の顔を見つめた。ナチュラルな化粧、大きく澄んだ瞳、きりっとした鼻立ち、程よくグロスが輝く桃色の唇……笑理の完璧とも言える顔立ちは、やはり梢を照れさせる要因となっている。「ダメ……やっぱり、恥ずかしい」笑理に見つめられ、梢はまたしても目を背けてしまった。「テニス部の時、散々
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第四章『酔った勢いのキス』 その1

出勤途中の満員電車の中でスマホを見ていた梢の目に、あるネットニュースの記事が目に入った。『西園寺久子、情報番組でこたつ記事を痛烈批判!』見出しが気になった梢はリンクをタップして、記事を読み始めた。それは、朝の情報番組で、大した取材やリサーチもしないのに、ただテレビに映っていた様子を記事に書くだけの仕事をする者が『物書き』を名乗るなと、出演していた久子のコメントがそのまま記事になっていた。また久子は、番組内においてネットニュースの誤字脱字や乏しい文章表現の酷さも指摘し、挙句こたつ記事を書かせている新聞社や週刊誌といった各メディアの存在までも否定するような発言をしたのだ。生放送で編集もできない中での久子の辛口コメントは、時に番組出演者や制作陣もヒヤヒヤさせるほどで、今回の発言はこたつ記事の存在も相まって、瞬く間に炎上することに。久子を担当している梢にとっては、こういったトラブルの積み重ねがストレスの要因になっていたが、頭を悩ませているのは上司の高梨も同様だった。「西園寺先生の世界観は独特で、固定のファン層も多いけど、こういうのがきっかけでファンが離れると、本の売り上げにも影響するんだよな」今でこそ管理職となり落ち着いている高梨だったが、かつては敏腕編集者として数多くの小説家を育て上げ、同僚や後輩、そして作家とも浮名を流した噂があるほど、まさにギラギラした男であった。普段は温厚な性格だが、出版会議での意見交換や、流通が決まった新作をチェックする際に見受けられる、目の奥から伝わる殺気のようなものは、やはりかつての名残があるのだろう。午後になり、梢がいつものように仕事をしていると、メールの通知が来た。送信元を確認すると、それは渦中の人とも言うべき、久子であった。以前久子とは新作のプロットに関して相談をしたことがあったが、久子は既に初稿を書き上げ、原稿データを梢宛てのメールに送ってきたのだ。出版会議にも通っていない状態で初稿を書いてきたことに梢は驚き、既に書き始めてしまった以上は、何とかして形にしなければそれこそ久子に何を言われるか分からない。別会議から戻ってきた高梨に、梢はこの件を相談した。「西園寺先生の企画が通らないことはないが、こう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-18
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第四章『酔った勢いのキス』 その2

久子の炎上に関するネットニュースの記事を見たのは、笑理も同じであった。クライマックスを迎える新聞連載小説の執筆の途中、参考資料を調べるためにネットを立ち上げたとき、記事の存在を知った。「ああ、炎上してるよ」笑理は呆れたように、記事を閲覧した。また、他のメディアやネットニュースでも、同じような内容で、久子の記事がアップされていた。誤字脱字や乏しい文章力を批判した久子のことが書かれている記事そのものが、誤字脱字や文章力が酷いのが何とも皮肉であると、笑理は記事を見ながら思っていた。と同時に、久子の担当をしている梢のことも心配になっていた。「梢、大丈夫かな……」久子のことを考えるとバカバカしいと思ったが、梢のこととなると話は別である。笑理はスマホを手にすると、梢を気にかけるLINEを送り、再び執筆作業に取り掛かった。梢は、自ら久子の新作原稿をプリントアウトしたうえで一通り読み終わった後、その原稿を高梨にも渡した。高梨もその場で原稿を読み終えたようで、梢はミーティングルームに呼ばれた。「悔しいが、作品のクオリティは間違いないな」「ええ、私もそう思います」梢も高梨も、その考えは同じであった。人間性に難ありな久子だが、やはり長年文芸の世界に足を踏み入れているだけあって、作品の質は期待以上のものだった。「来月の出版会議では、形式的に承認を得ることにしよう。西園寺先生には、フライングしたことはちゃんと伝えておく。承認を得てから、山辺君も本格的に西園寺先生と作業を進めてくれ。だが今回は、作業時間を多めに見積もっておいた方が良いだろう。またどこで、炎上するか分からないからな」「はい、よろしくお願いします」ミーティングルームから戻った梢は、デスクに置いてあるパソコンで充電をしてあったスマホを手に取り、そこで初めて笑理からLINEが届いていることに気がついた。『大丈夫? いつでも、うちにおいで』短い一文ながら、梢は笑理から伝わる深い愛情を感じていた。今すぐにでも笑理に会いたい衝動に駆られた梢は、『今晩、マンション行っても良い?』と返信をした。するとすぐに、笑理からメッセージが届いた。
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第四章『酔った勢いのキス』 その3

笑理のマンションに向かう途中で、梢はコンビニに立ち寄り、何本もの缶チューハイや、カルパスや柿の種などのおつまみを購入した。決してアルコールが強いわけではない梢だったが、久子の件もあり、今日は飲みたい気分だった。「いらっしゃい」ドアを開けて迎えた笑理を見るなり、梢は笑理に抱き着いた。「会いたかった、笑理」「はいはい。さ、上がって」笑理に促され、梢はそのまま中へ入った。「今日は随分飲むつもりなんだ。まあ、無理もないか。あのババアのこともあるんだから」梢の持っているコンビニの袋を見て、笑理は苦笑して言った。「だって、飲まなきゃやってられないんだもん」梢は膨れっ面で呟く。「今日は私も付き合ってあげる。さ、飲もう」テーブルに缶チューハイとおつまみを並べ、梢と笑理は二人だけの飲み会を始めることになった。一方、駅前にある個室居酒屋には、仕事終わりの高梨が来店していた。店員に席を案内されると既に久子が来ており、掘りごたつに足を延ばしながら、焼き鳥をつまみにして、中ジョッキのビールを飲んでいた。「和彦、待ってたわよ」高梨は呆れたように、向かい合うように座ると、「だから、下の名前で呼ぶなって言ってるだろ。今日は、仕事のことで君に言いたいことがあって時間作ってもらったんだから」店員に芋焼酎のソーダ割を注文すると、高梨は仕事の顔になった。「今日、うちの山辺君宛に、最新作の原稿送っただろ?」「あら、見てくれたの」「相変わらずのクオリティで感心するよ、悔しいけどな」「そりゃ、あなたのおかげで、私はここまで来れたんですもの」久子は呑気そうに言っていたが、高梨は不機嫌そうに煙草を吸い始めた。「作品のことは評価するさ。だが、まだ出版会議の承認も得てないのに、フライングで執筆するのはやめてもらえないか。作品ありきで企画を進めるようなことはしたくない」「私たち、もう二十年近い長い付き合いなのよ。それぐらいのこと良いじゃない。あなただって、今や『ひかり書房』の文芸部長なんですから」軽くあしらう久子に対して、高梨は
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第四章『酔った勢いのキス』 その4

何本も買った缶チューハイは、ほとんどが空き缶になっていた。ゆっくり飲む笑理に対し、今日の梢のペースは速かった。「梢、飲みすぎじゃない?」笑理は心配そうに声をかけるが、梢はそれでも飲み続けていた。「だって、今日は飲みたいんだもん」メトロノームのように、体を左右に揺らしながら、梢は缶チューハイを飲み続けている。顔もほんのり赤くなっており、酩酊状態になるのも時間の問題で、笑理は心配そうに梢を見つめた。「まあ、あの西園寺久子に振り回されたら、飲みたくなる気持ちも分からなくないけどね」「でしょ。最初はさ、西園寺先生の作品が好きで、担当になったときは嬉しかった。でも、いざ仕事の付き合いを始めたら、自分勝手だし、感情の起伏激しいし、何より画が強いし……。もうあんな人に振り回されたくない」梢が大きな溜息をついて顔を伏せると、笑理は優しく梢の頭を撫でた。「苦労してるんだね、梢は……」もう一度梢は勢いよく顔を上げた。「ねえ笑理、キスしよう」笑理が返事を返す前に、うつろな目になった梢から唇を奪われた。梢は笑理の首元に腕を回しており、しばらく唇を離さなかった。「ありがとう」ようやく唇を離し、デレデレと酔いが回った梢を見て、笑理はそんな梢の姿が愛おしく思えた。「何か、暑くなってきちゃった」梢はブラウスを脱ぎ、キャミソール姿になった。「梢、今日はもう寝よう」「うん」笑理は、千鳥足になっている梢を抱えながら、寝室のベッドに寝かせた。あっという間に梢は、スヤスヤと眠ってしまった。梢に布団をかぶせ、梢の額におやすみのキスをした笑理は、そのままリビングに戻ると、空き缶やおつまみのごみを片付け始めた。翌朝、目を覚ました梢が体を起こそうとすると、激しい頭痛に襲われた。梢は昨晩の記憶が曖昧で、自身がキャミソール姿のまま眠っていることに驚いていた。そこへ笑理が入ってきた。「おはよう、起きた?」「私……昨日、何かした?」「覚えてないの、
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第四章『酔った勢いのキス』 その5

小さくソファーに座っている梢の元に、笑理がインスタントの味噌汁を運んできた。「はい、しじみの味噌汁。飲むとスッキリするよ」「ありがとう。作ってくれたの?」「まさか。さっき、コンビニ行って買ってきたの」梢は味噌汁を一口飲むと、ホッと溜息をついた。「美味しい」「昨日は相当飲んでたね」久子の愚痴を言いながら缶チューハイをいくつも飲んだことは覚えているが、いつ自分がブラウスを脱いだのか、どうやって寝室まで行ったのか、梢の記憶は途中から曖昧だった。昨晩の記憶を思い出そうとしていると、梢は突然笑理から肩を抱かれた。「ねえ、今お風呂沸かしてるの。一緒に入ろうか?」「えッ……一緒に?」激しく梢は動揺し、胸の鼓動が早くなる。「人前でブラウス脱いだ人が、そんなに動揺する?」笑理がからかうように言った。「それは言わないでよ……」「私たち、付き合ってるんだよ。裸の付き合いもしなきゃね」笑理に言われるがまま、梢は一緒に風呂に入ることになった。浴槽の中で背後から笑理に抱き着かれている梢は、緊張と幸福の二つの感情が交差し、風呂湯の暖かさと笑理の体の暖かさを同時に肌で感じながら、うっとりしていた。「たまには、こういうのも良いでしょ」耳元で笑理にささやかれて、梢は照れながらも大きく頷いた。「うん。ちょっと恥ずかしいけど」「私は全然恥ずかしくないよ」「すごいね、笑理は」「これからも、うちに泊まりに来たときは、一緒にお風呂入ろうね」梢と笑理はお互いにじっと見つめ合うと、優しく唇を重ね合わせた。笑理と一緒にいるときは、仕事のことも何にもかも忘れることができ、改めて自分にとっての大切な人であることを実感していた。「酔った時の梢って、結構積極的なんだね」「え?」自分から笑理にキスをした記憶も、梢はうる覚えだった。「シラフの時も、梢からキスされたいな」「私だって、やろうと思えば、それぐらい…&h
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