目覚ましのベルが鳴って、私は慌てて布団から飛び起きた。 もうちょっと早く起きるはずだったけれども、寝過ごしちゃったみたい。「やば、また寝坊しそうだった……」 朝ごはんを急いでかきこんで、慌ただしく制服に袖を通す。鏡の前に立つけれど、そこに映る私はどこにでもいる普通の女子高生。 黒髪のセミロングに焦げ茶色の瞳。 ……なんだか、少し退屈な気がする。 と、考えている暇は無かったから急いで学校へ向かう。「お、おはよう……」 遅刻寸前で教室に入る。「敦賀さん、おはよう……」 山田さんが挨拶してくれた。 そこまで私自身、仲が良いのか分からないけれど、山田さんは今まで遅刻はしていない。 ただ暗くてどんよりしている、そんな女の子。「佐奈、今日も寝坊したの?」「そうなんだよ……」 教室の奥で動橋陽菜が私をからかってきた。 仕方ないけれどね。 私はにっこりとはにかんで、返事をする。「さて、ホームルームを始める」 そうしていたら、チャイムが鳴って先生が入ってきた。 いつものように授業が始まっていく。 順調に授業を受けていく。 休み時間、教室で陽菜達と話していると、陽菜が笑いながら私に言った。「そういえば佐奈、この前また募金に全部入れたんでしょ? ほんっと断れないんだから」 先日クラスで募金活動があった時、募金で財布に入っていたお金を入れたんだっけ。 流石に注目するよね。 財布をさかさまにして入れていたし。「えっ、だって……必要な人がいるならと思って」 私ははにかみながら答えた。「バカだなぁ、騙されるよ絶対」 冗談めかして言われても、図星だから言い返せなかった。 だって実際、街で『幸運を呼ぶ壺』を売りつけられそうになったこともあったし。 冷静に考えれば怪しいのに…… 放課後は文芸部に向かう。 私の机の上には、ノートとパソコン。書くのはオリジナル小説だったり、乙女ゲーム『クリスタル・ガーデン』の二次創作だったり。 特に『転生ヒドインが破滅する』ざまぁ系の小説は、なぜかよく筆が進むし、ネットにアップできる。 でも、『クリスタル・ガーデン』のヒドイン破滅のざまぁ系は絶対に書きたくない。ヒロインのサフィー・プラハが破滅する話は特に。「サフィーが破滅するのは……イヤだ……」
Last Updated : 2025-10-16 Read more