All Chapters of 転生したら王族だった: Chapter 21 - Chapter 30

48 Chapters

21話 無邪気な言葉と、ディアブロの背中を流れる冷たい汗

「我を消すだと? 悪魔は不死の存在だ。殺せるわけがないだろ」 ディアブロは、思わず人間の戯言にムキになりツッコミを入れてしまい、慌てて平静を装った。 それを聞いたレイニーがムスッとした表情で頬を膨らませ、面倒くさそうに説明を始めた。「だーかーらー消すって言ったでしょ? 殺せなくてもさぁー存在そのものを、この世界から消しちゃえば良いんじゃないっ? たとえばさぁ〜異次元に閉じ込めちゃったりすれば、どーなるだろうねぇ〜? 興味ない? どうなっちゃうんだろうね……? この世界から存在は消えちゃうよね。でも、他の次元では生きてるの。それって面白い実験じゃない? キミも興味あるでしょ? ね、面白そうだよね~えへっ♪」 レイニーが言い終わると、ニコッと微笑み、ディアブロを実験動物を見るような眼差しで見つめた。その目は好奇心で輝き、まるで悪魔が人間で遊ぶ時の眼差しと同じだった。ディアブロは、この状況に焦り、状況が完全に立場が入れ替わっていることに気づいた。 だが、人間の子供が異次元だと? 高度な空間魔法の上位である、さらに上位の異次元魔法を使えるわけが……ないだろ。「は? 人間の貴様が、異空間魔法を使える訳がなかろう。魔族や悪魔などの上位種でも使える者が少ないのだぞ」 まるで使えるような話し方をするので、ディアブロは真面目に説明をした。どれほど異次元魔法が難しいのかを、その顔に焦りをにじませながら語った。「あはは。はい、ざんねーん。俺、色々と頑張って練習したからさぁ……使えるようになっちゃったんだぁ〜♪ ほらぁ」 レイニーは、書庫で魔法の勉強と、ガードナーとの魔法の練習とアドバイスを受け、知識を教えられ、上達とはいえないほど格段に知識、魔力、種類が爆発的に増えていた。まさにチート能力といえる知識の吸収力だった。もともとアニメやゲームで知識があったし、イメージできれば問題がなかった。基礎と常識を教わり、あとは好奇心と実験を密かに繰り返していたのだ。 そして今回の、貴重な不死という存在の実験材料が目の前に現れた。見過ごせるわけがない。
last updateLast Updated : 2025-11-06
Read more

22話 バリアと結界、閉ざされた希望

「分かっている。この部屋には封印が施されているしな」 ディアブロは、絶望感を感じながらも、一縷の希望を見出そうとした。だが、レイニーの次の言葉が、その希望を打ち砕く。「はい。ざんねーん。封印なんて破って逃げるつもりでしょ? 封印は劣化してたし、キミなら強引に破れるだろうから……俺がバリアを張っておいた! さらに〜結界を頑丈に張り直したから♪」 レイニーの言葉に、ディアブロの心は深い谷底へと沈んだ。♢黒炎の恐怖(俺の爪でも切り裂けないバリアか。ならば魔法なら……?) ディアブロは心の中で、もう一つの手段を模索し始めた。彼の思考を読み取ったかのように、レイニーがニコッと笑顔で答えた。「魔法も物理攻撃でも破れないと思うよ?」「なぜ我の考えが?」 ディアブロは、レイニーの洞察力に驚愕した。「だってさぁ〜ふつう考えるでしょ。物理攻撃がダメだったら……魔法を試すかってさぁ。ほら」 レイニーが手を翳し、ディアブロが先ほど放ったものの五倍はあろうかという威力を持つ魔法を、宝物庫の壁に放った。轟音とともに辺りが漆黒の炎に包まれ、ディアブロの心臓は早鐘を打ち、冷や汗が背中を伝った。「なんだと!? 黒炎だと!? 我にさえ紫色の黒炎が限度なんだぞ。こんな子供が黒炎を、あっさりと……しかも威力も格段に違うぞ。我が体調が万全でもあの威力は……出せん。人間のガキに……劣るだと!?」 ディアブロの声は震え、目には明らかな恐怖が浮かんでいた。恐怖が押し寄せ、ディアブロは逃げるのを諦めた。彼の肩は落ち、膝が小刻みに震え始めた。 ディアブロの心中には、何が起きているのか理解できないまま、怯えと困惑が渦巻いていた。最上位の悪魔である自分が、こんな子供に追い詰められるとは想像すらしていなかった。彼は一瞬、かつての威厳と力を取り戻すために策を巡らすが、レイニーの前では全てが無力であることを悟った。
last updateLast Updated : 2025-11-07
Read more

23話 屈辱の契約提案

 彼は精神支配の魔法の基本を説明し始めたが、その説明の中に微細な魔力を送り込み、レイニーの意識を揺さぶろうと試みた。 しかし、レイニーは全く気づかない様子で、ただ嬉しそうに頷いていた。「うん。うん。それで、それで~?」 レイニーは興味津々に聞き返した。 ディアブロの心中には焦りと恐怖が募るばかりだった。こんな状況では自分の力が通じないことを理解し始めていたが、それでも何とかしてこの子供を制御しなければならないと思っていた。「次に、より高度な精神支配の術を教えよう。これを使えば、対象の意識を完全に支配することができる」 ディアブロは続けた。彼の声には微かな震えが混じっていたが、必死に冷静を装っていた。「へぇ〜、面白そうだね! もっと教えて!」 レイニーは目を輝かせて言った。その無邪気な笑顔に、ディアブロの心は一層冷たくなっていった。彼の内心では、この子供が一体何者なのかという疑問が渦巻いていたが、それを解明する手がかりはまだ見つかっていなかった。 ディアブロは、内心の焦りと恐怖を押し隠しながら、さらに高度な精神支配の術を説明し続けた。彼の手は微かに震えていたが、何とかしてこの状況を打開しようと必死だった。♢絶望的な敗北 レイニーが油断したのか、あるいはディアブロを信用したのか、精神支配を教える流れで、レイニーの体に自然な流れで触れられるチャンスが訪れた。ディアブロは当然、間接的に目を見つめ魔力を使うことで相手を支配できるが、より確実により強力に支配するには、相手に直接触れ、直接オーラを流し込めれば支配できたも同然だ。 ディアブロは、レイニーの体に直接触れ、悪魔のオーラを流し込もうとした。しかし、魔力が全く入っていかない。通常、体に触れ直接的に魔力を流し込み侵食し精神支配をすれば、多少力の差があっても可能で失敗することはなかったはずなのに。 レイニーの魔力の性質や魔力量を覗こうとすると、その溢れ出す闇属性特有の負のオーラにレイニーは覆われており、ディアブロは負のオーラをまともに食らってしまった。ディアブロは、魔力の強大さや魔力量を調べるどころではな
last updateLast Updated : 2025-11-08
Read more

24話 擬態と屈辱、悪魔の誇りの崩壊

♢「あーちゃん」の誕生 シュワァァーとディアブロから紫の煙のようなものが立ち込めると、悪魔は可愛らしいマスコットキャラクターというか、ぬいぐるみのようなモノに擬態した。 小さな体にふわふわの白い毛が覆われ、大きな丸い目はキラキラと輝き、ピンと立った耳とふさふさのしっぽが特徴的だった。「わぁ……なにそれーかわいいっ♪」 レイニーの純粋な反応に、ディアブロは一瞬の安堵を覚えた。「だろ? これで側にいるぞ。どうだ?」 ディアブロは、必死に微笑みを浮かべて言った。 これが……命乞いというやつか。こんな心境だったのか……。最上位の悪魔である自分がここまで追い詰められ、必死に命を乞うことになるとは……。 ディアブロの心中には、かつての威厳と誇りが完全に崩れ去る音が響いていた。「わかったっ♪ 契約するぅ〜」 レイニーの無邪気な返答に、ディアブロの心は一瞬揺らいだ。「やっぱりガキだな、チョロいな」ディアブロは内心でほくそ笑んだ。少しずつ自信を取り戻し始めた。「お互いに契約の意思があるということだな。我に手を翳して魔力を合わせるぞ」 ディアブロは心の中でニヤッと笑い、ホッとした。 レイニーが手を翳すと、ぬいぐるみの姿の悪魔も手を翳し、魔力を合わせ詠唱を始めた。 輝かしい紋章と古代の文字が刻まれた魔法陣がお互いの足元に浮かび上がる。その瞬間、ディアブロの目に冷たい光が宿った。魔法陣は青白い光を放ち、まるでアニメのシーンのようにゆっくりと回転し始めた。幾何学的な模様が一つ一つ浮かび上がり、中心から淡い光のラインが広がっていく様は美しくも不気味だった。契約が成立すると、魔法陣はその光を強く瞬かせ、一瞬にして消え去った。 ……結果は、十対ゼロの主従関係となった。意見も言えぬ完全なる支配される関係だ。この最上位の悪魔だった自分が、使用人に成り下がるとは……こんな事があって良いのか。ディア
last updateLast Updated : 2025-11-09
Read more

25話 恐怖から安堵へ、あーちゃんの誕生

 レイニー様に捨てられれば解放となって嬉しいはずなのに……自分に誓ってしまった契約と従者契約があるため、裏切れない。裏切りの代償として何が起こるのか分からないことへの恐怖もある。そして何よりも、裏切ろうとすら思えなくなっている自分に驚いていた。漠然とした恐怖から解放され、子供のような純粋さに触れることで、ディアブロはレイニーに不思議と惹かれ始めていた。「すみません……疑問に思ったことを口に出してしまって」「あぁ〜。あはは……飼い主に似るんだねぇ♪ 俺もね、疑問に思ったことは口に出しちゃうんだよね〜。一緒だね〜」 あーちゃんの頭を撫でて、レイニーは微笑んだ。その温かい感触に、あーちゃんは不思議な気持ちに戸惑っていた。「……なんだ……この温かい気持ちは……」♢魔法の点取ゲーム「あーちゃん、あーちゃん魔法のさぁ……点取ゲームしよ♪」「点取ゲームですかぁ? 何を賭けますか?」 あーちゃんは悪戯っぽい顔をして聞いてきた。「ん〜じゃあ、あーちゃんのご飯を豪華にしてあげる!」「……はい?」 あーちゃんが戸惑い、聞き返した。「はい? って、あーちゃんペットだし〜。本当はペットの餌だよ?」 残飯だ、とレイニーは付け加えた。「……はい。それでお願いします」「じゃぁ〜あーちゃんが負けたら?」「……えっと……」 自分で言い出しておいて掛けるものがないことに気付いた。レイニー様が欲しがりそうな物は持っていない。地位や金、名誉を提示しても興味がないだろうし……。今思いついたものは全て、レイニー様の実力で容易に奪えることを嫌というほど味わったばかりだ。あーちゃんが困った表情をしていると、レイニー様
last updateLast Updated : 2025-11-10
Read more

26話 王城から城下町へ、モフモフの旅

♢城下町へ 翌朝、レイニーはルナとフィーに挨拶を済ませ、あーちゃんを肩に乗せて城下町へと繰り出すことにした。最近、城での練習ばかりで少し退屈していたのだ。「レイニー様、今日はどちらへ?」 あーちゃんが肩の上で尋ねた。「ん〜、城下町をブラブラしようかなって。美味しいものとか、面白いものとか見つけたいんだよね〜」 レイニーはワクワクした様子で答えた。城下町は活気に満ちており、香ばしい屋台の匂いが漂い、道行く人々からは賑やかな話し声が聞こえてくる。色とりどりの店が軒を連ね、レイニーは目を輝かせ、あちこちの店を覗き込んだ。「わぁ、これ美味しそう!」 レイニーは屋台で売られている串焼きを見つけ、すぐに購入した。熱々の串焼きを一口食べると、顔がほころぶ。「あーちゃんも食べる?」 レイニーがあーちゃんに差し出すと、あーちゃんは遠慮がちに首を振った。「いえ、私は……」「え〜、食べなよ! 美味しいんだからぁ!」 レイニーは無理やりあーちゃんの口元に串焼きを近づけた。あーちゃんは困惑した表情を浮かべたが、レイニーの強い勧めに負け、小さく一口かじった。「……悪くないですね」 あーちゃんは意外そうな顔をして呟いた。その言葉に、レイニーは満足げに笑った。 二人が城下町を歩いていると、突然、路地裏から悲鳴が聞こえてきた。レイニーはすぐにそちらへ顔を向けた。「ん? なんかあったのかな?」 レイニーは好奇心に導かれるように、悲鳴が聞こえた路地裏へと足を踏み入れた。あーちゃんは少し不安そうな顔をしたが、レイニーの肩から離れることなくついていく。 路地裏の奥には、数人の男が一人のお年寄りを囲んでいた。男たちは荒々しい口調で何かを要求しており、お年寄りは怯えた様子で震えていた。「おい、早く金を出しやがれ! さもないと……」 男の一人が凶悪な笑みを浮かべ、お年寄りに手を伸ばした。レイニーはその光景を見て
last updateLast Updated : 2025-11-11
Read more

27話 騎士団長の娘、エリゼの温かい誘い

「レイニー様、あの方たちは……もう動けなくなってしまいましたよ」 あーちゃんが指差すと、男たちは未だ路地裏に倒れたまま、震え続けていた。「え〜、そうなの? 早く起きないと、おじいさん困っちゃうじゃん」 レイニーは困ったように首を傾げた。その表情は、まるで自分がどれほどのことをしたのか理解していないかのようだった。「おじいさん、警備兵の人とか呼んだ方がいいのかな?」 レイニーがお年寄りに尋ねると、お年寄りは慌てて首を振った。「い、いや、もう大丈夫だ……ありがとうな、坊主。本当に助かった……」 お年寄りは深々と頭を下げた。レイニーは少し寂しそうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。「そっか! じゃあ、もう大丈夫だね! あーちゃん、行こっか!」 レイニーは明るい声であーちゃんに呼びかけ、路地裏を後にした。あーちゃんは、未だに震えている男たちと、何も知らないレイニーの背中を交互に見つめた。この子供の行動は、善意と無自覚な破壊衝動が混在している。一体、この先何が起こるのだろうか。あーちゃんの胸には、新たな不安と、レイニーに対する畏敬の念が同時に広がっていた。♢退屈な日常と新たな誘い お城での訓練も最近では飽きてきてしまっていた。というのも、魔法はお城にある書庫の魔術書を全て読破してしまい、魔術師団長のガードナーからも「教えられることはもう無い」と言われてしまったからだ。剣術も騎士団長のセリオスから指導を受けていたが、魔法の訓練より簡単に習得してしまった。レイニーの心には、満たされない退屈が募っていた。 暇を持て余し、軍の練習場で訓練を眺めていた。兵士たちの掛け声や、剣がぶつかり合う音が響く中で、レイニーの視線は宙を彷徨う。そこに、セリオスから剣術を教えてもらっている時に知り合った、彼の娘のエリゼがパタパタと足音を鳴らしながら駆け寄ってきた。金髪で色白だが健康的で、頬が桃色に染まった可愛らしい少女、活発的で元気なエリゼの姿は、見ているだけでこちらまで元気になる。その明るい笑顔は、レイニーの心に
last updateLast Updated : 2025-11-12
Read more

28話 悩み込む王子と、恋するエリゼの視線

 頬に指を当てて悩みこむその姿は、中性的であるため見ているととても可愛らしい。隣に座っていたエリゼは、頬を赤く染めてレイニーをぼーっと眺めていた。エリゼの視線は、レイニーの横顔に釘付けになっている。 にしっしっ……♪ そうだぁ〜エリゼは、王都に詳しいかもしれないじゃないか? 俺の知らない知識を持ってるはずだ。王都に、いろいろと興味がある! 王族なのに王都を知らないって問題だよねぇ……? えへへっ。そう考えると、レイニーは突然いたずらっ子っぽい表情に変わり、ニヤッと笑った。その瞳は、何か企んでいるかのように輝いている。 エリゼが、レイニーの考え事が終わったと思い、声を掛けてきた。「お兄ちゃん、考え事は終わった?」 エリゼが、少し残念そうな表情をしてレイニーに尋ねた。「どこで遊ぼうかと、考えてたんだぁー。エリゼは、王都は詳しいのかな?」 レイニーは、エリゼの顔を覗き込むようにして尋ねた。「うぅ〜ん……あんまり詳しくはないよ。だって、一人で外に出たらダメだってお父さんに言われてるし……」 エリゼは口をとがらせ、いじけた表情をして地面に転がっていた小さな石を軽く蹴りながら言った。その声には、不満と、少しの寂しさが混じっている。 あぁ……そういえばエリゼって、セリオス騎士団長に溺愛されてるって聞いたことあるなぁ……と、レイニーは思い出した。実際にエリゼが一人で出歩いたら……うん、可愛いし人懐っこいし……優しいから簡単に拐われるだろうな。レイニーは、エリゼの無防備さに心配を覚えた。「そっかぁ、じゃあムリか……」 とレイニーが残念そうな表情をして言った。その声には、本心からの落胆が滲んでいる。「え? えぇ!? ムリって何が!?」 エリゼが前のめりになり、レイニーに近づき、目を丸くして驚いた表情で聞いてきた。その瞳は、レイニ
last updateLast Updated : 2025-11-13
Read more

29話 初めての外出許可、主導権はどちらに?

 あぁ……そっか、勝手に自己判断をするなってやつね。はいはい……これはあまり好きじゃないんだけど……。レイニーは、護衛兵の融通の利かなさにうんざりした。 訓練場に向かってレイニーが手を上げた。騎士団長のお付きが気づき、騎士団長に声を掛けると、騎士団長が慌ててレイニーの元へやってきた。その足取りは、まるで獲物を前にした猟犬のように素早い。「なにか、ございましたでしょうか?」 騎士団長が緊張した様子でレイニーに聞いてきた。だから……嫌だったんだよね……。訓練中に呼び出すのってさぁ……常識が分かってない子供かお貴族様みたいでさぁ。レイニーは、心の中で悪態をついた。「あ、あのね、訓練中に悪いね。エリゼと街で買い物をしたいんだけど……ダメかなっ?」 レイニーは、申し訳なさそうに、しかしきっぱりと尋ねた。うん。知ってる、ダメって言うのはさぁっ。 跪いていたセリオスが顔を上げてエリゼを睨んだので、エリゼが怯えてレイニーの腕にしがみついた。その小さな手は、レイニーの服をぎゅっと握りしめている。「あっ、俺が誘ったんだよっ。俺さぁ……城から出た経験が無いからさ。エリゼに案内を頼んだんだぁ~。そしたら、エリゼがお父さんに聞いてみないとって言うから、その確認をしたかったんだぁ~」(こうして、外出許可を取って外出をするのは初めてかも。前回……こっそりと抜け出してるけどね♪) レイニーは、自分が主導であるとアピールした。「……エリゼ、お前は街を案内できるのか?」 セリオスが不安そうな表情をして、エリゼを見つめて聞いた。その瞳には、娘への心配が色濃く浮かんでいる。「うん。お母さんと行くお店なら案内は出来るよっ♪」 エリゼが自信ありげな表情をして答えると、セリオスが考え始めた。その眉間には、深い皺が刻まれている。
last updateLast Updated : 2025-11-14
Read more

30話 「ちょっとだけ」の誘惑と双剣・短剣論争

「あっちだよ。行こ♪」 エリゼに手を引かれて、レイニーは後をついていく。平和だね〜? これって……この通りって、明らかに規制をされてるよね?? すれ違う人の仕草が軍人ぽいんですけど?? レイニーは、王都の異変に気づいた。「エリゼ、これって……普段と同じ感じなの?」 普段の王都を知らないレイニーは、エリゼに聞いてみた。「うぅ〜ん……少し人通りが少ない気がするぅー。歩きやすいかなぁ」 ニコニコした表情をしてエリゼが答えた。その顔には、疑問は一切浮かんでいない。 大通りを歩き、しばらく進むと商店が並ぶ通りに入った。そこからは、活気と、様々な匂いが漂ってくる。 ……わぁ……♪ 武器屋だぁ……入りたい! 武器だよ、武器! 王城では、武器といえば剣くらいしか見てないんだよね〜。レイニーの瞳は、好奇心で輝いた。「ねぇ、ねぇ……武器が見たいんだけど……だめ?」 レイニーは、エリゼの顔を覗き込むようにして尋ねた。「んぅ……お兄ちゃん、見たいのぉ?」 エリゼが、少し困った表情をして聞いてきた。その声には、レイニーの願いを叶えたい気持ちと、父親の言いつけとの間で揺れる心が見え隠れする。「うん。見たい!」 レイニーは、食い気味に答えた。「ちょっとだけだよ? わかったぁ?」「うん。ちょっと……だけね」 レイニーは、指で「ちょっとだけ」のジェスチャーをした。「ちょっとだけだよ?」と言っていたが、エリゼも騎士団長の娘で剣術を習い、武器にも興味があるらしく二人で目を輝かせてはしゃいで店内を見ていた。その瞳は、まるで宝物を見つけたかのように輝いている。「ねぇ〜これ、これ〜双剣って格好良いよね〜♪」 レイニーが目を輝かせて
last updateLast Updated : 2025-11-15
Read more
PREV
12345
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status