転生したら王族だった

転生したら王族だった

last updateLast Updated : 2025-10-22
By:  みみっくUpdated just now
Language: Japanese
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異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

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Chapter 1

1話 どうやら俺は転生したらしい

♢異世界転生と妹との出会い

 部屋で寝ていたはずだった。だが、目覚めると自分の寝ていたベッドに部屋ではないことに気づく。視界に飛び込んできたのは、豪華絢爛な装飾が施された、広々とした空間だった。

(まるで……これって……中世のお城か貴族の屋敷の部屋じゃんっ!?)

 ぼんやりと周りを見回し、頭の中でアニメやゲームの情景を思い浮かべていた。

 周りの豪華な部屋を見て夢かと疑うが、背中に感じるベッドのフワフワとした柔らかな感触と、窓から差し込む陽の光の温かさが、これは紛れもない現実だと実感させた。鳥のさえずりが微かに聞こえ、風がカーテンを揺らす音がする。

 自分の体をゆっくりと起こし、じっと見つめる。すると、その体は以前の自分と比べて完全に若返っていて、幼い子供の姿になっていることに気づいた。これからのこの体で過ごすことを考えると、嬉しいやら不便そうにも感じた。

「この部屋を使っているとなると、さっきも思ったが金持ち確定じゃないのか? それに、かなりの権力者の子供だよね……」

 部屋から感じられる豪華さや、若い体を手に入れた自身の未来に対する期待と、若干の戸惑いが入り混じっていた。

 若い体を手に入れたのは理解できた。だが、どんな容姿になっているのか不安な思いを抱きつつベッドから下りた。部屋にあった豪華そうな姿見の鏡へと歩み寄り、自分の姿を映してみる。

(え? わぁっ。なに……誰、これ? お、俺なのか? えぇ? え……!? めっちゃ、か、可愛い……じゃん!?)

 鏡の中にいたのは、まるで童話から抜け出したような子供だった。淡い金髪は絹糸のようにさらさらと揺れ、頬は桃のように柔らかそうで、青い瞳は朝の空よりも澄んでいた。小さな顎、丸みを帯びた頬、長い睫毛――どこを見ても、完璧に“可愛い”が詰まっている。

「……え、これ……俺なの?」

 思わず声が漏れた。鏡の中の“俺”が、少し首を傾げた。その仕草すら、反則級に愛らしい。

「いやいやいや、待て待て……えっと……俺、男だよな? これ、女の子じゃ……ないのか? こんな可愛いとか……映画の世界でしか見たことないぞ……しかも金髪とか輝く透き通る青い瞳って」

 頬が熱くなる。自分の顔に赤面するなんて、人生初だった。

(えっと……これは、確認しないとだよね……)

 ドキドキしながら、豪華な子供用のネグリジェのようなパジャマの上から、そっと触れて確認すると……

「……あ、付いてる……俺、男の子だ……」

 触りなれたモノが付いていて安堵と、少しばかりの残念な気持ちが混ざり合う。

 ボーっと鏡に映る自分の可愛らしい顔を眺めていると、コンコン、と控えめなドアのノックの音にハッと我に返った。心臓が跳ね上がり、驚いて慌ててベッドに戻り、慌ただしく寝たフリをした。

 ベッドに寝ていると、知らない女性が優しく穏やかな声がかけられた。

「レイニー殿下、朝ですよ。起きてくださいませ。お外は良いお天気です」

 目をゆっくりと瞼を開け、声がする方を見ると、メイド服を身につけた可愛らしい女性が立っており、レイニーを優しいまなざしで見つめていた。その表情や仕草には、敬意や細やかな配慮が感じられる。

 メイドさんが、呼びかけている名前からすると、俺はレイニーというらしい。起きて少し会話をしていたら、どうやら俺は『殿下』と呼ばれているし……王族らしいぞ? マジか……すげぇ。貴族じゃなくて王族かぁ……。

 レイニーは、王族という響きに胸が高鳴り、心の中で小さくガッツポーズをした。お貴族様のさらに上の存在だよね? なんだか想像するとニヤけてしまうが我慢だ。メイドさんが、まだ目の前にいるし、怪し過ぎるよな。レイニーは、必死に表情を引き締めた。

 メイドさんに案内されて朝食を食べに食堂へ向かった。食堂へ行けば、何か情報収集ができるだろうと期待していたのだ。だが誰もいなく、豪華で大きなテーブルに料理が所狭しと並んでいるだけで、広くて豪華なスペースで一人で食事をすることになった。まぁ、これはこれで助かったのかも。いろいろと話をして、怪しまれてボロが出ちゃいそうだしなっ。レイニーは、内心で安堵の息を漏らした。

 部屋に戻り、着替えをして……って、えぇ!? なに……この服装は!? レイニーは、目の前の服を見て、思わず声を上げそうになった。幼い子供で、中性的な感じだから許されるけど……それにしても、これは……少し可愛すぎじゃない? まぁ……似合ってるから良いけどさぁ、俺、男の子だよ? フリルやリボンがふんだんに使われた、まるで女の子が着るような可愛らしいデザインに、レイニーは戸惑いを隠せない。

 メイドさんがニコニコしながら俺を着替えさせてくれるのは嬉しいけど、これメイドさんたちの趣味じゃないか? フリルが付いた可愛いシャツに……可愛いデザインの半ズボン。んで、健康そうな色白の太ももに、メイドさんたちの目線を感じるのは気のせい? 彼女たちの視線が、熱を帯びてレイニーの肌にまとわりつくような錯覚に陥る。

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1話 どうやら俺は転生したらしい
♢異世界転生と妹との出会い 部屋で寝ていたはずだった。だが、目覚めると自分の寝ていたベッドに部屋ではないことに気づく。視界に飛び込んできたのは、豪華絢爛な装飾が施された、広々とした空間だった。(まるで……これって……中世のお城か貴族の屋敷の部屋じゃんっ!?) ぼんやりと周りを見回し、頭の中でアニメやゲームの情景を思い浮かべていた。 周りの豪華な部屋を見て夢かと疑うが、背中に感じるベッドのフワフワとした柔らかな感触と、窓から差し込む陽の光の温かさが、これは紛れもない現実だと実感させた。鳥のさえずりが微かに聞こえ、風がカーテンを揺らす音がする。 自分の体をゆっくりと起こし、じっと見つめる。すると、その体は以前の自分と比べて完全に若返っていて、幼い子供の姿になっていることに気づいた。これからのこの体で過ごすことを考えると、嬉しいやら不便そうにも感じた。「この部屋を使っているとなると、さっきも思ったが金持ち確定じゃないのか? それに、かなりの権力者の子供だよね……」 部屋から感じられる豪華さや、若い体を手に入れた自身の未来に対する期待と、若干の戸惑いが入り混じっていた。 若い体を手に入れたのは理解できた。だが、どんな容姿になっているのか不安な思いを抱きつつベッドから下りた。部屋にあった豪華そうな姿見の鏡へと歩み寄り、自分の姿を映してみる。(え? わぁっ。なに……誰、これ? お、俺なのか? えぇ? え……!? めっちゃ、か、可愛い……じゃん!?) 鏡の中にいたのは、まるで童話から抜け出したような子供だった。淡い金髪は絹糸のようにさらさらと揺れ、頬は桃のように柔らかそうで、青い瞳は朝の空よりも澄んでいた。小さな顎、丸みを帯びた頬、長い睫毛――どこを見ても、完璧に“可愛い”が詰まっている。「……え、これ……俺なの?」 思わず声が漏れた。鏡の中の“俺”が、少し首を傾げた。その仕草すら、反則級に愛らしい。「いやいやいや、待て待て……えっと……俺、男だよな? これ、女の子じゃ……ないのか? こんな可愛いとか……映画の世界でしか見たことないぞ……しかも金髪とか輝く透き通る青い瞳って」 頬が熱くなる。自分の顔に赤面するなんて、人生初だった。(えっと……これは、確認しないとだよね……) ドキドキしながら、豪華な子供用のネグリジェのようなパジャマの上から、そっ
last updateLast Updated : 2025-10-21
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2話 忙しい前世との対比と、仕事をしたくて頭を抱える退屈な日々
 あぁ、女の子は、こういう視線を感じているのね……恥ずかしいなぁ……。でも、減るもんじゃないし、ちょっとサービスしちゃおうかなっ。レイニーの顔に、悪戯っぽい笑みが浮かんだ。 メイドたちの熱い視線を背中に感じて、ふと片足を前に出し、膝を軽く曲げてみる。ショートパンツの裾から覗く白く健康的でうっすらと桃色を帯びた柔らかな太ももが、光を受けてふんわりと輝いた。両手を背中に回し、少しだけ体をひねって鏡を覗き込む。「……こういうの、好きなんでしょ?」 無邪気な笑みとともに、ショートパンツから可愛らしくも色っぽい太ももが一層際立つ。 ……な、何やってんだ、俺。レイニーは、自分の行動に内心でツッコミを入れる。 メイドさんたちが、一瞬沈黙し、次の瞬間――その光景に目を輝かせ、興奮したように首を縦に必死に振っていた。しばらくレイニーを黙って見つめ、そして、声を揃えて大きな声で答えた。「「「レイニー様ぁ……可愛いぃぃぃ♡」」」「は、はいっ! 似合っております!! ……とっても!」「か、可愛らしすぎますっ! はぅ……♡」 似合っているらしいし、喜んでくれているようで、恥ずかしい思いが無駄にならなくてよかった。そして、引かれなくてよかったわ……。と心の中で呟きレイニーは、ほっと胸を撫で下ろした。 あれ? メイドさんたちがレイニーをチラチラと見ながら、残念そうな顔をして出て行ってしまった。その背中には、名残惜しさが漂っている。「え? あれ?? 俺のスケジュールは? 誰も何も教えてくれずに行っちゃったよ〜? ここで待機ですかー? 何をすれば? おーい……」 レイニーは、ぽつんと部屋に取り残され、途方に暮れた。 前世では忙しくて休みをくれ、休憩をくれ!って散々思っていたけど、実際に暇になると何か仕事をしたくなってくるんだよなぁ……。こういう時には、ゴロゴロして過ごすしかないよね。メイドさんたちも忙しくしているし、仕事の邪魔をしちゃ悪いさ~。テレビも漫画もインターネットもないし……どーしよー? レイニーは、退屈のあまり頭を抱えた。 コンコン、とドアをノックする音が聞こえたので、レイニーは「はい」と返事をした。メイドさんだと思ってベッドでゴロゴロしていると、部屋に入ってきた人が近くで声を掛けてきた。その声は、明らかにメイドさんの声ではなく、幼くて可愛らしい、澄んだ声だっ
last updateLast Updated : 2025-10-21
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3話 魔法への強い興味の正当化
 妹に案内をしてもらい、書庫へ辿り着いた。書庫の扉を開けると、そこは広く、街にある図書館と同じくらいの広さで、天井まで届くほどぎっしりと書籍が並べられていた。古紙とインクの匂いが混じり合い、知識の重みが空気中に漂っているようだ。 それに文字が読めるか心配だったが、書架に並んだ本を一瞥しただけで、その内容がすんなりと頭に入ってくることに気づいた。これは……転生特典ってやつだな。レイニーは、確信を持ってそう思った。少し期待をしていた……可愛い妹に字を教えてもらえるかと思ったが……うん。残念だ。レイニーは、少しばかり肩を落とした。 あ、下心とかないから。金髪の美少女を見慣れていなくて眺めていたいじゃん? だって可愛くて微笑んでくれるんだぞ? それに笑顔でお話できる機会なんてなかったからさっ。レイニーは、心の中で必死に言い訳をした。「レイニーお兄様は、最近は何をお読みになられているのですか?」 ルナが、キラキラとした瞳でレイニーを見上げて尋ねてきた。ちょ、ちょっと……その質問は早すぎだってばっ! ……ルナちゃん。レイニーは、内心でパニックになった。無難に図鑑とでも言っておくか? あ、でも……図鑑って読むものじゃなくて、調べるものってイメージだなぁ……? レイニーが困った表情をしていると、ルナがニコッと微笑んだ。その笑顔は、兄の困惑を解きほぐすかのように優しかった。「あ……お兄様、わたしに気遣ってわかりやすい言葉を選んでくれているのですねっ♪ むずかしい魔法の本でしょうか?」 ……ん!? 魔法の本!!? あぁ、物語のかな? レイニーは、ルナの言葉に、新たな可能性を見出した。♢魔法への憧れ ルナが「魔法」という言葉を発したので、レイニーはその響きに強く惹かれた。書庫を見渡すと、魔法に関する本をすぐに発見した。手が届くほど近くにあったので、迷わず伸ばし、好奇心に任せて読み始めた。しかし、ふと顔を上げると、隣に座っていた妹のルナが、手持ち無沙汰に暇そうにしているのが目に入った。 せっかく俺に会いに来てくれたのに、放ったらかしは良くないよな。レイニーの心に、わずかな罪悪感がよぎる。でも、魔法の書籍を見つけてしまったので仕方がないだろう……気になるでしょ、魔法だよ? レイニーは、自分に言い聞かせるように、魔法への強い興味を正当化した。「ちょっと待っててくれるかな
last updateLast Updated : 2025-10-21
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4話 妹に注意される兄という新たな立場
 ルナの魔法がダメならば……他の人の魔法でもいい。とにかく魔法が見たい! レイニーの魔法への渇望は、ますます高まっていた。「ルナの魔法じゃなくてもいいんだけど……魔法の練習場ってないのかな?」 レイニーは、何とかして魔法を見る方法を探した。「……あるじゃないですか。兵士の訓練場が……」 ルナは、少し呆れたように呟いた。 へぇ~。兵士の訓練場があるのか!? レイニーの目に、新たな希望の光が宿った。「あぁ……そうだった。そこに行こうよっ。ね♪」 レイニーは、とびきり可愛い笑顔を作り、ルナに懇願した。ルナは、頬を膨らませて、少しばかり不満げな表情をしながらも、立ち上がってくれた。「むぅ……そこも禁止されていますよ……危ないので立ち入り禁止ですっ……」 ルナは、小さく唸るように、重ねて注意を促した。「立ち入らなければ良いんでしょ? にしっし……♪」 レイニーは、悪戯っぽい笑顔を浮かべ、ルナの言葉をうまくすり抜けた。「見るだけですよ……お兄様ぁ〜」 ルナは、ため息をつきながら、レイニーに念押しをした。その声には、諦めと、兄への心配が混じっている。妹に注意される兄って……俺って、そんなキャラなのね。レイニーは、自分の新たな立場に、どこか複雑な感情を覚えた。 妹と並んで仲良く歩いていると、すれ違うメイドさんたちが道を避けて、優しい笑顔で挨拶をしてくれる。偉くなった気分だね♪ レイニーは、その状況に浮かれ気分になり、自分もサービス精神旺盛に微笑み返し、可愛く手を振ってあげた。「きゃぁ。レイニー様ぁ……♡」「わ、私に手を振ってくださったのよ!」「私によ。さっきも微笑み返して下さいましたし」 メイドさんたちの興奮した囁き声が、周囲に響き渡る。ムスッとしたルナが、そんなレイニーをジト目で見つめてくる。え? 俺は喜んでくれるから、ただサービスして笑顔を返して手を振ってるだけだよ? レイニーは、ルナの反応に首を傾げた。「お兄様ぁ。恥ずかしいのでやめて下さい……」 ルナは、小さな声で、恥ずかしそうにレイニーの袖を引っ張った。「え? 喜んでくれてるよ?」「そんな事をしていると、お母さまに叱られますよ」 ルナの言葉に、レイニーはビクリと体を震わせた。「はぁい」 レイニーは、素直に返事をした。 どうやら俺たちは上層階にいたらしく、長い階段を数階下
last updateLast Updated : 2025-10-22
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5話 怖くて厳しい魔術師団長へのルナの恐怖とレイニーの期待
 ルナがレイニーに、小声で話し掛けてきた。「怖くて厳しくて有名な魔術師団長ですよ……」その声は、恐怖に震えていた。「……ま、まじかぁ……お手本を見せてくれるだけなら嬉しいけど」 レイニーは、少しばかり緊張しながらも、期待を抱いた。「そんな訳ないじゃないですかぁ……お手本の後に練習ですよぉ……」 ルナの表情が、みるみるうちに暗くなっていった。その声には、絶望感が滲み出ている。あ、でも……ファイアショットが撃てるようになったんだよね? 嬉しそうに話してたし。レイニーは、ルナの言葉に、わずかな希望を見出した。♢王族専用魔法練習場 怖そうな魔術師団長の後を追って一階分上がると、二人は王族専用の屋内魔法練習場へとたどり着いた。重厚な扉が開くと、広々とした空間が目の前に広がった。「さて、魔法が見たいと言っておりましたな。いったい、どのような魔法が見たいのですかな?」 団長は、レイニーをじっと見つめ、どこか不思議そうな表情で問いかけてきた。その声には、レイニーが何を知っているのかを探るような響きがあった。 どんな魔法って聞かれてもなぁ……。どんな魔法でも良いんだけど。ルナが出来るようになったというファイアショットかな、他の魔法は知らないし。レイニーは、団長の鋭い視線から逃れるように、視線を泳がせた。「ファイアショットを見てみたい……かなぁ」 レイニーが、無邪気に目をキラキラと輝かせ、心から楽しみそうな顔をして言うと、団長は眉間に皺を寄せ、首を傾げて聞き返してきた。その表情には、不審と、かすかな怒りが混じっていた。「レイニー様は、確か中級魔法までお使いになられていましたよね? 私を試しておられるのですかな?」 自分が試されていると感じた団長は、みるみるうちに不機嫌そうな表情へと変わっていった。その場の空気が一瞬で張り詰めるのを感じ、レイニーは慌てて言い訳を始めた。「あ、その……中級魔法ですと危険ですし……基礎が大切だと本にも書いてありましたので。下級魔法のキレイなお手本を見て覚え直そうかと」 レイニーは、精一杯の笑顔を作り、必死に言葉を紡いだ。これで、ごまかせたかな……? レイニーの心臓は、ドキドキと高鳴っていた。「ほぉ。さすが魔法好きなレイニー様ですな……」 団長が何度も大きく頷き、心底感心したような表情へと変わり、機嫌が良さそうな顔になったの
last updateLast Updated : 2025-10-22
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6話 揺らめく頼りない炎と、光の粒になって消えた魔法へのルナの小さな喜び
 練習場の別の隣接した一角には、瞑想や精神統一のための静かなスペースが用意されている。柔らかなカーペットが敷き詰められたこのエリアでは、心を落ち着かせるための穏やかな音楽が静かに流れ、瞑想を通じて魔法の集中力を高めるのに最適な環境が整えられている。空気はひんやりとしており、心が洗われるような清らかさを感じた。 また、戦闘技術を鍛えるためのエリアも充実しており、ここでは剣術や弓術の訓練が日々行われている。木製のダミーや標的が整然と並び、訓練者たちは実際の戦闘を想定しながら、汗を流して技術を磨くことができる。木製のダミーには、剣や矢が何度も打ち込まれた跡が生々しく残っていた。 壁際には、魔法や戦闘技術に関する貴重な書物が収められた重厚な本棚がずらりと並んでいる。古代の魔法書や最新の研究書が所狭しと並べられており、中には貴重で危険な魔法などが記載されているために、通常の書庫には置かれていない秘匿性の高い書物も含まれる。これらの書物は、王族たちが魔法の理論や実践を深く学ぶための貴重な資源であり、その知識は彼らの力を一層高める上で不可欠なものだった。 王族専用の屋内魔法練習場は、単なる訓練施設ではなく、魔法の伝統と歴史が息づく、王族の力と知恵を育む神聖な場所なのだ。ここで訓練を受ける王族たちは、魔法の力を身につけるだけでなく、その力に伴う責任と重みをも学ぶことになる。 団長の顔つきが真剣なものへと変わり、ゆっくりと魔法を放つ場所まで移動すると、的の方へと片腕を伸ばした。その腕の先には、微かな魔力の輝きが宿っている。詠唱を始めると、団長の手のひらの先に小さな赤い魔法陣がぼうっと浮かび上がり、その中心に赤い小さなゴルフボール大の炎が現れた。炎は瞬く間に勢いを増し、シュッと音を立てて的へとまっすぐに放たれた。 バシュ!っと小気味良い音を立てて的へ正確に命中させた炎は、一瞬の閃光と共に消え去った。 レイニーは、その見事な魔法に「わぁ!」と歓声を上げ、ぴょんぴょんと小さく跳ねて喜びを表現した。その顔には、純粋な感動と、魔法への強い憧れが浮かび上がっている。それを見た団長は、レイニーの反応に満足したのか、嬉しそうな表情をしていたが、やがて徐々に真面目な顔つきへと戻っていった。「さぁ、レイニー様とルナ様の番ですぞ」 団長は、二人に優しく、しかし確固たる声で声を掛けた。「
last updateLast Updated : 2025-10-22
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7話 的の強力な結界を破る異常な威力
 どうやら的を撃ち抜く必要はないらしい。レイニーは、先ほどまでぴょんぴょんと跳ねて喜んでいたが、周りを見渡し、呆然と立ち尽くしている団長の姿に気づいた。やらかしてしまったことを悟り、レイニーは「えへっ♪」と可愛らしく笑って誤魔化した。 団長が驚いているってことは、本当にやらかしたらしい。団長が先ほど放って当てた的が、レイニーの目に入った。その的は、撃ち抜かれていない……。それに、団長は『的あて』と言ってたなぁ……。レイニーは、自分の放った魔法の威力を改めて認識した。 的自体には、通常では破壊できないほど強力な結界が施されていた。的を破壊されると、それを交換する手間やコストがかかるためだ。 しかし、今の問題は的を破壊したことではなく、その強力な結界を破り的を破壊できるレイニーの魔法の威力が異常であり、脅威に値するという点だった。戦闘になったとして、相手が結界やバリアを張ったとしても、レイニーの魔法はそれを容易く貫通してくるということになる。「レイニー様、ま、魔力を抑え威力も抑えて下さい、危険ですので……。それにしても見事な命中精度ですな、ど真ん中を撃ち抜いておりましたぞ」 団長は、顔を引き攣らせながらも、レイニーの腕前を称賛した。その声には、驚愕と、わずかな焦りが混じっている。団長は、レイニーのやる気を削ぐことなく、その秘めたる実力を存分に出して欲しかった。だが、魔力は抑えてもらわないと困る……誤ってルナ様へ当たってしまっては一大事になってしまう。団長の視線が、かすかにルナの方へ向けられた。 やっぱりやりすぎちゃったらしい……。レイニーは、団長の反応を見て、そう結論付けた。「でもでも、初めての魔法で的に当てたのって凄くない?」レイニーは、心の中で得意げに思った。 レイニーに問題はないと判断した団長は、ルナの方へ向き直り、指導を始めた。その様子は厳しいものではなく、優しい表情をして丁寧に教えているのが見えた。団長の声は穏やかで、ルナの動きに合わせて細かくアドバイスを送っている。それを確認したレイニーは、安心をした。 一人にされたレイニーは、持ち前の好奇心と探究心が強く、普通に的あてをするわけがなかった。「俺って詠唱していないよな? そもそも詠唱を知らないし……」レイニーは、先ほどの魔法の発動を振り返り、イメージしただけで魔法が発動したことに改めて気づい
last updateLast Updated : 2025-10-22
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8話 多重魔法の発動と、団長の驚愕と興奮
「ん……ちょっと違うかな〜」 レイニーは、首を傾げながら答えた。その言葉の裏には、「今のは、連射とは違うよね? 同時に発動させて、遅らせてるだけだし。結果は同じで連続で当たるんだけど、過程が違うよねっ?」というレイニー自身の思考があった。 団長は、確かに連続して的に当たる音が聞こえていた。何が起きたのかを知りたくなり、レイニーの側へ移動してきた。その足取りは、先ほどよりも速い。「もう一度お願いします、レイニー様」 団長は、レイニーに懇願するように言った。「あ、はぁ〜い♪」 レイニーが軽いノリで返事をすると、再び同じことをして見せた。団長は、レイニーの魔法を凝視し、その仕組みを理解しようと努めた。「……れ、レイニー様……それは、多重魔法ですが……どの様に習得されたのですか!?」 団長は、驚きと興奮で声を震わせた。レイニーが使用していたのは多重魔法で、魔法陣が実は何重にも重なっており、三つ同時に発動させていたのだ。連射より遥かに高度で、王国内でも使える人物は一人しかおらず、それは団長の師匠にあたる人物だった。その師匠でさえ、二つの魔法を同時に放つのがやっとのことで、しかも遅延という発想すらなかった。多重魔法を発動させるだけでも精一杯で、その発想があったとしても、それを操れるはずがないのだ。多重魔法は、極めて高度な技術と、強靭な精神力、そして集中力が必要とされる。それに加えて、膨大な魔力と、二つの魔法を同時に操作する並外れた処理能力も必要とされる、まさに最上級の技術なのだ。「え? あぁ……これは、まだ練習中だよ? そんなに驚くことかな??」 レイニーは、拍子抜けしたように首を傾げた。簡単にできたので、レイニーは初級の技術程度に思っていたのだ。「多重魔法ですよ!? それは驚きますよ……最上級の技術ですからね」 団長は、興奮を隠しきれない様子で、レイニーの言葉を否定した。(はい? 最上級の技術!? こんなに簡単にできたのに??) レイニーは、団長の言葉に愕然とした。「え? あ……そうなんだ? えっと……秘密でおねがいっ! 目立ちたくないからさぁ」 今更取り消したり、ごまかしようもないので、レイニーは正直に、しかし焦った様子でお願いをした。「えぇ、そうされた方がよろしいと。他の者に、知られれば確かに騒ぎになりますね。秘密にしておくべきかと思い
last updateLast Updated : 2025-10-22
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9話 ムスッとしたフィオナへの開き直り
 メイドさんがレイニーの分の紅茶を用意してくれ、レイニーは自ら気まずいお茶会に足を踏み入れてしまった。「えっと……なんのお話をしてたの?」 レイニーは、沈黙を破るために話を振ってみた。「これといって、お話は……」 ルナが苦笑いをして答えてくれた。その声には、気まずさが滲んでいる。「そうなんだ。ルナ、この後さ、お昼一緒にたべよ?」 (可愛い妹のルナと一緒にお昼を食べれたら最高だなぁ♪) レイニーの顔には、期待の笑顔が浮かぶ。「はい。よろこんで、ご一緒いたします♪ お兄様」 ルナは、嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。 レイニーとルナは、魔法の話で盛り上がった。(フィオナの第一印象は最悪だったと思う。お客様のフィオナの相手をせずに、ルナとばかり話をしていたのだから。でも、仕方ないでしょ……ムスッとしているのが悪い!) レイニーは、心の中で開き直った。「フィオナは、魔法の属性は?」 ルナと二人で話しているのも悪いと思い、レイニーはフィオナに話を振ってみた。「……べつに。魔法の練習はしていますけれど……詳しくは知りませんわ」 フィオナは、興味なさそうな感じで、レイニーからそっぽを向いて答えた。(魔法にも、俺にも興味がなさそうだ。まあ、俺も興味はないけどね。今は、ルナちゃんが妹であり友人でもあるし。)レイニーの顔には、諦めの色が浮かんだ。「ルナは、午後から何するの?」 レイニーは、ルナに尋ねた。俺は魔法の練習をしたいだけで予定はない。ルナが暇だったら誘って、一緒に魔法の練習をしたいなぁ。「えっと……ですね、今日はフィオナさんと一緒にいますよ。お兄様は……?」 ルナもレイニーの予定を聞いてきた。ルナと一緒にいたいけど、ムスッとした王女様とは一緒にいたくない。それなら気軽に魔法の練習をしたいかなぁ。レイニーは、少しばかり残念に思った。「俺は……午後からは、魔法の練習をしようかなって思ってるよ」 フィオナは、相変わらずそっぽを向いて話に参加する気がないらしい。一応、お客様だし、誘わないとかなぁ。レイニーは、形式的にフィオナに声をかけることにした。「ん……あのぉーお昼、良かったら一緒に食べる?」 レイニーは、恐る恐るフィオナに聞いてみた。「わたしは、両親と食べるので……お構いなく」 目も合わせずに即答された。(関わりたくないんだろうなぁ。
last updateLast Updated : 2025-10-22
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10話 ルナとの昼食と、笑顔の美少女に癒されるひととき
「うん。冒険をしてみたいな〜って……」 (異世界と言えば、魔法と冒険でしょっ! 冒険は……まだ、してないけど。これからだよ。うん、これから!) レイニーの顔には、未来への期待が浮かぶ。「あぁ……そういうことですの。あまり危険なことをなさらないでくださいね」 フィオナは、呆れたような表情で、しかし初めて微笑んでくれた。その表情は初対面の時とは別人かと思うほどで、可愛らしく人を惹き付ける魅力を感じた。だが、その微笑みは一瞬で、元のムスッとした顔に戻ってしまった。「まずは、魔法を覚えないとかな……。魔法を覚えるのが楽しくてさ」 レイニーが、魔法の話で盛り上がってきたところに、メイドさんとルナが部屋に入ってきた。そして、入れ替わりにフィオナが呼ばれて出ていった。その足取りは、どこか名残惜しそうにも見えた。「お兄様、そろそろお昼ですね〜♪」 ルナが、レイニーの腕にしがみついてきた。その笑顔は、太陽のように明るかった。♢異世界での新たな発見 昼食を大好きなルナと一緒に食べた。やっぱり笑顔の美少女と一緒に楽しく会話しながら食事をすると、楽しくて癒されるね。レイニーは、ルナとの穏やかなひとときに心を満たされた。午後からは、勝手に城を彷徨いながら、城のマップを頭に描き覚えた。その行動は、もはや好奇心旺盛な子供そのものだった。 その後、書庫に向かい日課の読書をした。「他種族」という本があったので読んでみた。すると、人間種の他にも多くの種族が存在し、この王国でも昔は共存していたと記録にあった。また、王国の軍でも多くの獣人が活躍していたらしい。さらには、王国を救った英雄も存在したと書かれていた。 他の歴史書にも悪魔や天使の存在が多く記録に残っていた。まあ、悪魔は当然だが、悪さをして混乱を引き起こし、天使は疫病の治療や災害時に現れていたらしい。そして、王都近くの山にダンジョンがあり悪魔が出るとのことで、ダンジョンを封印し結界を張ったと記述されていた。 ドラゴンの存在なども書かれていて面白く、まるでゲームやアニメの話の中のようでワクワクしてくる。レイニーの心は、新たな知識によって高揚していた。 読書をやめ、気分転換に外に出ると、初めて軍の練習場に出てしまった。 そこで偉そうな者が椅子に座り、指示や文句を言っていた。その言葉には魅力を感じられず、ただ自分のストレスを
last updateLast Updated : 2025-10-22
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