「……ねえ、栞」 不意に、彼が顔を上げた。 鼻先が触れ合う距離で視線が絡む。さっきまでの寝ぼけ眼はどこへやら、その瞳には、とろりとした熱っぽい光が宿り始めていた。「ん、なに……?」「おはようのキスは?」「……は?」「同棲初日の朝だよ? 愛する恋人が隣で目覚めたんだ。……挨拶代わりのキスくらい、当然の権利だろ?」 彼は悪びれる様子もなく、ねだるように唇を突き出した。 その表情は、計算され尽くしたあざとさと、隠しきれない独占欲が絶妙なバランスで混ざり合っている。「ちょ、ちょっと待って! まだ顔も洗ってないし、歯も磨いてないし!」「関係ないよ。俺は今すぐ、栞に触れたいんだ」「でも……っ!」「……嫌?」 上目遣い。 天下の天王寺輝による、必殺の角度だ。 反則だ。そんな濡れた瞳で見つめられて、首を横に振れる人間なんてこの世に存在しない。「……い、嫌じゃ、ないけど……」 私が観念して目を閉じると、すぐに柔らかい感触が唇に落ちてきた。 チュッ、という軽い音。 それだけで終わるかと思いきや、彼は名残惜しそうに私の下唇を甘噛みし、舌先でそっと輪郭をなぞった。「ひゃうっ!?」「……ふふ、甘い」 彼は満足そうに目を細め、シーツ越しに私の腰を撫でる。 Tシャツの裾から入り込んだ大きな手が、素肌の背筋をゆっくりと這い上がってくる。指先の熱が、脊髄を痺れさせていく。 朝から刺激が強すぎる。 このまま流されてしまえば、甘い朝のイチャイチャタイムに突入して、大学に遅刻してしまう未来が確定だ。「だ、ダメ! ストップ! 輝くん、起きて! 朝ごはん作るから!」 私は茹で上がった顔で彼を押しのけ、ベッドから転がり落ちるようにして脱出し
آخر تحديث : 2026-01-11 اقرأ المزيد