全ての始まりは一つの採用通知からだった。建設会社で働いていた西宝麻美は息を吐くように椅子に座ると、見覚えのない封筒を蛍光灯に掲げていた。 「採用通知? 何これ」 封筒にはそれ以外の情報は書かれていない。住所があるはずなのに、見当たらなかった。どうしてこれがポストに入っていたのかを知る為に、何処の採用通知かを確認するしかないと自分に言い聞かせ、丁寧に開けていく。 【ジェクトコーポレーションーー西宝麻美様、この度は当社の面接にご参加頂きありがとうございます。西宝様のお仕事内容についてお話を進めていきますので当社にご来訪よろしくお願いします。日時は20日の午後二時となっています。三間坂建設にはこちらからご連絡をしておりますので、ご了承下さい】 手紙に打ち込まれている文字を読み終えた麻美には面接をした記憶が一切ない。彼女は建設会社で下積みをする為に働いている。それなのに、急にジェクトコーポレーションからの手紙が届いた。何がどうなっているのか分からない麻美は会社の直属の上司葉山に連絡をする事にした。 「会社に連絡してるってどういう事なのよ。なんでジェクトが……」 ブツブツと自分の心に留めておいた言葉を吐き出すと、タイミングよく葉山から着信が入る。マナーモードにしていた麻美は持っていたスマホを操作し、通話ボタンを押した。 「お疲れ様です」 「お疲れ、西宝。お前、明日会社に来なくていいからな。いや明日から来なくていい」 「どういう事ですか?」 当然のクビ宣言をする葉山は麻美の様子に気を止める事もなく、淡々と話を進めていく。 「お前は明日からジェクトコーポレーションの社員になる。郷東様からそう聞いている」 「へ? 郷東って……誰ですか?」 「おいおい。お前の上司だぞ。ジェクトコーポレーションを纏めている、郷東終夜社長だ」 葉山から知らされた内容は未知の領域のものだった。勝手に自分の事を決められた事に腹を立てている麻美は、葉山に自分の気持ちを伝えようとする。しかし葉山は、これ以上関わりたくないのだろう。要件を終わらせるとすぐさま通話を切った。 「郷東終夜……」 聞かされた名前を呟くと、どこかで耳にした事がある事実を思い出していく。それは麻美の父、西宝晴明が言っていた言葉に隠されていた。晴明は建設会社の社長をしている
Huling Na-update : 2025-10-24 Magbasa pa