「妊……妊娠した……」その医師の言葉はまるで雷に打つかのように私の心を打った。涙が止まらず、妊娠を証明する紙を胸に抱きながらも私の手は微かに震え、顔には抑えきれない喜びが溢れていた。「うふふ、そんなに喜んで。なんだかこっちまで幸せな気分よ?おめでとう!西条さん!」私が『西条』になってもう3年。子供はできないのか?とか言われ、時には私の体に問題があるんじゃないかとか中傷を受けたりもしたけれども、ついに、妊娠を!ついに私も母になるんだ!この喜び(地に足がついているのかわからないような、頭の奥でファンファーレが聞こえるような)を一刻も早く彼…じゃなくて夫に伝えたくて仕方がなかった。彼だって一緒に中傷されたりしてきたんだから。―――西条孝之、私の夫。彼がこの知らせを聞いた時の表情を思い浮かべ、胸の鼓動は速まり、飛び出そうだった。 (喜んでくれるよね?だって二人の子供だもの!)でも、喜びに満ち満ちながらも診察室を飛び出した瞬間、息が止まるかと思った。え?別人?…だよね?そうに決まってる。夫(仮)が金髪の女性をかけて救急室に駆け込んでいた。その声は夫そのもので別人疑惑がなくなった。あの女性は……まさか、彼の義妹・西条澪?義妹なの?なんで彼が救急で?今、仕事中だったんじゃないの?ナンデ?心臓がぎゅっと締め付けられ、全身が硬直する。次の瞬間、医師から鋭い声が院内に響き渡った。「お子さんは守れません……」義妹と誰の子供なの?と心臓が激しく揺さぶられ、全身が硬直する。前代未聞の衝撃と疑念に包まれた。彼と義妹の関係はどうなってるの?兄妹よね?だって……そういうふうに紹介された……。こんなにストレスだらけだと妊娠した母体に悪いのは頭では理解してるけど、現実がのん気になどしていられない。私はどうすればいいのだろう?病院の無機質な空気が私の心を癒すことはなかった。
Last Updated : 2025-10-25 Read more