All Chapters of パライバトルマリンの精霊王は青い薔薇のきみの夢をみる: Chapter 11 - Chapter 20

30 Chapters

第11話、不穏な気配と決裂

*** 緩やかに体を揺さぶられている気がして薄っすらと瞼を開けた。何故か下っ腹の奥が熱くて重っ苦しい。皮膚の上から手を当てられているのが分かって数度瞬きをする。 「起きたのレオン?」 「ラン……ベルト? ひっ、ァあ! お前……ッ何して……」 起きた瞬間快感に襲われ、思わず下っ腹に視線を向けた。寝ている間に体を開かれたらしい。結合部分から淫靡な音が聞こえていた。 「レオンが起きるの待てなかったんだよ。だってレオンさ、今日で最後とか意味分かんないよ。俺の意見も気持ちも何もかも無視して終わるの? 酷いよね?」 同意を求められても困る。それよりも体が全く動かないのに気が付いて、レオンは焦燥感に捉われていた。これではレイプと変わらない。 「ランベルト、なんで……っ」 「何で? それはレオンに薬を盛った事? 今俺がしてる事? それともこれからやろうとしている事?」 ——薬? 眠気と眩暈はそのせいか……。 会話をしながらも緩やかに奥を突かれ続けている。ランベルトに抱かれ慣れている体には刺激が強くて、射精感が込み上げてきた。 「や、ぁ、ラン……ベルトッ、もうイク‼︎」 「一緒にイこうか? ——ねえ、中に出していい?」 普段はそんな事聞きもしないで出す癖に確認を取られ、返答に詰まる。 ——何を考えている? けれどもう絶頂に上り詰める手前だったのもあってコクコクと頷いてしまった。 「あ、あ……ん、出して、いい。んん、もう出して、アア、いいから、あ、あんっ、イク……っ、一緒にイ……っ、ァ、ああ、あああ!」 パチュパチュと音を響かせて、肌を打たれる速度が増す。吐精するのと同時に思いっきり腰に力を入れると、ランベルトが中でイった。 「そうだ、レオン」 「な、に」 情事後の気怠さでまだ息が整わないでいると、話をふられた。 「さっきレオンの中に子宮作っちゃったんだけど痛くなかった? 初めてやったから心配でさ。違和感ない? 大丈夫?」 「お前……何、言って……?」 声音はいつもの穏やかなランベルトだった。でも顔つきはそうじゃない。ランベルトが今まで見た事もないシニカル笑みを浮かべながら、下っ腹を撫で上げてくる。内部に挿れられたままのランベルトの陰茎は硬度を持ったままだ。 「ラン、ベルト……抜いて……」 「せっかく子宮作っ
last updateLast Updated : 2025-11-21
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第12話、真実を知るには遅すぎて

 *** ランベルトと決別した後、一週間もしない内にレオンの体調は激変した。 腹痛に、全身倦怠感、眠気、眩暈でよく倒れるようになった。吐き気はないが貧血が酷い。すっかり医務室の住人と化している。これが妊娠初期症状だとしても、症状が出るのは早すぎる気がした。体調の変化が現れてから一か月以上が経過している。「貧血が本当に酷いな。どこかで大怪我でもしたのか?」「してません」 しかも毎回医務室に運んでくれるのがランベルトだと後から聞かされ、内心複雑だった。「ちょっと、別の検査をさせてくれ」「……分かりました。あの……こういう事を言うのは気が引けるんですが……妊娠検査もして貰えませんか?」 顔を見れなかった。言動から何かを察したのか、医療魔法師は一言「分かった」とだけ告げて検査の準備を始めた。 ただただひたすらに眠い。検査中も眠気に勝てなくてずっと寝ていた。夜にどれだけ寝ようと足りなくて、一日中寝ていたいくらいには眠気が酷いからだ。しかし、疲れは全く取れない。歩いていても眠くて足を止めてしまうほどで、これには正直参っている。「ミリアーツ、お前は妊娠している」 不調の原因が確定して、やはりかという暗雲たる気持ちが込み上げてくる。「その様子じゃ分かっていたのか。お前が望んだ妊娠か?」 無言でいると音もなく涙だけが伝い落ちた。「父親が誰か聞いてもいいか?」「迂闊に……話せません」 ランベルトの名前は出せない。各方面に迷惑をかけるのは目に見えていた。「では、もう産むしかない時期に入っているのには気が付いているのか?」 ギョッとして顔を上げる。「え、何で? まさかそんな筈は……っ」 言いかけて慌てて口を閉ざした。「お前のような人族だと十月十日なのだろうな。しかし、相手側が別の種族だと種族ごとによって周期が変わるんだ。特に精霊族は生まれるまでに二ヶ月もかからん。獣人族は三ヶ月だ。その様子だとこの二種族の内どれかだろう? 知っているとは思うが、男体妊娠だと産道がないから帝王切開するしかない。このままだとお前の命に関わる。秘密は守
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第13話、新しい暮らし

 ***  海岸近くにある2LDKの小さな一軒家は、八割が白いコンクリート壁で覆われ、下の部分の二割が薄い青緑色と水色のレンガで作られていた。 街や密集した集落からは離れているので、広めの庭が十分に確保出来る。家の裏手からは、ランベルトと同じパライバトルマリン色の海が一望出来た。懐かしい気分にさせられる海を眺め、レオンが空で指を動かすと洗濯物が勝手に干されていく。 肩につくほどの紫色の髪の毛が潮風で靡いた。全ての作業を終わらせて、レオンは家の中を覗く。玄関先からすぐ見えるリビングには小さなテーブルの上で絵を描いて遊んでいる我が子……エスポワールの姿があった。 通帳に書かれてあった名を見たサーシャが「良い名前じゃないか」と口走ったのがきっかけで、ランベルトが考えたエスポワールという名をそのままつけた。「エス、一緒に買い物行くか?」「いくー!」 描いていた絵をそのままにして、靴を履こうとしたエスポワールの頭に手を乗せる。まだ身長が一メートルに満たない大きさだが、人間とは成長速度が違うのでこれから大きくなるかもしれない。「こら、ちゃんと片付けてからだ」「はーい」 小さな手で少しずつ片付け始めた後ろ姿を微笑ましく見つめる。ランベルトと離れ、すぐに出産からの魔法大学院卒業、遠くの土地に引越しと怒涛のような日々をおくってもう三年が経つ。エスポワールのホワイトグレーベージュとパライバトルマリンに分かれた髪の毛を見ていると、どうしようもなくランベルトを思い出す。 ——ああ、そうだ。 レオンは自分と同じ様にエスポワールにも個体識別誤認識魔法をかける。この三年間毎日使用している魔法なので、この魔法だけは特級魔法師クラス並みの出来栄えだった。その他に関しては学生の頃と大差ない。 エスポワールの毛髪と瞳の色が、今のレオンと同じ紫色になり長さが増していく。これで精霊族の血を引いている事はバレない。成長する度に顔つきから話し方までランベルトそっくりになっていくエスポワールを見つめ、複雑な想いを抱いた。 心の中はまだランベルトと仲違いした日のまま進んでいない。いい加減ケリをつけようとは思うものの、恋人は
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第14話、どうして……

無くなりかけてた調味料や食材を買って帰路を辿る。何袋かに分けた荷物はそのまま運ぶには重い。人目がないのを確認してから箒を元の大きさに戻し、柄の部分に荷物を下げてその上にエスポワールも跨らせてやった。 「キャー!」 箒で飛ぶのが好きなエスポワールが、キャラキャラと笑いながら喜んでいる。 「ちゃんと掴んでるんだぞ?」 「はい!」 暫くの間歩いていると、急に後ろから影が出来たのが分かって慌てて振り返った。気配も全くしなかったので、驚きを隠せない。見た事もない大男が立っていてジッとこちらを見下ろしている。 サーシャが言っていた輩かも知れない。レオンは慌てて箒に指示を飛ばした。 「エスを乗せたままこのまま家まで飛べ!」 近くで操作していなくても家につくまでの間くらいは魔力量も持つだろう。箒が加速したのを確認してから、レオンは男を見つめた。 「〝僕〟に何か用ですか?」 「レオ……ン?」 呆然としたような表情で名を呼ばれ、レオンは目の前にいる黒髪で浅黒い肌の色をした男の頭から足まで眺める。 こんな知り合いはいない。逡巡した後で、自分は今、個体識別誤認識魔法をかけていたのを思い出す。 ——どうして、魔法をかけているのに識別出来た? 誰だ? 警戒心を露わにすると、男は眉尻を下げて柔らかく笑んだ。 良く知っている笑い方に目を瞠る。 ——まさか……。いや……でも。 男の周りで光が弾けて、さっきまでの男の顔が変わっていく。 「ラ、ンベルト……?」 驚きすぎてそれ以上言葉が出てこなかった。ただでさえも高かった身長や鍛えられたような筋肉のついた肉体がもっと育っている。 ローブの下から見えた鎧は、魔法師というより騎士のようだった。覇気が備わり堂々とした佇まいがそう感じさせるのかもしれない。顔立ちも幼さが抜けたようにスッキリしていて、髪も伸びてか
last updateLast Updated : 2025-11-27
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第15話、青の一族

 ——落ち着かない。 ランベルトが己の家にいて、家族とテーブルを囲んでいるという図式はレオン的にシュール過ぎた。「おいで、エスポワール」「パパー」 エスポワールだけは夢で繋がっていただけあって、ニコニコしながら嬉しそうにずっとランベルトにくっ付いている。 エスポワールの頭をランベルトが撫でて膝の上に乗せていた。ランベルト用に紅茶を淹れて、サーシャと自分の分のお茶、エスポワール用に幼児用の野菜ジュースのパックを置く。「レオン、これ……」「大学院にいた頃、お前がこの青いパッケージの紅茶が好きって言って出してくれただろ? 俺も美味しいと思ったんだ。庶民にも手の届く価格だったから良く買う……ちょっ、何で泣いた⁉︎」 取り出してきたハンドタオルでランベルトの目を押さえると、エスポワールが「いたいいたいのとんでけ」とまじないをかけはじめた。「ひるまはレオンがないてたのにね~」「待てエス! いらん事は言わんでいい!」「レオン泣いたの? 何で?」 ランベルトが問い掛ける。「あのね、パパがいまでもあいしてるっていったから~」「エスーーっ‼︎」 まさかの息子からの大暴露に顔から火が出そうだった。「ふふふ、あははは。あー、おかしっ」 突然サーシャが笑い出し、レオンはギョッと目を剥いた。サーシャがこんな風に笑うのを初めて見たからだ。「あー、もうダメ。お腹が痛いわ。一時は、勝手に人の息子を孕ませるわ、勝手に孫の名前も決めるわ、あんな大金押し付けるわ……どんな暴君な王様なのって思っていたのだけれど、血は争えないのかしらね、あの人にも見せてあげたかった」 茶をすすり、サーシャが一息ついた後で言った。「潮時だね。暴君だったら王様だろうが何だろうと叩き出してやってたけど、違うみたいだし。レオン、お前の父さんは精霊族のドラゴン属の末裔だよ。ずっと人族としてお前を育てて人族の国で暮らさせたけど本当は生粋の精霊族だ」「ええ、そうなの⁉︎」「それは本当か⁉︎」 レオンとランベルトの声が重なる。「いや……だがドラゴン属の血を引く者は俺たち王族だけ……」
last updateLast Updated : 2025-11-28
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第16話、真実と謎の男たち

「ずっと俺の片想いでした。元々俺には王としての素質はありません。退屈な日々を誤魔化す為にヘラヘラ笑って適当に生きていた俺に真っ向から意見をくれたどころか、軽蔑すると言って平手打ちまで食らわせたのがレオンでした。例え正解が黒だとしても、俺が白と言えば白にしかならない世界で、初めての経験でした。それからはレオンの気を引きたくて色々やりましたよ」 途中で何かを思い出したようにランベルトがフッと笑みをこぼす。何処か照れくさそうに鼻に触れ、また口を開いた。「散々口説き倒して隣にいる権利をやっと手に入れた。レオンと一緒にいるのは今まで生きてきて一番楽しかった。でもやり方を間違えてる事に気がついたのが遅くて……。初めて他人を好きになったから、どう修正して良いのかも分からなかった。卒業と共にレオンが俺と縁を切ろうとしているのが分かって、衝動を抑えきれずにまた間違いを犯しました。今となれば、子ども過ぎて自分でも失笑しか出ません。順番を間違えてしまい、本当に申し訳ありませんでした。でも俺は出会った時からずっとレオンだけを愛してます。離れても想いは変わらなかった。もう離したくない。共に生きていきたい。俺にはレオンじゃなきゃ駄目なんです。なのであなた方を迎えに来ました。一緒に精霊族の国で暮らして貰えませんか?」 ——なんだこの暴露話は……。 恥ずかしくて頭が沸いてしまいそうだった。どうせなら学生の頃に聞きたかった。そしたら仲違いなんてしなかったのに。 回ってくれそうにない思考回路でグルグルと考えていると、サーシャがフハっと笑い声を立てる。「レオンーおかおまっか~おねつある?」 近くに寄ってきたエスポワールに正面から見つめられて、居た堪れなくなり小さな体を抱きしめる。「ないよ、ありがとな。でもエスお願い……バラさないでくれ」 コソコソと隠れるようにエスポワールと話していると、サーシャが砕けた口調で言った。「そこまで言ってもらえてレオンは幸せ者だね。私は構わないよ。一時期とは言え、住んでいたからね。レオンはまた自力で口説いておくれ。将を射んと欲すれば先ず馬を射よってね。エスを落とせば陥落すると思うよ」 喉を鳴らして笑いながらサーシャが言った。「そうし
last updateLast Updated : 2025-11-29
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第17話、精霊族の国

 襲撃犯たちを空に浮かせ、かなりの距離を大人数で移動している為か、ランベルトの額に汗が滲んでいる。さっきから一人で数種類の魔法を同時に発動させているのだ。無理もなかった。一種類だけでも肩代わりしたいがレオンには荷が重い。到底無理な話だった。「ランベルト、大丈夫か?」「そんな不安そうな顔しないでレオン。平気だよ。何とかする」 上体を屈めて、頭に口付けられる。「奴らを浮かせるのは私が代わるよ。あとゲート内の足場補強も任せてくれ」「頼もしい限りだ」 サーシャが呪文を唱えると、ワープゲート内に流れている他の空間へ繋がっている道への圧が見る間に安定していった。それにより、足元の道も太さを増し他の空間へ間違えて飛ばされる危険性も少なくなった。 緻密な魔法力操作を感心したように見つめ、レオンはエスポワールをしっかりと抱え直す。周りが発光したかと思えば視界が開け、次の瞬間には目の前に草原が広がっていた。「ここはいつ来ても変わらないね」 サーシャが懐かしそうに笑みを浮かべる。遠くにある筈なのに此処から見ても背の高い木々が生い茂っていて、遥か上空にあるのに、底の見えない大きな滝が特有の音を立てていた。身の回りにある草木も、太古に生えていた形状の植物ばかりで、不謹慎にも心が躍ってしまった。「凄い……教科書の中の世界に入ったみたいだ」「レオン、気に入った?」「うん。幻想的で凄く綺麗だ」「気に入って貰えて良かった。可愛いレオン。大好き」 また昔みたいな甘えたな口調に戻ったランベルトに抱え上げられて口付けられる。「おい! 親と子どもの前ではやめろ!」「やだ。ずっとこうしてたい」 こうなったらランベルトは人の話を聞かなくなる。しかし、引くわけにはいかなかった。「頼む……ランベルト。とりあえず降ろしてくれ」「やだ。だってレオンってば、どれだけ俺が好きって言っても信じてくれないし、薔薇も無視するし、すぐ自分で勝手に決めてどっか行っちゃうからやだ。離さないし、もう此処からも一生帰さない」 ——この、駄犬がっ! 大きな尻尾を振り撒くっているような幻覚が見える。さっきまでの王らしい毅
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第18話、王宮

 *** 出掛けていたランベルトがレオン達を王宮に連れ帰ってから、男たちは城内の警備隊に引き渡され、牢獄行きとなった。「皆様此方へどうぞ」 禊ぎやら風呂やら着替えやら食事やらと世話を焼かれる。全て済まし終えると、三時間は経過していた。もう八時を超えている。エスポワールがウトウトとし始めた。「エス寝るか?」 声を掛けると、嫌と首を振られる。「王、今日は一体どちらへ? あの……この者たちは?」「ああ。紹介しよう。私の妃のレオンとその母サーシャ、そして息子のエスポワールを迎えに行ってきた。命を狙われる危険があった故、今まで存在自体を黙っていたんだ。随分と心配をかけたな」 部屋の中にいた国の重要人物達がざわついていた。「いえ! とんでもございません! 王、しかし……気配を視る限り、その者たちは人族なのでは?」「いや、違う。魔法でそう見せているだけだ。レオンは精霊族、古の青いドラゴン属の末裔だ。その母君も精霊族……それも太古からいる希少種、不死鳥だ」 また部屋の中が騒めき出す。「そんな馬鹿な……」「実在しているのか?」「私は見た事がないぞ」「だが、子どもの方も王とは全く似ていないではないか」 四方八方から声が聞こえてきた。「見ていろ」 ランベルトが皆の目の前でエスポワールにかけていた個体識別誤認識魔法を解く。その姿や毛色は説明せずとも一目瞭然だった。立ったままだった者までエスポワールの前で片膝をつく。「私の子だとバレないように、魔法で人族へと変化して貰っていた」「皇子!」「エスポワール皇子」「王の幼き頃にそっくりだ」「その毛色は間違いなくうちのドラゴン属の血を引いている!」 意見が一気に翻っていく。エスポワールはレオンから見てもランベルトそっくりだ。疑いようもなかった。「私も姿をお見せいたしましょう」 優雅に一礼し、サーシャが部屋から出て王宮の中庭へと出る。皆が見ている中で、サーシャがさっきと同じように不死鳥の姿になってみせると、驚きの声と共に歓喜の声が上がった。「
last updateLast Updated : 2025-12-01
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第19話、久しぶりの戯れ

「レオン~俺は〝そういう意味〟の方が良い」 帯を解かれると、着ていた服があっさりと全開になって焦る。「え? え?」「この服ね、伽用の服だから態と脱がせやすくされてるんだよ。でね、周りから第二子を切望されてるんだけど、レオン、また俺の子を産んで欲しいんだけどダメ?」「え?」 ——伽用……て事は。 冷や汗が出た。 優しく微笑みかけてくるランベルトと目が合って、あまりの顔の良さに気を失いそうだった。思わず頷きそうになって、何とか耐える。「いや、また一から子育てはちょっと……」「大丈夫だよ。ここには乳母や家庭教師まで専門の人たちがたくさんいるからね。逆に今仕事が無くて困っているんだ。エスは遊ぶ人が増えて楽しそうにしてるじゃん。城の皆んなも喜んでる。だからその人たちの仕事を奪わないであげてね」「いや、俺やりたい事があってだな……」 その間に下っ腹に手を乗せられて円を描かれる。「うん。やりたい事って何? 今、子宮作ったよ」「はあっ⁉︎」 早いにも程がある。流石に暴れた。「待って! ランベルト……っ、んんっ!」 言葉はランベルトの口内に飲み込まれる。舌を絡ませられる度に、背筋がゾクゾクしてきて、腰の奥が甘く疼く。久しぶりの快感は思っていた以上に気を昂らせた。口付けながら下肢を撫で上げられ、レオンの体は大きく戦慄く。「凄い、もうこんなに硬くしてるの? もしかして抜いてない?」「エス……いるし、そんなの……ッあまり出来ない」 恥ずかしくて堪らなかった。「恋人はいなかったの? まあ、居たら今すぐソイツは抹殺しに行くけど……」 一気に室温が下がったような錯覚に陥る。「居るわけ、ない! 大体、俺は……ッ全部の事……っ、お前しか……知らない」「そうなの?」 心底驚いたという顔をしたランベルトが上から見下ろしていた。「悪い、かよ」「悪くない! 死ぬ程嬉しい! これからも俺だけにして。レオンは一人ではしないの?」「…………ないんだよ」 ぼそっと呟く。「え、何?」「だからっ、お
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第20話、双子

 *** それから三日目の事だった。 連日の性行為で疲れ果てているレオンは、玉座に腰掛けているランベルトに横向きに抱えられていた。部屋で寝ていると何度言っても「離れるのは嫌だ」と聞かないので、ランベルトの好きなようにさせている。 治癒魔法をかけてくれたので体の痛みは良くはなっているものの、また数時間もすれば元の木阿弥だ。そろそろいい加減にして欲しい。「レオン」 少し持ち上げられて口付けを落とされる。城内の人たちからの視線が痛い。「まさか王がここまでぞっこんだったなんて!」「そりゃ、別の妃どころか側室さえも作らないわけね。納得できたわ」「あの溺愛っぷりはこっちまで照れちゃう~!」 女官たちの楽しそうな声が聞こえてきて、逃げたくなってきた。「レオン~またパパにだっこされてるの?」「エスは俺の上に乗るか?」 手を差し伸べると首を振られた。「エスがのるとつぶれちゃう~」 ——つぶれる? ランベルトが? 想像だに出来ない。「ランベルトも俺もエスが乗ったくらいじゃ潰れないから大丈夫だよ。おいで?」「だめ」 レオンの下っ腹に耳をくっつけはじめたエスポワールに視線を向ける。「エス?」「うん。そうだね~はやくあいたいね~」「どうした?」 不思議に思って声をかけると、エスポワールが微笑む。「んーとね、あかちゃんとおはなししてるの。あおとしろのふたついるの」「青と白……ふたつ? て、もしかして双子の赤ちゃんて事︎⁉︎」 目を瞠った。やはりエスポワールには何かを視通す不思議な力がある。「ふたごてな~に?」 言葉の意味までは分からなかったらしい。首を傾げていた。「誰か、医療魔法師と産婆を呼べ」「かしこまりました」 ランベルトが王宮お抱えの医療魔法師と産婆を呼び寄せ、レオンは直ぐに診察を受けさせられた。「王、これはとても有り難いことに、男女の双子を授かっておられますよ」 自分の事のように嬉しそうに医療魔法師が告げると、ランベルトが破顔
last updateLast Updated : 2025-12-03
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