パライバトルマリンの精霊王は青い薔薇のきみの夢をみる

パライバトルマリンの精霊王は青い薔薇のきみの夢をみる

last updateDernière mise à jour : 2025-12-13
Par:  架月ひなたComplété
Langue: Japanese
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魔法大学院に通うレオンは、精霊族の第二皇子であるランベルトと〝恋人ごっこ契約〟を結んでいる。 軽薄な男だと思っていたが、恋人になったランベルトは思いの外優しかった。 両片思いからのすれ違いや、大きな勘違いからのすれ違いで、レオンはランベルトに無理やり孕まされてしまう。 だが、精霊族の国王が暗殺される事件が起こりランベルトは国へ帰ってしまい……? ※魔法大学院〜3年か4年後辺りまで。ドラゴン属。魔法師。体格差。身分差。異世界ファンタジー。男体妊娠。執着&溺愛。 物語の性質上ラブシーン多めだけどエロはテーマじゃありません。 ※わりと甘めでイチャイチャしている。一部に無理やりの場面もある。

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Chapitre 1

第1話、身分差の恋と色事

海外に出て七年、十二歳の娘は今や世界に名を轟かす天才ピアニストになっていた。

どんなに難しい曲でも、彼女の指先を通せば美しい音楽へと変わる。

けれど、ただ一曲の平凡な子守唄だけは、何度リクエストされても決して弾こうとしない。

もしそれを弾いてしまったら、あの男をまた許してしまいそうで怖かったから。

だからこそ、あの男が巨匠の手作りのピアノを抱えてやって来て、娘に子守唄を弾いてほしいと頼んだとき。

娘はただ静かに首を振る。

「おじさん、私、その曲は弾けないよ」

渡辺千明(わたなべ ちあき)は目が赤くなり、娘の手を無理やりピアノの鍵盤へ置いた。

「そんなはずないだろ、安珠(あんじゅ)は天才ピアニストなんだろ?ピアノが欲しいってずっと言ってただろ?パパが買ってやったんだ。これからは、何でも欲しいものはパパに言え。パパが全部叶えてやる」

安珠は冷たく右手を引っ込める。

「いらないよ、おじさん。もう自分で稼いでピアノぐらい買えるから。そのピアノはあなたの娘さんにあげて」

千明は氷の底に突き落とされたみたいに絶望し、安珠を力任せに抱きしめる。

「安珠、何を言ってるんだ?あなたはパパの唯一の娘なんだ」

安珠は不思議そうに言う。

「でも、おじさんは言ったよね?おばさんの娘だけがあなたの子どもにふさわしいって。あなたが私に約束したピアノを、結局あの子にあげちゃったんじゃないの?」

そう言って、安珠はどうでもよさそうに笑う。

「いいんだよ、おじさん。おばさんが好きなら、その娘を育てればいい。私にはママがいれば十分だから」

千明の胸の中に、複雑な感情が渦巻く。来る前にどんな態度を取られるか想像していたが、娘の拒絶がここまで強いとは思いもしなかった。

彼は知らない。私と娘が、これまでに何度も彼にチャンスを与えてきたことを。それでも彼は、何ひとつ応えなかった。

千明と結婚した五年間、彼には自分が実は渡辺家の御曹司だと打ち明ける無数のチャンスがあった。

それでも彼は、いつも黙ったままだった。

娘が「パパにピアノを聴かせたい」と言うたび、彼は貧しいふりをしてはぐらかした。

「いいよ。でもパパは今お金がないんだ。お金を稼いだら大きなピアノを買ってやるからな」

五年間、私は毎日、娘を連れて広場で露店を出して大道芸をして暮らした。

彼はその様子を冷たい目で見ていた。五年ものあいだ見続けていた。

大道芸じまいをして帰るたび、娘は楽しげに私に尋ねた。

「ママ、もうピアノを買えるくらいお金貯まった?私、パパに子守唄を弾いてあげたいんだ。私が最初に覚えた曲だよ!」

そのたび私は袋の中の小銭を数えて、娘に首を振った。

「もう少しだね。明日もがんばれば、すぐに買えるよ」

ついに、娘の誕生日の一ヶ月前に。

私は袋いっぱいの小銭を数え、やっと一番安いピアノが買える額になったことに気づいた。

だが娘の手を引いて楽器店に行くと、二階で名井思月(みょうい しづき)の娘を抱きかかえ、ピアノを選んでいる千明の姿を見てしまった。

私は震える指で、彼らが見ているピアノを指差し、店員に尋ねる。

「あのピアノ、おいくらですか?」

店員は営業用の笑顔を浮かべる。

「こちらのスタインウェイは、あちらのお客様がかなり前に予約されたものです。すべてドイツの巨匠による完全ハンドメイドで、お値段は一億六千万円です」

一億六千万円。

その瞬間、全身の血が凍りついた。

たしかに、千明がただ者じゃないと噂されたことはある。

でも、風が吹き込むようなぼろい家と壊れかけの家具を見ると、まさか彼が金持ちだなんて信じられない。

今思えば、あの五年間、彼がよくもまああんな家で暮らしていられたものだ。

黙り込む私に、娘が不思議そうに問いかける。

「ママ、パパってすごくお金持ちなの?あのピアノ、パパが私のために注文してくれたの?」

娘はまだ幼く、二階にいる人たちの関係なんて分かるはずもない。

色褪せたワンピースを着る娘を見つめながら、私は口を開きかけたが、結局、何も言わなかった。

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第1話、身分差の恋と色事
一見森の中に佇む古城にも見える伝統ある魔法大学院は、長い歴史があるのを建物の築年数が物語っていた。 重厚な門を潜ると円状に設計された学舎がある。 それを囲むように五つの寮が建てられていて、人族、精霊族、獣人族、人魚族、魔族とに分けられ、各種族の生徒が生活を送っていた。 校舎内は、箒で自由に空を飛び回れるように、四階の高さまで全てが吹き抜けになっていて、室温から外壁に至る迄、常に魔法で快適な温度に保たれている。 その内の一つの教室内では、二つの影が揺れていた。 夕刻の時間帯に、二人以外の人物はいない。 青い髪を乱しながら甘い吐息をついたレオン・ミリアーツは、背後にいるランベルト・イルサルの逞しい腕でしっかりと支えられていた。 ランベルトのホワイトグレーベージュの髪の毛は毛先にいくにつれて、パライバトルマリンと呼ばれる青緑色になっている。長めの毛先が首や肩にかかるたびに、レオンは擽ったくて首を竦めた。 秘所を暴かれて内側を突かれながら、レオンは艶めかしい声音でランベルトに声をかける。 「あ、あっ、んぁ、ランベルト」 もうこれで連続三回目だ。そろそろツラい。 達した筈なのに、埋められたままのランベルトの陰茎は未だに硬度を保ち続けていて、抜かずの連チャンだろうと萎える気配もない。 これでは行為後に自力で歩けなくなってしまう。せめて体勢だけでも変えて欲しかった。 「レオン、もうこの体勢キツイ?」 とても性行為真っ最中とは思えない程に緩やかな声を聞きながら、レオンは必死に縦に頭を振った。 まず身長が違い過ぎるのも難なのだ。 足が浮くどころか体ごと宙に浮く。 自分で小さいと言ってしまうのは嫌なものだが、二メートル十センチはあるランベルトに比べて、レオンは百六十八センチしかない。 身長差が四十センチ以上はある上、体格も違い過ぎる。腰から上を全て抱え上げられた状態になっているので、立ちバックと呼んでいいのかも怪しい。 「じゃあ、こっち向いて? 代わりに、奥……挿れていい?」 耳元で囁かれた声音に心臓が跳ねた。首筋に唇を落とされて、肩を竦める。ソコに挿れられるといつも気持ち良くなりすぎて訳が分からなくなるから怖い。ゾクリとした悪寒めいた快感が背筋を駆け抜けていく。 いくらランベルトが教室内に視覚誤認識魔
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第2話、ドラゴン属という大型わんこに懐かれた時
***  教室内にある自分の席に座っていると突然背後から抱きつかれた。 移動してきたランベルトが隣に座って、持ち上げられるなり右側の太ももの上に乗せかえられる。 「ねえレオン。次の合同選択科目何にするか決めた? また一緒のやつ選ぼう?」  合同選択科目とは、クラスが違っていても授業や研究内容さえ合わせれば一緒に受ける事が出来る授業の事で、ランベルトは毎回合わせたがる。 ——たまには自分が好きなのを選んだらいいのに。  授業でもそれ以外でもランベルトは常に側に居たがった。体は大きいのに寂しがり屋で甘えたなドラゴンは今日も健在だ。  少し体を倒されて横向きにされる。いわゆるお姫様抱っこだ。人前でこれはさすがに恥ずかしい。無い腹筋を駆使してランベルトの逞しい胸板を押し返そうとしたが涼しい顔で微笑まれた。 「おい、降ろせ。何で態々上に乗せた?」 「レオンちょうど良い大きさと重さだから俺の腕の中にスッポリはまるしさ。こうしてると落ち着くんだよね……俺が」 ——お前かよ。  周囲からの目が痛い。純粋に応援してくれる輩も居れば僻む輩もいる。それらを何も気にしないという風に装ってはいるが、レオンはそこまで強靭な精神力を持ち合わせているわけではない。悪意を向けられればそれなりに凹む。 「お願い…………降ろしてくれランベルト」 「えーやだよ。レオンと引っ付いていたいもん」 「初めて会った時、俺言わなかったか? 分かっててこういう事をするのは迷惑だって」 「あれシビれたよね。レオンに会えて良かったって思ったから。好き、レオン」 はぁ、とため息をついた。 ——ダメだ。言葉が通じない。 微妙に噛み合わない会話にイラっとしながら、ランベルトの上から無理やり逃れる。不服そうにされたが無視した。 「魔法薬を調合する授業は?」 「いいね。それにする~。ふふ、レオンと一緒にやるの楽しみにしてるね」 ——いや、そうでなくてもいつも一緒にいるだろう……。 それも濃密な時間を共有している。 ランベルトと交わした契約にはセックスも含まれているから当然と言えば当然の事だけれど、一カ月前から一晩で交わる回数がえげつない。 休みの前日は十回を超すし、平日でも最低三回は求められるようになった。 小首を傾げてお願いと言われると、断りきれなくて
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第3話、もっと俺を求めてよ、レオン
それからは一か月は避けまくって口も聞かずに徹底的に無視したのに、ランベルトは変わらないどころか、めげもしなかった。 初めに提案されてから半年経った頃、とうとう根負けしたのはレオンの方で……、ランベルトの提示した契約を呑んで今の関係に至っている。 契約を呑んだというよりも、契約に等しい接し方に無理やり慣れさせられていったというのが正しい。これでは契約していても、していなくても変わらないと思わせられたからだ。 部屋で寝ていた筈なのに、いつ侵入したのか、起きたら抱えられて一緒に寝ている。ランベルトの部屋に拉致られている時すらあった。何度言っても侵入する事をやめないので、ランベルトが部屋に来るのを諦めた。 『レオン、やたら大きい犬に懐かれたな』 同室者のケミル・リーガルトは爆笑していた。 合同選択選択授業も常に一緒。合同実技でも教師の一言で何故か一緒に組ませられ、付き合ってるのと大差ない生活を送れば折れざるを得なくなった。 『ミリアーツと組ませておけば、イルサルが大人しい』 レオンからすればとても迷惑な名言が出来ていた。 ただ、想定外だったのは〝ごっこ彼氏〟になった途端にランベルトがめちゃくちゃ紳士で優しくなったくらいだろう。 その三ヶ月後に手を出されはしたものの、一週間かけて丁寧に体を開かれて、体の負担にならないように配慮までされた。必ず治癒魔法までかけてくれるので、授業に響く事もない。 付き合い出してからは嫌がる事はしないし、意見も聞いてくれるようになった。 助けて欲しいとも言っていない筈なのに、何故か察したランベルトが率先して手を回した。ランベルトは思っていたより優しかったし、初対面で感じたような軽薄な男ではなかった。 ドロドロに甘やかされて、ランベルト無しでは生きていけなくなるように、手取り足取り世話を焼かれている。今となっては、ランベルトという存在に依存していると思う。 ランベルトに連絡しようとしていたmgフォンが着信のバイブで震えて、意識が浮上してくる。 ——あ、しまった……連絡する前に寝てた。 mgフォンは、通話やメッセージ、ネットワークは魔力を流す事で回線に繋がるので検索も出来る。 体調や魔法量を自動的に測定し、管理までしてくれる優れものだ。一人一台持つ事を許されている、魔法使い専用の
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第4話、もっと
「もっと」 楽しそうにしながらも優しく眦を下げて微笑まれる。 心音が跳ね上がって、腹の奥もランベルトを求めて疼き出した。 見透かされたようにまた先端だけ入り込んでくる。「ラン、ベルトが欲しい……。俺の中、お前で満たして……。も、意地悪……ッするな。俺の中に、ランベルトの……、挿れて欲し……ッ、あ、ァぁああ、あああ!」 突然訪れた快感に腰をそり返らせると両手で腰を掴まれ、律動に合わせて揺さぶられた。「ああん、んんー! イイ……っ、それ気持ちー、ランベルト……、ぁあん、気持ちいい」 過ぎた快楽を逸らすようにベッドシーツとクッションを掴む。 ランベルトの腰の高さまで腰を持ち上げられているので、足は空に浮いたままだった。「レオン、可愛い……ッ」 ランベルトの吐息がやたら艶かしくて、腰に力を入れてしまう。「好き。俺のレオン」 その言葉が本当だったら、きっと幸せだった。よく二年半も持ったものだと我ながら思う。 何度も繰り返される抽挿に散々鳴かされた。「ランベル……ット、もっと」「もっと?」「奥っ、あ、アッアア、奥欲しい!」「良いよ。一度息整えて?」 嬉しそうに囁いたランベルトの声かけに頷いて応える。 息を吸って吐き出すと、それに合わせて腰を深く打ち付けられた。「んぁ、あっあ、アア!」 内部でイかされて腰がそりかえる。 思考回路も体もランベルトで満たされて、与えられる快楽を享受するしか出来なくなった。 まだ夜も明けきらない薄暗い時間帯だった。「ねえ、起きてレオン。良いの見せてあげる」 掛けられた声に目を擦る。まだまだ寝ていたいのにどうしたというのだろう。 ランベルトに起こされて、立ち上がると魔法で着替えさせられた。その上にブランケットを掛けられる。「寒いと思うから包まってて」「ん……分かった。何処か行くのか?」「うん。良いの見せてあげる」 横抱きにされたまま、転移魔法で一瞬の内に外に移動されていた。そこから上へは、飛んで移動する。 人一人抱えていると
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第5話、貴方にラブソングを
  視線が絡んだ気がして見つめ合う。 絡む程の距離にいないのもあって、気のせいだと前方に視線を戻した直後だった。『ξκιβ κα ηκρΰ ακν τκπ(貴方にラヴソングを)』 ——へ? 何の呪文なのかは分からなかったが、ランベルトの音声で紡がれた呪文と、何かのメロディーが直接脳内に響いた。「う、おっ⁉︎」 瞬間、鮮やかな青い薔薇の花が大量に頭上から降ってくる。 魔法では青い薔薇の生成は加減が難しい。それをこんな大量に瞬時に作り出した上に、枝の棘まで綺麗に取り除くという器用さと技術と技量に脱帽だ。さすが魔法大学院創設以来初と謳われる程の魔法力を有しているだけある。 箒も使わずに浮遊して、軽やかに窓まで移動してきた。普段はランベルトに横抱きにされたまま飛行しているのもあって、目の前で見るのは片手で数えるくらいしかない。 ——本当に空を歩いてるみたいだ。 全てを自由に、自分の思い描くままに操る魔法師。ランベルトは理想像そのものだった。 ——いいな。どうやっているんだろ。俺もランベルトみたいだったら良かったのに……。 勝手に劣等感と、多大な憧れを抱いている。 顔には出さないように気をつけて、ランベルトに向けて口を開く。「ランベルト。お前何の嫌がらせだ?」 一時も視線を離さずに問いかけると、ランベルトは箒を手元に呼び寄せてその上に腰掛けた。 お腹を抱えてケラケラと器用に笑っている。「似合ってるよ~。レオンの青い髪と瞳みたいでしょ? どこかの国の皇子様みたいだね。俺、レオンの色大好き」 ——精霊族の本物の皇子様が何言ってんだか……。 周りが騒めき、口笛が鳴り響く。「ね、見てて?」 続けてそう告げられた。
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第6話、実験失敗と違和感
 周囲までもが明るくなったかと思いきや、ボフッと妙な音を立ててまるで綿アメみたいな煙が出て甘ったるい匂いに包まれる。  ——あれ? 視界がめちゃくちゃ低い。何これ……。  床についている自分の手足が青い毛に覆われているのが分かって、恐る恐る上を見ようとすると、抱き上げられた。 「可愛い~レオンにゃん!」  ブハッと笑いを噴き出された。 「にゃっ」  変声薬を作っていたのが、ランベルトのせいで変身薬になってしまったようだ。 「そこのグループは二十点減点です。初めっから作り直すように!」  ——最悪だ。 「はーい!」  元気よく返事したランベルトがさっきまでとは違って、手際よく魔法薬を作っていった。しかも即行で満点で完成させたものだから殺意しか芽生えなかった。 「レオン・ミリアーツは元の姿に戻るまで部屋に行ってなさい」 「にゃー……」  授業が終わり、レオンは元の姿に戻るまで自室で待機を命じられた。心底頭にきていたのでさっさと一人で戻ろうとすると、あまりにも視界が低くて前が見えずにすぐ立ち止まる。ひょいっと抱え上げられてランベルトの腕の中に収められた。 「戻るまで俺が面倒見てあげるからね」  ——お前のせいだろっ! 「俺、レオン送って行ってきます」  教室を出て、廊下を歩きながらチュッチュと細かい間隔で口付けられる。 「ちょっと効果出過ぎちゃったね。レオンに猫耳付けたかっただけだったんだけど。でも青猫姿も可愛いよ、レオン。俺がずっと飼いたいくらい。レオンの青、大好きだよ。クククク……っ」  ——嘘つけよ、笑ってるじゃないか。  輪をかけて腹が立ったのでその端正な顔を引っ掻いてやった。ざまあみろ。 「やっと戻った……」  今日は踏んだり蹴ったりだ。薔薇が降ってきたと思えば、猫になるし、戻った矢先にすぐにまた薔薇の片付けとくる。  ——本当、何考えてんだか……。  全ての授業が終わり、教員室から貰ってきた透明な巨大なゴミ袋の中に魔法で浮かせながら薔薇の片付けをしていた。その横でランベルトは機嫌が良さそうにまたしても鼻歌を歌っている。 「ランベルトっていつも一人で楽しそうだよな」 「一人で楽しそうって、俺がアホみたいな言い方やめて? 俺が楽しいのはレオンといる時だけだから。他では無表情だよ俺。ねえ、ちゃんと分かってる? レオ
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第7話、ヒビが入る
「レオン」「うわ!」 大広間へ行くと突然背後から抱きしめられてレオンは声を上げた。前触れなく己に抱き付いてくるのは記憶の中に一人しかいない。「結局行かなかったのか?」「行ったよ? でも日付またいじゃったんだよね。レオンに会いたかったから時間軸弄ってこの時間に戻ってきた」「お前って本当に何でもアリだな」 時間軸を簡単に操るなんて、教師ですら出来る技じゃない。相変わらずのチート加減にウンザリとした表情を浮かべた。「その前に、俺ら契約してからは毎日会ってるだろ。しかも三年目だぞ……別に明日でも良かったのに」 会う所か、ほぼ毎日体も重ねている。卒業間近になってからは一日の回数までもが増えたくらいだ。「後三ヶ月もしないうちにレオンと離れちゃうでしょ。レオンは俺の。誰にも離したくない。少しの時間だって惜しいよ」 はぁーっと果てしなく深いため息をついた。「ランベルト……前々から思ってたけど、お前の好きは〝ごっこ彼氏〟の好きなのか? ただ単にお気に入りのオモチャを取られたくないってだけだろ? 最近……度を越してないか?」 自分で言っておきながら、言葉が身に刺さる。「友達以上恋人未満てこうじゃないの? レオンを好きな設定だけじゃダメ?」 頭痛と眩暈がした。それなら〝ごっこ〟じゃなくてオモチャの方だ。 ——設定、ね。ああ……良いよ。その好きで間違いないんだよ。でも俺が欲しいのは、そういう意味の〝好き〟じゃない。 口に出してしまいそうになるのを懸命に堪えた。「お前の言う〝好き〟は〝ごっこ彼氏〟じゃない。単なる〝執着〟だよ。お気に入りのオモチャを取られたくないとかそういったものだ。でもさ、俺はオモチャじゃない。オモチャにはそこまで感情移入はしないもんなんだよ。ランベルト……悪いけどもうこのまま自分の部屋に帰ってくれないか?」 心臓が嫌な音を立てている。その感情の名は知っているけれど、今は考えたくなかった。「レオン、俺の部屋に来てくれないの?」 視線を伏せたランベルトからの問いかけに緩く首を振る。「来てくれたのにごめん。行かないよ。それと暫くの間会いたくない」 ——ごめんな。俺はお前が好きなんだよ。 契約に抵触してしまっている段階でランベルトとの関係は成り立っていない。これ以上気持ちに嘘をついて一緒に居れない。気が付いた時点でさっさと切るべきだ
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第8話、助けてくれるのはいつもお前なんだな
*** 次の日、サーシャからはやたらテンションの高いメッセージが来ていて、朝っぱらから声に出して笑ってしまった。『後七本あれば素敵な予感だったのに惜しいね』 そう書かれているのを見て心臓が脈打った。七本は此処に飾ってあるとは言えずに『どういう事?』とだけ返信する。『赤薔薇の三百六十五本は〝貴方のことが毎日恋しい〟という意味だからね。とうとうレオンにも良い人が出来たんだと思ったわ』 メッセージを見た瞬間、ブワリと全身の毛穴が開いて熱を発した気がした。 心臓がドキドキして呼吸もままならなくなる。回りそうにない思考回路で順番に意味を思い出していく。〝夢が叶う〟〝奇跡〟〝無限の可能性〟〝貴方のことが毎日恋しい〟これじゃまるで熱烈な告白みたいだ。 ——落ち着け……。ランベルトの好きは、そういう意味じゃない。本人がハッキリとそう言っていただろう? 自身に言い聞かせる。それに契約を破って勝手に本気になったのは自分の方だ。ランベルトじゃない。 ——ランベルト……お前が好きだよ。 ランベルトは違うんだとばかり思っていたのに、都合の良い方向に考えてしまうのを止められない。同じならどんなに嬉しいか……。「どっちにしても、契約はもう……解いて貰おう」 ——顔が熱い。心臓の音がうるさい。 蹲ったまま動けもしなくて、防御魔法強化訓練授業に出れなくなってしまった。三年生は自分で選んだ科目の試験を合格し、論文を提出して合格を貰っていれば授業への参加は自由になっている。三年生で良かったと心の底から感謝した。 *** あれ以来ランベルトを避けてしまう日が続いて、自分から話しかける勇気も出ずに二週間が経った。 睡眠状態も最悪で、ここの所よく眠れていない。ふらつく頭を抑えて立ち止まっていると、後ろから誰かにぶつかられて派手に転んでしまった。特に反応を返すのも面倒で、立ち
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第9話、もう終わりにしよう
*** 目が覚めるとランベルトの部屋のベッドの上にいた。 「目が覚めたの、レオン?」 「あれ……、何で俺……」 「覚えてない?」 ずっと手を握っていてくれたのかと思ったけれど、良く見るとランベルトの服を握りしめているのは自分だった。上体を起こして慌てて手を離す。 「っ! ごめ、ごめん、ランベルト。これじゃ何処にも行けなくて困ったよな。ごめんなさい」 「んーん。良いよ。レオンからくっ付くのってあまりないから俺は嬉しい」 目尻を下げて笑ったランベルトが少し照れくさそうに首を振った。 「俺、お前がいないと……本当に何も出来なかった……悔しい」 またベッドの上に横向きに転がる。男たちは力も強くて、全く歯が立たなかった。 「いや、あの場合人数的な問題もあったし仕方ないよ」 「でもランベルトは一人で何でも出来るだろ。俺はそれも悔しい」 両腕を交差させて顔を隠すと「レオン」と名前を呼ばれた。 「ねえ、何で俺と比べるの? レオンはレオンでしょ。俺には出来ないけど、レオンにしか出来ない事もたくさんあるよ」 ランベルトの言葉に顔を上げる。 「俺はレオンみたいに誰かと真剣に向き合おうとした事なんて今までに一度もなかったし、やろうと思っても出来ないよ。俺はレオンみたいに真っ直ぐ真面目に生きようとした事、今までになかったし出来ないよ。俺はレオンみたいに上を向いて歩こうとした事なかったし出来ないよ。ね? 同じでしょ? 俺は魔力量として突出しただけ。人間性としてはレオンの方がずっと優れてるし、俺はそんなレオンを尊敬してる」 「~~ッ!」 まさかランベルトから尊敬してるなんて言われるとは思ってなかったから、息すら出来ないくらいに胸が締め付けられて気恥ずかしくなった。 「顔赤いレオンも可愛いね」 「お前が……不意打ちに褒めたりするから……」 ——そんな事初めて
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第10話、どうしたらレオンをずっと側に置いておけるかな……
「お前俺を囲う気かよ。悪いけど、俺はもう……終わりにしたい。ランベルトの事は一個人としてはとても好きだし大切だけど、俺は人族のいる国にちゃんと帰るよ。母さんもいるし。というか、これからお互い忙しくなるだろ? だから今日で契約を終わりにして欲しい。今日はそれを伝えにきたんだ。今まで楽しかったよランベルト。ありがとう」 上手く笑えているのだろうか。声が震えていなかった事を祈りたい。ランベルトから離れて、頭の中も気持ちもリセットしたかった。 あまりにもランベルト一色の生活を送っているのだ。これ以上一緒にいると危険だ。完全に離れられなくなる前に、外の空気を吸いたかった。 精霊族は基本的に一夫多妻制だ。このままの関係をダラダラと続けていると、セフレやら愛人やら側室やらになって囲われた生活になるだろう。精神的に耐えきれそうにない。きっとランベルトを独り占めしたくなってしまう。 怠惰に生きるつもりもなかった。一瞬目を離しただけなのにランベルトが目の前にいて、ソファーの上に横向きに押さえつけられていた。「ランベルト?」 普段纏っている温和な空気感がなくなっている。肌が痺れるような妙な感覚が走り抜けた。「それさあ……レオンこそ契約違反だよね。ねえ、レオンは俺と縁を切って逃げるつもりなの? 俺としたように人族の誰かと付き合って、抱かれて、そいつと幸せになるの?」 茶化した眼差しではなく真剣な表情で見つめられる。「いや……約束を破るのは悪いと思っている。本当にごめん。初めは卒業までって話だったけど、考えが甘かったんだ。二ヶ月も短くしてごめん」「嫌って言ったら?」 初めて聞くランベルトの低い声に、喉を嚥下させた。 額を肩口に埋められる。服の上から緩やかに下っ腹を撫でられて焦燥感に囚われた。「おいっランベルト!」「レオン、契約破るの?」「っ! だから、それは…………ごめん。本当に悪いと思っている」 どこか居心地の悪い不穏な空気が流れている。「なーんてね。嘘だよレオン。怖がらせてごめんね。いいよ。じゃあ今日で恋人ごっこも終わりにしよう。普通の友人ならいいんでしょ? 飲み物用意してくる。紅茶でもいい?」
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