All Chapters of 角膜を奪われた妻は、夫の裏切りに死を選ぶ: Chapter 11

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第11話

暁の目には、和泉はいつも、尻尾を振って媚びへつらうだけの犬にしか見えていなかった。彩寧は死んだ。暁の軽々しいひと言は、しかし一つの生きた命の消失だった。だが彼女には悔悟のかけらもなく、むしろ死んでくれて都合がいいとさえ思っていた。和泉は顔を上げ、血走った目で暁を射抜くように見据えた。「周防暁、貴様には人間としての心がないのか?!俺は本当に目が腐っていた。どうして貴様なんかの言うことを聞いたんだ。貴様がいなければ、俺の彩寧は死ななかった。彩寧から奪ったものを、全部返せ!」言い終える前に、和泉は暁へ飛びかかった。家の中に、張り裂けるような悲鳴が響き渡った。同時に、数名の制服姿の人間が家に突入した。彼らはほとんど一瞬で、狂ったようになった和泉を床に押さえつけた。血の匂いがあたり一面に広がる。部屋の空気には、暁の絶叫と、理性を失った和泉の狂笑が渦巻いていた。和泉の手には、掘り出したばかりの二つの眼球が握られていた。取調室に座り、和泉は暁への故意傷害を認めた。それだけではない。和泉は、暁の挑発を信じ、私の母を殺害する計画を立てたこと、そして違法な臓器移植に関わった罪まで、すべて自白した。彼がこうしたのは、ただ贖罪のためだった。私への過ちを、残りの人生では償えないと悟ったからだ。せめて、法律の裁きを受ける年月の中で、絶えず悔い続けようとしたのである。一方、暁は両目をえぐられた身であっても、治療後に裁判所へ訴追された。罪名は他人への殺人教唆、および違法な臓器移植。暁は自らの悲惨な末路を受け入れられず、鬱々と死んでいった。和泉は冷たい刑務所の中で、長い人生を過ごした。彼は絶えず悔い続け、罪を償い続けた。それは罪を消すためではない、自らを罰するためだった。どれほどの年月が流れたのか。和泉がふと気づくと、新しく伸びた髪はすでに真っ白になっていた。そのとき、扉が開いた。一人の看守が入ってくる。「笹瀬和泉、面会だ」……何年ぶりの面会だっただろう。かつて自分を気にかけていた人々は、とうに去っていた。誰が自分に会いに来るというのか、まったく見当がつかなかった。足に繋がれた鎖は、和泉が一歩進むたびに、耳を刺すような音を立てた。面会室。私は鮮やかな衣装を身にまとい、椅子に腰を
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