All Chapters of カンタレラ〜毒公爵の甘い愛に溺れる〜: Chapter 51 - Chapter 60

86 Chapters

51 旅行の約束

 マルコさんの手が、俺の太ももに触れる。 俺は首を傾げてマルコさんに尋ねた。「あの、マルコさんもだけど貴族ってスキンシップが普通なんですか?」 疑問をぶつけると、マルコさんははっとした顔をした後俺の顔をじっと見て、にやり、と笑う。 なに、その笑顔。ちょっと怖いんですけど?「まあ、うん。そうだよ。だからこう」 と、ふざけた口調で言い、マルコさんは俺の首に腕を絡めてくる。 驚いて俺は声を上げ、危うくグラスを落っことしそうになる。「うわぁ!」「こういうことも普通だよ」 そう言いながら、マルコさんはニヤニヤ笑い、テーブルに手を伸ばす。そしてクッキーを摘まむとそれを俺の口もとに持って来て、「はい」 と、言った。 これは喰えって事か? 俺は戸惑いつつ、唇をゆっくりと開く。薄く開いた唇の隙間にすっとクッキーが挿し込まれ、その唇にマルコさんの指が触れる。 本当にこれ、普通なのか? 不審に思いながら俺はクッキーを食む。チョコチップが入っていて、甘くておいしい。 もごもごとクッキーを食べてると、マルコさんは突然吹き出す。「君相手だと本当、僕も距離感バグっちゃうかも」 なんて言って、すっと離れていく。 距離感バグるってどういうことだ? よくわかんない人だなぁ、と思いつつ、俺はお茶を飲んだ。 マルコさんはクッキーを摘まみ、それを口にした後言った。「大学の休みって長いよねぇ」「そうっすねぇ。妹は宿題があって大変みたいだけど、俺、何にもすることなくて」「せっかくだから旅行してみるのもいいと思うけどねぇ」「旅行かぁ……」 それは心揺れるけど、でもどこかあるのかなって思うと何にも出てくるわけがない。だって、この国の事、あんまり知らねえし。 この間、エドの別荘で山いったしな…… 俺はじっと、窓の方を見つめて言った。「海……」「あぁ、海かぁ。いいねえ、海」「海水浴ってやりますか?」 そう俺が言うと、マルコさんは肩をすくめた。「海で泳ぐまではしないなぁ。子供の頃は海辺で水遊びしたけどねぇ」 そうなんだ。俺、ルカの記憶でも水遊びの記憶はあるけど泳いだ記憶、ないんだよな。ってことは水泳があんまり一般的じゃねえのかな。 俺自身、あんまり海になじみがあるわけじゃないけど、夏だし、海みたいかも。 でもこの辺って海、あるんかな? ちょっと
last updateLast Updated : 2026-01-13
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52 きょうだい

 それからまた、しばらく時が過ぎた八月の終わり。 俺は週に一度エドと会っていた。 日曜日しか会えないのがちょっと寂しい。大学の後期が始まるのは十月だから、毎日会えるのはまだ少し先なんだよなぁ。 それがちょっと寂しい。 エドには海に行くことを伝えていない。それがちょっと心苦しかった。だってマルコさんにある話したらお仕置きされたし、言えるわけがない。 言わなきゃばれねえだろう。 そう思いつつ顔を合わせた日曜日。 今日は外にお出かけだ。場所は学校近くの商店街で、護衛はついてこなかった。 マリアと出掛ける時は護衛がついて来たけど、この辺の基準、よくわからない。 エドとふたり、並んで町を歩く。 日傘をさしたご婦人方が、小さな子供を連れて談笑しながら歩いて行く。きっと公園に向かっているんだろう。ご婦人方は皆、動きやすそうなズボン姿だし。 八月がもうすぐ終わるせいか、だいぶ過ごしやすくなってきたと思う。 暑いのは変わらないけど。 照りつける太陽が、空で強く主張してる。 「町を歩こう」 そう言い出したのはエドだった。 「なんで?」 と尋ねると、彼は小さく首を傾げて俺の腕を掴んだ。「だってルカは町、あまり歩いたことないでしょ?」「言われてみれば」 ここに来たのが春。半年近く経つけど町を歩いた経験、あんまりないや。 学校行って、迎えが来る生活だもんな。寄り道なんてしようもないし。必要なものは皆商人が持って来て選ぶシステムだし、店に行く必要がなかった。 だから俺、この王都にどんな店があるのか全然知らないんだ。 そんな理由でエドは俺を町に連れ出してくれた。 今日は日曜日だからか、普段車から見るより人通りが多と思う。 俺はきょろきょろしながらエドの隣を歩いていた。 その中に若いカップルがいて、一緒に見せに入っていくのが目に入った。 こうして見ると、わりとカップルっぽい人たちけっこういるんだな。 なんかこういうファンタジー世界って男女が結婚前に付き合うの、嫌がりそうなイメージあったけど。 だからマリアがあんなに異性と出掛けるの不思議でしかたないもん。「なあエド」「何?」「結婚前の男女って付き合うの普通なの?」「面白いことを聞くね。わりと普通だと思うけど。親の世代はあんまりいい顔しないかなぁ」 って言って、エドは首を傾げる
last updateLast Updated : 2026-01-14
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53 警戒

 真っ白な外壁に装飾の施された柱。まるでギリシャの神殿みたいな外観のそれが本屋らしい。 よく見ると、正面の入り口上に開いた本のオブジェがある。 すげー本屋。 思わず見とれていると、背中をつつかれた。「中、入ろう」 と言われ、俺は慌てて頷き言った。「う、うん。いや、なんかすげえなって思って」 エドと並んで歩きながらそう俺が言うと、エドが小さく首を傾げた。「どこにでもある本屋だよ」 まあこれが常識ならそうなるよな。でも俺の知ってる本屋はそもそもここまでデカくない。 中に入るとやっぱりデカくて、吹き抜けの天井に、大きな階段があって二階にも本棚が並んでいるのが見える。 中はすっげー人がいて、入り口付近には子供向けの本があるみたいで子供たちが目を輝かせて本を手に取っていた。 本屋ってこんなに人、くるんだ。 本が娯楽何だろうなぁ。俺、ここに来るまで本、そんなに読んだことなかったもんな。 俺はきょろきょろと辺りを見回す。 「エド、何買うんだ?」 俺の言葉に、エドはうーん、と呻る。「別に目的があるわけじゃないけど。とりあえず小説と最新の植物の本欲しくて」 植物の本って何に使うんだろう。 そう思いつつ俺はエドに着いていく。 本屋の二階。奥の方に専門書関係の本のコーナーに行くとさすがに人影は少なかった。 『植物の歴史』『触ると危険な身近な植物』『毒と薬』みたいな本がある。 その本をエドは目を輝かせて見つめ、本を手に取ったりしている。 こういう本、あるんだなぁ…… ってちょっと感心してしまう。 専門書のコーナーを歩いていると、見覚えのある姿を見かけた。 長めの明るい茶色の髪、二十代半ばくらいの男性。あれ、マリアの先生の、エスターライヒ先生じゃないか? なんか短い金髪の女性と談笑しているみたいだ。 誰だろう、あれ。学生かなぁ。 って思ったけど、そんなに見つめてるのも失礼だよなと思い、すぐに目をそらして本棚の方へ向く。 この辺りにあるのは歴史の本だった。 『神話の世界』『宗教と王国』『呪いから見る民俗学』……これはマルコさんの専門だよな。 エスターライヒ先生って歴史の先生だったっけ。だからこのコーナーにいるのかな。 その時、背中から声がかかった。「こんにちは」 聞き覚えのある大人の男性の声にびくっとして振り返ると、エス
last updateLast Updated : 2026-01-15
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54 デート?

 本屋で買い物をしたあと俺たちは商店街を歩く。 太陽が頭上で輝いていて、気温も上昇する一方だ。 もうすぐお昼。腹、減ってきたかも。 通りを歩く人々は、レストランと思われるお店にどんどん吸い込まれていく。 何の店があるんだろ。 俺、全然知らねえんだよな。 ピザのお店にハンバーグもあるんだ。 サンドウィッチのお店にパンの専門店。どれもおいしそうだ。 歩きながらきょろきょろしていると、隣を歩くエドが言った。「お昼食べていこうか」「え、まじ?」 驚く俺に、エドの方が驚いて目を見開く。「だって時間も時間だし。せっかく町に来たんだから食べていこうよ」 そう言いながらエドは俺の腕をそっと掴む。 そして耳元に唇を寄せて言った。「それに、デート、なんだから」 低く響く言葉に俺はドキッとして江戸の方を見た。 彼は天使みたいな無垢な笑顔を浮かべて、辺りへと視線を向けた。「何を食べようか。あそこのお店はデザートのクレームブリュレがおいしいんだ。あっちのお店はパンケーキがおいしくて。この先行くと、パフェがおいしいお店があるよ」「って、デザートの情報しかねえじゃねえか」 笑いながら言うと、エドが肩をすくめる。「言われてみればそうだね。あっちにおいしいケーキのお店あるし」 なんて付け加える。俺、デザートの詳しくなっちゃうんですけど? とりあえず甘いものの情報は置いておいて、歩きながら店の看板を見た。 悩む。 だってどこの店もおいしそうな匂いがするからだ。 窓から見える客の食べる料理、すっげーおいしそうだもんなぁ。あ、パンケーキってあれか。 二段に重なった分厚いパンケーキ。そこからしたたるシロップを見ていると、それだけでお腹が空いてくる。 パンケーキに惹かれてどうするんだよ。でもあれおいしそう。 そう思いつつ俺はその店の看板を見た。 たぶんピザのお店っぽい。 ピザいいなぁ。王宮じゃあピザなんて出ないんだよな。 じっと看板を見ていると、背中からエドの声がかかる。「ここで食べようか」 その言葉に、俺は勢いよく頷いた。 店内に入ると、すぐにスタッフの女性が近づいてくる。「何名様ですか?」「ふたりです」 そうエドが答えるとそのスタッフはカウンターのボードを見たあと、顔を上げてにこっと笑う。「こちらどうぞ」 と言い、彼女は店の
last updateLast Updated : 2026-01-16
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55 妹と距離感と

 食事をとって外へ出ると、通りの向こうに見覚えのあるワンピース姿を見つけた。 春の空みたいな薄い青のワンピース。それに淡いクリーム色のカーディガン。「マリア……?」 呟いて俺はじっとその少女を見る。 あの服はマリアが今朝着ていた服だし間違いないだろう。 隣には少し年上っぽい青年が立っている。 雑貨屋かな。 店頭に出ているワゴンの商品を見て談笑してるみたいだ。 なんか楽しそうだ。ふたりの距離はちょっと離れてて心の距離を表しているみたいだった。 あの青年誰だろう。マリアの交友関係全然わかんねえんだよな。 男の名前多すぎるんだよ。 思わず眺めていると背中から声がかかる。「何見てるの?」 そのエドの問に、俺はふたりを見つめたまま答えた。「いや、あそこにマリアがいるから気になって」 マリアは何かを手に取って彼に見せている。すると彼もそれへと手を伸ばす。 あ、今なんか偶然装って手が触れなかったか? なんか手を引っ込めて恥ずかしそうにしてるけど、絶対わざとだろ? あぁ、なんか気になる。すっげー気になる。マリア、騙されたりとかしてねえだろうな?「……ルカ、危ないよ?」 呆れたような声と掴まれた腕。そっと身体を引っ張られてそこで初めて気が付く。どうやら俺、歩道わきの柵から身を乗り出そうとしていたらしい。「あ……ごめん、ありがとう」 びっくりして俺は振り返って、苦笑を浮かべてエドを見る。 彼は肩をすくめて言った。「気になるの?」「なるよ。だって妹だし。それに」 ここはマリアがそのキャラクターと幸せになるかっていうゲームの中だから。という言葉を俺は飲み込む。 ゲームのキャラ、何だよなぁ。そう思うとなんか変な気分だ。 俺は右手のひらをじっと見て、握って開く。 こうしてちゃんと生きてるのに、ここがゲームの中だって信じらんねえ。 思わず黙ってしまった俺に、エドが不思議そうに言った。「それに、何?」「あぁ、ごめん。それに……妹には幸せになってほしいからさ。変な男だったらどうしようかと思って」 そう誤魔化して俺は通りの向こうに目をやる。 だけどマリアたちの姿は見えなくなっていた。 店に入ったのか、それとも移動してしまったのか。反射的にきょろきょろと視線を巡らせるけど、マリアたちを見つけられなかった。 ちっ。 思わず舌打ちを
last updateLast Updated : 2026-01-18
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56 新学期

 それから時間が流れて九月の終わり。 マルコさんと海に行ったりエドと会ったり、俺の日々は夏休み前に比べてすげー変化があったと思う。 幸い事件もないし、襲われることもなく日々が過ぎていた。 正直平和すぎて怖い。 この乙女ゲームの世界的には、国王陛下の誕生日っていうのがひとつの大きなイベントだったみたいで、マリアの交友関係は一気に広がったようだ。 マリアと話していると知らねえ名前がばんばん出てくる。 ゲームはたぶん高校の三年間だと思うから、先はまだ長い。 そんな俺たちに次あるイベントは文化祭だ。 休み明けから準備が始まるらしいけど、この世界の文化祭って何するんだろう。 新学期の準備ってことで久しぶりに登校した大学。 すっかり秋めいて、日中は長袖一枚でちょうどいい気候だ。 「ごきげんよう」「ごきげんよう。夏休みどうでしたか?」 なんていう会話が聞こえてくる。 俺は相変わらず浮いていて話しかけてくる学生はいないけど、挨拶してくる学生は以前よりも増えた。 国王のパーティーのお陰かなぁ。 名前も知らない学生たちに挨拶されて、ひきつった笑いを浮かべる。 今日の目的はいわゆる授業登録だ。 必修科目や選択科目を選んで登録を行わないといけない日らしい。 講義一覧のリストや書類を貰い、食堂の椅子に腰かけて書類を書いていると頭上から声が降ってきた。「ルカ」 声と、甘く漂う匂い。 エドだ。 ハッとして俺顔を上げると俺の隣にエドが腰かける。そして彼も書類を開いてペンをとりだした。「エド」 久しぶり、じゃないしこの場合なんて挨拶するのが適切なんだろう。 だって週に一回会ってたし。でもシてはいないんだよな……なんてことを考えて、俺はさっとエドから目をそらした。 そんなことを考えていると、エドの方が口を開く。「選択科目どうするの」「えー、まだ考えてる」 いいながら俺は資料を開く。 一年生だからうけなくちゃいけない講義が多いのは日本と変わんない。 単位計算とか必要だしけっこうめんどい。 資料を見ていると、文化祭についてのプリントも挟まってた。 文化祭は十一月の初めらしい。日時やイベント参加者募集とか要項が書いてある。 俺はそのプリントを見ながら言った。 「へえ、文化祭って高校も一緒なんだ」「うん。あと大学院も一緒だから三日
last updateLast Updated : 2026-01-19
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57 世界が敵に回っても

 学校から帰ると、妹のマリアと一緒にお茶の時間になる。 ふたりだけの部屋だから、お互いのんびりと話ができる。 俺たちはこの時間をとても大事にしていた。 テーブルに置かれているのは、お茶が入ったティーカップとケーキやクッキーがのったトレイ。 ソファーじゃなく、床にクッションをしいて足を崩す俺たちの話題は文化祭の事だった。「ねえお兄ちゃんは文化祭で何やるの?」「ゼミでなんかやるみたいだけど……基本先輩たちが考えてるから俺たちはまだ知らされてねえんだよな」 答えながら俺はクッキーを摘まむ。 するとマリアは首を傾げて言った。「ゼミって、学校のクラスみたいなやつ?」「そうそう」「お兄ちゃん、部活……じゃなくってサークルだっけ、大学って。それはやってないのよね」 マリアの言う通り俺はサークルには入ってない。 何でか、と言われたら深い理由はないんだけど。たんに面倒なだけだ。 「マリアはなんか部活やってんの?」 俺の問いかけに、マリアは勢いよく頷く。「うん、やってるわよ。家庭科部! お料理したりぬいぐるみつくったり、楽しいの」 そうにこやかにマリアは言った。 そうなんだ。それは知らなかった。「じゃあ文化祭は部活でぬいぐるみ飾ったりするの?」「そうそう。あとね、喫茶店やるの。だからお兄ちゃん絶対来てね! 可愛い服を皆で着るんだー」 そう、マリアは嬉しそうに語って小さなタルトをつまむ。 そっかぁ。喫茶店って文化祭の定番だよなぁ。 俺たちのゼミは何するのか全然わかんねえけど。 文化祭の定番ってなんだろう。出店にコスプレとかかなぁ。「そっかー。楽しみだなぁ」「うん、楽しみ! 殿下も来てくださるって言っていたし。先生も! それとね」 と、マリアがどんどん男の名前を上げていきちょっと複雑な気持ちになった。 マリアの交友関係、どうなってるんだ……? ねえ、何人攻略対象のキャラっているの? 十人とかいるのかなぁ。そう思うとなんか怖くなって、背筋が寒くなるような気がした。 だってこういうゲームって途中のイベントでキャラ増えたりするじゃん? 文化祭に、学年あがった時とかさ。 俺はおそるおそる尋ねた。「なあ、マリア」「何?」「今一番誰と仲いいんだ?」 するとマリアはティーカップを手に持ち、うーん、と呻る。「そうねぇ。最近はマル
last updateLast Updated : 2026-01-20
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58 誘い

 毎週俺はエドと会っているけど、部屋に来るのは久しぶりかも知れない。 ミャーコは前よりもちょっと大人っぽくなってる気がする。 彼女は鼻をヒクヒクさせて、ソファーに座る俺たちの足元をうろうろしていた。 なんかどこに座ろうかって悩んでいるみたいだ。 エドと俺はぴったりに張り付いているもんだから、ミャーコはどこに入り込むのか悩んでるのかもしれない。 ミャーコはぴょん、と跳ねると俺とエドの、僅かに開いていた隙間に無理やり頭をいれて入り込んでくる。「ミャーコ?」 エドが驚いたように言うけどミャーコは構わず身体をねじ込んで、俺たちの間に居座り大きな欠伸をした。 俺はそんなミャーコの頭にそっと触れて言った。「狭いところ好きだよなぁ、猫って」「あぁ、そうだね。この部屋に人が来ることないから、嫉妬してるのかも」 冗談めかして言い、彼はすっかり落ち着いて香箱座りしているミャーコの身体をそっと撫でた。 するとミャーコは気持ちよさげに目を細める。「嫉妬って。嫉妬してたら俺、爪たてられてるでしょ」 俺は笑いながら答えてお茶が入ったカップに手を伸ばした。 すっかり秋めいてきたから今日のお茶は温かいハーブティーだ。 俺の言葉に笑って頷き、ミャーコの尻尾で遊びながらエドは答える。「あぁ、確かにそうかも」「だろ? っていうか猫に嫉妬されるとかあるんかな」「嫉妬するかはわからないけど、好き嫌いはあるみたいだよ。屋敷の中で懐いてる人とそうじゃない人、いるし。兄には近づきたがらないし」 それは飼い主の想いを反映しているんじゃねーかな。って思ったけど口にはしないで、俺はお茶をぐい、と飲んだ。 花の香りがハーブティーだけど、違う味がする気がする。「エドんちっていつもハーブティーだよな」 そう俺が言うと、エドは頷き言った。「うん、うちに植物園、あるからね」「植物園?」 驚いて俺はエドの方を見る。彼もカップを手にして、その中身を見つめて言った。「植物の中には毒になるものがあるから」 さらり、と言ってエドはお茶に口をつけた。 あぁ……そっか。確かにそうだ。トリカブトは有名だよな。あとスズランとかユリもそうだったような……そう思うとなんか背筋が寒くなった。 エドが誰かに毒を盛るわけないのに。でもその知識を深くもっている、という事実が俺の心に一抹の恐怖を植え
last updateLast Updated : 2026-01-21
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59 ほしい

 ミャーコをメイドに預けた後、エドは俺を奥の寝室へと連れて行く。 カーテンがあいた明るい部屋。大きなベッドの上に俺を寝かせると、俺に覆いかぶさった。 「エド……」 うっとりと名前を呼ぶと、彼は俺の頬を撫でてゆっくりと顔を近づけてくる。そして唇を重ねた。 そんな彼の首に俺は腕を絡めて、自分から舌を出す。 ピチャリ、と絡まる唾液の音と俺の口の中を舐め回す音。「んン……」 エドは口付けながら俺の服を捲り上げ、素肌に触れた。 乳首を指先が弾いて、俺はビクン、と腰を揺らした。 ズボンの中のペニス、もう硬くなってるのが自分でもわかる。 揺れる腰に気がついたエドはゆっくりと顔を離すと、ニヤリ、と笑い俺の唇をなぞりながら言った。「欲しくてたまらないって顔してる」「うん……だってずっとしてねえし……」 息を切らせながら言い、俺は唇をなぞるエドの指をぺろり、と舐めた。するとエドは嬉しそうに笑い、その指を俺の口の中に入れてくる。「舐めて」 と言い、俺の口の中で指を動かした。 ぴしゃぴしゃと舌を、唾液を絡めて指を舐める。 まるでフェラみたいだ。俺の口の中に二本の指が入って蠢いている。「ルカ、すっごいイヤラシイ顔してる」「ンぁ……だって、はやく欲しいんだもん」 そう答えて俺は懸命に指を舐め回した。 その指がすっと引き抜かれたかと思うと、エドはその指を俺に見せつけるかのように目の前に持ってくる。 エドの二本の指が俺の唾液でぬらぬらと光っていてすげえ卑猥だった。 ただの指なのに、それを見ただけで俺の胸は高鳴る。「あ……」 思わず息を漏らすと、エドは俺の目を見つめたままその指をぺろっと舐めた。 あぁ、やばい。 ろくに触られたわけじゃねえのに俺の身体はもう、エドの行動に支配されてる。 エドは俺の服を脱がせて裸にすると、じっとりと絡みつく目で俺の身体を見つめた。 そして指先で乳首を弾く。「あ……」「これ、大きくなったよね。これじゃあ人前で裸になれないでしょ」 喉の奥で笑いながら言い、エドは俺の胸に顔を埋めてそれをぺろぺろと舐めた。「ひ、あ……」 そこから甘い痺れがひろがっていって腰が揺れる。もっと欲しいって、アソコがきゅうってしてる。でもエドは胸を舐めるだけでそこには全然触ってくれなかった。「エドぉ」 息を吐きながら名前を呼ぶ
last updateLast Updated : 2026-01-22
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60 繋がっていたい

 エドと繋がったのは久しぶりだ。 そのせいか圧迫感がすごい。 俺は目を見開いて口を大きく開く。 「エドっ」 伸びた俺の左腕をエドが掴み、その手首に巻かれたブレスレットに唇を寄せる。 視線だけは俺の顔を見つめて。 その表情がすっげー色っぽくって俺は思わず息をのんだ。 「きつい?」 と、いたわるような声で言われて、俺は小さく頷く。 すると彼はベッドに片手をつき、俺の腕を自分の首に絡ませて言った。「俺の顔、見て」「エド……あっ」 エドは俺の顔を見つめたままゆっくりと腰を動かし始めた。 ぐちゅぐちゅ……と響く水音と一緒に俺の腰が揺れていく。「ひ、あ……あぁ!」 まだ全部入ってるわけじゃねえはずなのに、すっげーきつい。 でも気持ちいい。前立腺だっけ。そこに先端があたると声が漏れてしまう。「あ、あ、あ」 久しぶりなのに、俺の身体は確実にそこから快楽を拾い上げていて、どんどん頭が変になってくる。 この感覚、自分でシても感じられないこの感覚、すっげー好きだ。もっと気持ちよくなりたくって俺はエドにしがみ付き声を上げた。「もっと、もっと深くして?」 裏返った声でそう訴えるとエドはさらに奥へと入ってくる。でもちょっと苦しげな顔になって、動きを止めた。 そして苦笑を浮かべる。「奥、きつい。時間あくと戻っちゃうんだね。熱くて気持ちいいけど」「ひ、あぁ!」 ギチギチとエドは奥へと入り、大きく息を吐いた。 やばいこれ。この圧迫感と前立腺押しつぶされる感じがすっごくいい。 「だい、じょうぶだから……エド、動いて?」 うっとりと甘い声で言うと、エドは俺に口づけて言った。「愛してる、ルカ」 その言葉のあと、エドはゆっくりと腰を揺らし始めた。「あ、あ……あぁ! エド、エド俺も、エド、スキ! あぁ!」 足がぴん、と張り、腰が揺れる。 中マジすごい。 エドが動くと腰から快楽が這い上がって頭、やばくなる。 奥を突かれるたびに視界も真っ白になって、中がきゅうって収縮してるの、自分でもわかる。 苦しいけど気持ちいい。 こうして繋がって、実体あるのにここはゲームの世界、なんだよな。 その事実を思い出すと急に胃の奥が冷えていく。 ときどき考える、ゲームの終わりの先の世界の事。 そもそも俺はこのゲームの事を詳しく知らない。なのになん
last updateLast Updated : 2026-01-23
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