煌びやかな世界の向こう。 沢山のフラッシュに囲まれて【彼】はそこにいる。 見慣れた、嬉しそうな笑顔。 笑うと少しだけ見える八重歯。 まるで黒曜石のように光に反射するさらさらの黒髪。 ふ、と視線を上げた【彼】と目が合う。 「今日は、このような素晴らしい賞をいただき、夢のようです」 重低音の、バリトンボイスが鼓膜を震わせる。 色気を含んだ、心地良い声。 その声が、スピーカーを介して紡がれた。 「応援して下さっているファンの皆様に感謝を。そして、これからもよろしくお願いします」 はにかむような笑みが《画面》いっぱいに映し出される。 そう──。 私、四ノ宮香月(しのみや かつき)は家のリビングのテレビに齧り付き、モニター越しに笑う、今国内で1番人気のアイドルグループの授賞式を見ていた。 私が大好きな奏斗(かなと)──Kanatoは、画面の向こうにいる自分達のファンに向かって、にこやかに手を振っていた。 「奏斗くん、帰ってくるの明日だって?」 背後で、お母さんの声が聞こえた。 私は振り返らずに「うん」と頷く。 「色んなインタビュー受けて忙しいでしょうに…体壊しちゃわないかしらね」 「最近はマネージャーさんにしっかり健康管理をしてもらってるから、大丈夫みたい」 「あら。敏腕マネージャーね。美人だし、仕事もできるし、いい人にマネージャーをしてもらっているのね。良かったわ」 「……うん」 敏腕マネージャー。 いつも奏斗の近くにいる、とても美人な人。 何度か、奏斗とそのマネージャーの間に何かあるのでは、とネットで噂になった事がある。 奏斗も、マネージャーも、ただの仕事仲間だと発表していたし、事務所も2人の関係を否定していた。 だけど、私は1度見てしまった事がある。 深夜、奏斗がマネージャーの運転する車で送ってもらった時。 車を降りた奏斗を追って、マネージャーが奏斗の腕を掴んだ。 そして、マネージャーが奏斗にキスしている姿を。 「……私の告白なんて、いつも流すくせに」 「え?香月、何か言った?」「ううん。何でもないよ」私は、お母さんに笑って答える。奏斗──国民的アイドルグループに所属するKanatoは、私の幼馴染だ。お隣さんで、引っ越してきた時期も同時期。最初は引っ込み思案で、人見知りが激しかった奏斗と一緒に遊ぶ
Terakhir Diperbarui : 2025-12-02 Baca selengkapnya