Masuk小さな頃から大好きだったお隣さんの【瀬見 奏斗(せみ かなと)】 彼は、幼い頃から可愛らしく、成長するにつれて精悍な顔つきに変わり、格好よくなった。 そんな奏斗が芸能界に見出され、アイドルとしてデビューする。 私が、奏斗に何度好きだと告白しても、笑って本気にしてくれない。 だけど、奏斗を嫌いにもなれない。 他の人を好きになろう、とした事もあるけど、やっぱり奏斗の事が大好きで、私は諦める事を諦めた。 私──【四ノ宮 香月(しのみや かつき)】は、奏斗、いえ、アイドルのKanatoの1番のファンであり続け、一生応援する! 芸能界は、様々な誘惑があって、奏斗が様々なスキャンダルに巻き込まれたとしても。 誰かと熱愛報道が流れたとしても。 私は、奏斗のファンでい続けるんだ。
Lihat lebih banyak合コンは、思っていたよりも賑やかで、楽しい時間になった。 「合コン」のイメージを勝手にこんな風なものだ、とつけていた私は、拍子抜けしてしまう。 これだったら、大学の飲み会と同じような雰囲気。 少しだけ男の子と距離は近いけど、ただ、それだけ。 変に体を触られたりしないし、しつこく口説かれたりもしない。 変に漫画やドラマの見すぎで、合コンに良いイメージのなかった私は、自分の偏った考えに恥じ入る。 今だって、私の隣に座っている男の子は優しくて、凄く紳士的だった。 「香月ちゃん、お酒あんまり強くないでしょ?無理してお酒飲まなくていいよ。次は烏龍茶にでもする?」 「いいの?遠藤くん」 「うん。酔って騒いでっていうのじゃないでしょ、今日は。楽しく喋れたら、俺はそれでいいし」 優しく笑う遠藤くんに、私もついつい警戒心が解けて笑い返す。 どうやら遠藤くんは、友人の頼みで今回の合コンに参加したらしい。 遠藤くんの友達は、私の友人が気になっていたらしくて、今回の合コンをどうにか組んだみたい。 遠藤くんは、私にちらりと視線を向けてあっさりと口にした。 「香月ちゃんも、俺と似たようなもんでしょ?あまり合コンに乗り気じゃないように見えたから」 「えっ、バレてたの?」 「そりゃあ、ね。なんだろ……お互い合コンに乗り気じゃなかったから、かな?」 「ふふっ、同じ雰囲気を感じたから、とか?」 「そうかもね」 まったりと、遠藤くんと色々な事を話す。 他の皆は、それぞれ男の子といい雰囲気になっていて、連絡先の交換とかをしているのが見えた。 合コンは、どうやら成功したみたいだ。 遠藤くん以外の男の子たちも、変にガツガツしていないって言うか……みんな落ち着いていて、女の子と笑い合っている。 「ごめん、遠藤くん。私ちょっとお手洗いに行ってくるね?」 「うん、分かったよ。行ってらっしゃい」 ひらり、と手を振られて、つい私も手を振り返す。 個室を出て、廊下を歩いていると私はふと自分の手元を見てしまった、と呟いた。 ハンカチを忘れてしまった。 せっかくテーブルの上に取り出したのに。 少しだけお酒が入っているから、忘れっぽくなっているのかもしれない。 しょうがない、いったん個室まで戻ろう。 そう考えた私が、踵を返すと、思いもよらなかった声が背後からかけ
それからの私は、今まで奏斗に必要以上に連絡をしていたのをまず、やめた。 私と奏斗は幼馴染で、奏斗も幼馴染の私を大切にしてくれていた。 だけど、私からしょっちゅう連絡が来て、忙しい奏斗を煩わせていたかもしれない。 1度、そう考えてしまうと連絡する事が怖くなって、奏斗への連絡はぱったりと途絶えた。 私は本当の失恋が堪えて、あの日の合コンの誘いを断ってしまっていた。 大学に行くたびに、時々合コンの誘いを受けていたけど、何となく遊びに行く気にならなくて。 全部断ってしまっていた。 けど、あれからもうひと月近くが経つ。 奏斗への連絡をやめてから、ひと月。 テレビの中で元気そうに活動する奏斗を観る事にも、慣れてきた。 そんな頃に、大学の友人から声をかけられた。 「香月〜今日の合コン、どうしても参加して欲しいんだ!女の子が1人体調悪くって来れなくなっちゃって……お願い!会費もいらないし、ご飯食べに来てくれるだけでいいから、参加してくれない!?」 顔の前で両手を合わせ、必死に頼んでくる友人。 合コン。 参加、してみようかな。 「分かった。いいよ、参加する。ご飯食べてていいんだよね?」 「……だよね、やっぱり無理だよね〜……。……えっ!?」 いつも私が断っているからだろう。 だから、友人もまさか私が合コンに参加するとは思わなかったらしく、私の返事を聞いて、驚いたように声を上げた。 「えっ、いいの!?本当に合コンだよ!?」 「うん、いいよ。今まで断っちゃってたし、申し訳なくて…。ただ、本当に戦力にはなれないから……」 「いいよいいよ!参加してくれるだけで助かる〜!おしゃれ個室の居酒屋だから、ゆっくりお酒も飲めるし、ご飯も美味しい
「その、本気じゃないだろ?俺たち子供の頃からずっと一緒だったし……今さら、そんな……」 奏斗の言っている言葉が、理解できない。 理解、したくない。 私の告白を、奏斗は今まで本気にしてなかったんだ。 子供の頃からずっと一緒にいるから。 だから「好き」って言う感情も、それは本当じゃないって思っているんだ。 だから、私の気持ちが本気だった。それが今分かって、奏斗は気まずそうにしているの。 何だか、かくんと体から一気に力が抜けてしまう。 「そう、だね……今さら、だね……」 「そうだよ。俺たちの間に、そんな……」 私の言葉を聞いた瞬間、奏斗があからさまにほっとしたような様子になる。 そして、奏斗の安心したような様子に私は。 「うん……十分、気をつけるよ。変な人には引っかからないようにする」 「──ぇ、」 「私も、大学生だしね……。Kanatoばっかり追いかけてないで、彼氏も作らなくちゃ」 にこり、と無理矢理笑みを作って私がそう言うと、奏斗は何とも言えない表情を浮かべた。 それから、私と奏斗は。 表面上は普段通り。 時折、奏斗から探るような視線を向けられているのは分かっていたけど。 私はこれ以上、奏斗から突き放される事が怖くて。 私の気持ちを否定されるのが、怖くて。 気付かない振りをして、一緒に夕食を食べて、夜には別れた。 奏斗は隣の自宅に。 私は、2階の部屋に戻る。 奏斗を見送って、部屋に入った途端。 私の足からは、力が抜けてずるずるとその場にしゃがみこんでしまう。 「嘘、でしょ…
ホットケーキを作り終わった私は、コンロの火を消す。 お皿の上に乗せられたホットケーキは、ふわふわで、上手く膨らんでいる。 きつね色に焼けてて、美味しそうな香りが漂ってきていてその匂いを嗅いでいると、私までお腹が空いてきた気がする。 バターとハチミツを用意して、奏斗が待ってるだろうリビングに振り向いた。 「──わっ!」 振り向いた先に、奏斗が立っていた。 何も言葉を発さずにそこに立っていた奏斗の姿に、さすがの私も驚いてしまった。 バクバク、と心臓がけたたましく音を奏でている。 「び、びっくりしたー……。奏斗、どうしたの?何かあった?」 「香月……、スマホに連絡来てたみたいだ」 「え?本当?ありがとう!」 もう、声をかけてくれて良かったのに!と喋りながら奏斗から差し出されたスマホを受け取って、変わりにホットケーキの乗ったお皿を奏斗に渡す。 お皿を受け取った奏斗は、リビングに戻らずに、じっと私を見つめてきて。 どうしたのだろう?と私が首を傾げると、そこでようやく奏斗は「ありがと」と言ってからリビングに戻って行く。 私も自分のホットケーキが乗ったお皿を手に、リビングに戻る。 テーブルにお皿を置いて、私は奏斗から渡されたスマホを確認する。 連絡が来てたって言ってたけど、なんだろう。 画面を開いて、タップする。 すると、そこには──。 「……えっ」 まさか、合コンのお誘いがあるとは思わなかった私は、その連絡を見てぎょっとして目を見開いてしまった。 そして次に、この連絡を奏斗が見ちゃったのだとしたら。 それで、さっきは少し様子がおかしかったの。 ほんの少しの、期待。 もしかしたら、奏斗はこの連絡を見て、嫌だと思ってくれたんじゃあ……。 そう考えていた私に向かって、前の席に座っていた奏斗がホットケーキを切り分けながら口を開いた。 「香月、ごめん。さっきちらっと通知が見えちゃったんだけど……。見る気は無かったんだよ」 「えっ、あ……いや、大丈夫だよ」 やっぱり、奏斗は合コンの連絡が来ているのを見ていたんだ。 見えてしまったんだ。 ほんのちょっとの後ろめたさ、と。 ほんのちょっとの期待感。 奏斗が、合コンなんて行くな、って言ってくれるかも、と言う微かな期待がむくむくと湧き上がってくる。 だけど、そんな私の期待を嘲笑う