大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…

大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…

last update最終更新日 : 2026-01-22
作家:  籘裏美馬たった今更新されました
言語: Japanese
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概要

現代

溺愛

泣ける

幼なじみ

アイドル

一途

ざまぁ

成長

秘密恋愛

小さな頃から大好きだったお隣さんの【瀬見 奏斗(せみ かなと)】 彼は、幼い頃から可愛らしく、成長するにつれて精悍な顔つきに変わり、格好よくなった。 そんな奏斗が芸能界に見出され、アイドルとしてデビューする。 私が、奏斗に何度好きだと告白しても、笑って本気にしてくれない。 だけど、奏斗を嫌いにもなれない。 他の人を好きになろう、とした事もあるけど、やっぱり奏斗の事が大好きで、私は諦める事を諦めた。 私──【四ノ宮 香月(しのみや かつき)】は、奏斗、いえ、アイドルのKanatoの1番のファンであり続け、一生応援する! 芸能界は、様々な誘惑があって、奏斗が様々なスキャンダルに巻き込まれたとしても。 誰かと熱愛報道が流れたとしても。 私は、奏斗のファンでい続けるんだ。

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第1話

1話

煌びやかな世界の向こう。

沢山のフラッシュに囲まれて【彼】はそこにいる。

見慣れた、嬉しそうな笑顔。

笑うと少しだけ見える八重歯。

まるで黒曜石のように光に反射するさらさらの黒髪。

ふ、と視線を上げた【彼】と目が合う。

「今日は、このような素晴らしい賞をいただき、夢のようです」

重低音の、バリトンボイスが鼓膜を震わせる。

色気を含んだ、心地良い声。

その声が、スピーカーを介して紡がれた。

「応援して下さっているファンの皆様に感謝を。そして、これからもよろしくお願いします」

はにかむような笑みが《画面》いっぱいに映し出される。

そう──。

私、四ノ宮香月(しのみや かつき)は家のリビングのテレビに齧り付き、モニター越しに笑う、今国内で1番人気のアイドルグループの授賞式を見ていた。

私が大好きな奏斗(かなと)──Kanatoは、画面の向こうにいる自分達のファンに向かって、にこやかに手を振っていた。

「奏斗くん、帰ってくるの明日だって?」

背後で、お母さんの声が聞こえた。

私は振り返らずに「うん」と頷く。

「色んなインタビュー受けて忙しいでしょうに…体壊しちゃわないかしらね」

「最近はマネージャーさんにしっかり健康管理をしてもらってるから、大丈夫みたい」

「あら。敏腕マネージャーね。美人だし、仕事もできるし、いい人にマネージャーをしてもらっているのね。良かったわ」

「……うん」

敏腕マネージャー。

いつも奏斗の近くにいる、とても美人な人。

何度か、奏斗とそのマネージャーの間に何かあるのでは、とネットで噂になった事がある。

奏斗も、マネージャーも、ただの仕事仲間だと発表していたし、事務所も2人の関係を否定していた。

だけど、私は1度見てしまった事がある。

深夜、奏斗がマネージャーの運転する車で送ってもらった時。

車を降りた奏斗を追って、マネージャーが奏斗の腕を掴んだ。

そして、マネージャーが奏斗にキスしている姿を。

「……私の告白なんて、いつも流すくせに」

「え?香月、何か言った?」

「ううん。何でもないよ」

私は、お母さんに笑って答える。

奏斗──国民的アイドルグループに所属するKanatoは、私の幼馴染だ。

お隣さんで、引っ越してきた時期も同時期。

最初は引っ込み思案で、人見知りが激しかった奏斗と一緒に遊ぶようになったのは。

奏斗が私に笑ってくれるようになったのは、いったいどれくらいからだろうか。

小学校も、中学校も、高校も。

全部一緒だった。

何をするのも、どこに行くのも私と奏斗は一緒だった。

だけど、高校卒業間近。

奏斗は芸能界にスカウトされた。

最初は読者モデルから。

そして、人気が出て、タレントとして歌番組に出た時。

奏斗の歌の上手さが知れ渡った。

それから、あれよあれよとあっという間に奏斗はアイドルとしてデビューする事が決まってしまった。

元々、知名度も人気もあった奏斗がアイドルとして成功するのも、当たり前のようだった。

瞬く間に人気が出て、グループの実質的なリーダー、センターになった奏斗は、私の幼馴染から、遠い存在に変わってしまった。

「こんなに近いのに、手が届かない」

私が伸ばした手は、カツン、と無機質な液晶に当たってしまう。

冷たい感触。

寂しくて、恋しくて。

私は自分の膝に顔を伏せて、テレビから流れる奏斗の歌声をずっと聞いていた。

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1話
煌びやかな世界の向こう。 沢山のフラッシュに囲まれて【彼】はそこにいる。 見慣れた、嬉しそうな笑顔。 笑うと少しだけ見える八重歯。 まるで黒曜石のように光に反射するさらさらの黒髪。 ふ、と視線を上げた【彼】と目が合う。 「今日は、このような素晴らしい賞をいただき、夢のようです」 重低音の、バリトンボイスが鼓膜を震わせる。 色気を含んだ、心地良い声。 その声が、スピーカーを介して紡がれた。 「応援して下さっているファンの皆様に感謝を。そして、これからもよろしくお願いします」 はにかむような笑みが《画面》いっぱいに映し出される。 そう──。 私、四ノ宮香月(しのみや かつき)は家のリビングのテレビに齧り付き、モニター越しに笑う、今国内で1番人気のアイドルグループの授賞式を見ていた。 私が大好きな奏斗(かなと)──Kanatoは、画面の向こうにいる自分達のファンに向かって、にこやかに手を振っていた。 「奏斗くん、帰ってくるの明日だって?」 背後で、お母さんの声が聞こえた。 私は振り返らずに「うん」と頷く。 「色んなインタビュー受けて忙しいでしょうに…体壊しちゃわないかしらね」 「最近はマネージャーさんにしっかり健康管理をしてもらってるから、大丈夫みたい」 「あら。敏腕マネージャーね。美人だし、仕事もできるし、いい人にマネージャーをしてもらっているのね。良かったわ」 「……うん」 敏腕マネージャー。 いつも奏斗の近くにいる、とても美人な人。 何度か、奏斗とそのマネージャーの間に何かあるのでは、とネットで噂になった事がある。 奏斗も、マネージャーも、ただの仕事仲間だと発表していたし、事務所も2人の関係を否定していた。 だけど、私は1度見てしまった事がある。 深夜、奏斗がマネージャーの運転する車で送ってもらった時。 車を降りた奏斗を追って、マネージャーが奏斗の腕を掴んだ。 そして、マネージャーが奏斗にキスしている姿を。 「……私の告白なんて、いつも流すくせに」 「え?香月、何か言った?」「ううん。何でもないよ」私は、お母さんに笑って答える。奏斗──国民的アイドルグループに所属するKanatoは、私の幼馴染だ。お隣さんで、引っ越してきた時期も同時期。最初は引っ込み思案で、人見知りが激しかった奏斗と一緒に遊ぶ
last update最終更新日 : 2025-12-02
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2話
奏斗の出ている番組が終わって、どれくらい時間が経っただろうか。 夜ご飯も済み、お風呂も入って、明日の大学の授業の準備も終えて。 ベッドに入ろうか、とした頃。 私の家のインターホンが鳴った。 1階の玄関の方から、お母さんの嬉しそうな声と、お父さんの「テレビ見てたよ。おめでとう」と言う声が聞こえた。 次いで、私の部屋がある2階の階段を上ってくる足音が聞こえた。 私の部屋の扉がノックされた。 「香月。帰ってきた。……香月ー?」 「……」 私は、寝た振りをしよう、と決め込む。 布団を頭の上まで上げて、返事をしないでいれば諦めて帰ってくれるか、下のリビングでお父さんやお母さんと話すかな、と思った。 だけど。 ガチャリ、と扉が開く音が耳に届いた。 「香月。寝てるのか……?」 ぎしり、とベッドが沈む。 私の耳には、さっきテレビから聞こえてきた声が届いた。 低くて、甘い声。 私は、頭まで被った布団の中で呟いた。 「勝手に入って来ないでよ……」 「なんだ、やっぱり起きてるじゃん。どうした?具合悪い?」 「──ちょっ、勝手に捲らないで!」 ばさり、と頭まですっぽりと覆っていた布団が、あっという間に取り払われてしまう。 薄暗い私の部屋で、間近にあった奏斗の顔。 暗いはずなのに、奏斗がキラキラと輝いているように見える。 「ははっ、眠くて機嫌悪いの?ただいま、香月」 「……お帰り、奏斗」 ん、と言って私を抱き起こした奏斗は、ふと疲れたような表情を浮かべた。
last update最終更新日 : 2025-12-03
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3話
「明日も大学だろ?長居しても悪いし、そろそろ俺も家に帰るよ」 奏斗は、自分の腕時計を確認して部屋の扉に向かって歩いて行く。 そして、そこで思い出したようにふと私に振り向いた。 「そうだ。明日、1日丸々オフなんだ。大学終わる時間分かったら連絡して。迎えに行く」 「──オフなの!?分かった、連絡するっ!!」 奏斗の言葉に、私はさっきまで感じていた寂しさとか、告白をまた流されてしまった悲しさなんてどこかに行ってしまって、がばりと起き上がった。 私の行動に、苦笑いを浮かべた奏斗が「うん」と頷いて、ひらひらと手を振って部屋を出て行った。 階段を降りる足音が聞こえて、そしてお母さんとお父さんに「お邪魔しました」と言っている声が聞こえた。 暫くしてから、隣の奏斗の家。 奏斗の部屋の明かりがついた。 私は、明日の事を考えると嬉しくて嬉しくて。 奏斗が丸1日オフなんて、数ヶ月ぶりだ。 明日は、ずっと奏斗と一緒にいられる。 そんな日に、大学があるなんて、と少し惜しい気もするけど、勉強は好きだし、就職したい会社のために勉強は大事。 来年には就活にだって入るから、大学はちゃんと通わないと。 だけど、私は嬉しくて昂った気持ちのせいで暫く眠りにつけなかった。 翌朝。 大学に行く前に、隣の奏斗の家に行く。 奏斗のご両親は、仕事で世界中を飛び回っている人達。 だから今、奏斗の実家には、奏斗1人だけしかいない。 私は渡されていた合鍵を使い、家に入って階段を上っていく。 奏斗の部屋も、私と同じように2階にある。 まだ、奏斗が芸能界に
last update最終更新日 : 2025-12-03
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4話
大学。 私は、午前中の授業を終え、奏斗に連絡をする。 迎えに来てくれるって言ってたけど、連絡を送ってから、今さら本当に大丈夫か、と心配になってしまった。 奏斗は、背も高いしオーラもある。 いくら変装をしていても、芸能人だって言う事がバレてしまうかもしれない。 やっぱり、断ろうか。 そう思ったけど、私のスマホが通知を知らせる。 送信者は、奏斗。 私が送った連絡に、奏斗から「了解」とだけ返事が返ってきていた。 「やっぱり迎えにこなくていいよって言いにくいな……」 私がそんな事を呟いていると、私の名前が呼ばれた。 「香月ー?どうしたの?お昼行こうよ!」 「──っ!うん、すぐ行く!」 友達から声をかけられた私は、トートバッグを肩にかけて慌てて友達に駆け寄った。 昼食を摂るために向かった先は、大学の学食。 友人数人とテーブルに集まった私は、頼んだお昼ご飯を口に運びながら、友人達の話に耳を傾けていた。 「ねえ、昨日の授賞式見た!?もう本当やばい!」 「見た見た!色気半端なかったよね!」 「もー、あの流し目ほんっとえっちだったぁ〜!」 きゃあきゃあ、と友人達が黄色い声を上げつつ、昨日のテレビの事を話している。 普段だったら、私もその輪の中に入るんだけど、何だか今日はそんな気分になれなくて。 私がもそもそと箸を動かしていると、友人の1人が私に話を振ってきた。 「ね、香月も勿論リアタイで見てたんでしょ!?」 急に話を振られ、私はご飯をごきゅり、と飲み込んでしまう。 変な所にご飯が入ってしまって、慌てて
last update最終更新日 : 2025-12-04
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5話
大学の友人達を疑っている訳じゃないんだけど、実際奏斗からも大学での知り合いには言わないで、と釘を刺されているし仕方ない。 そんな事を考えていると、一緒に食べていた友人の中の1人が、突然悲鳴を上げた。 「やだっ、最悪!また熱愛報道出てるーっ!!」 「──ぇっ」 友人のその言葉に、私は一瞬頭の中が真っ白になった。 まさか、Kanatoが? そう考えた私は、急いでエンタメニュースや芸能ニュースを確認する。 悲鳴を上げた友人は、Kanato推しだ。 そんな彼女が悲鳴を上げるって事は、Kanatoに関するニュース……。 私は、ニュースを探す自分の手が震えているのに気付いた。 心臓も、どくどくと嫌な鼓動を刻んでいる。 そして、その熱愛報道の記事は、簡単に見つかった。 【 nuage(ニュアージュ)のKanato、人気モデル美女と深夜に密会!?】 と、大々的に報じられていた。 嘘でしょ? 深夜に、密会…? 2人が寄り添って、仲睦まじ気に、モデルのマンションに、消えた? 朝まで、Kanatoがマンションから出てくる事は無かった…? 記事の文章を読んで行く内に、私の手の震えは増して行く。 指先もどんどん冷たくなって行くし、ご飯なんてもう喉を通らなくなる。 今まで、奏斗に熱愛報道が出ても、こんな風に書かれる事はなかった。 せいぜい、体を寄せ合っている、とか。 その程度で。 それなのに、今回はマンションに……?しかも、朝まで出てこなかった、って。 つまり、奏斗は。 そこまで考えてしまった私は、視界がじわりと涙で滲んでしまう。 こんなに、好きなのに。 いつも本気でとってくれない。 告白しても、知ってるって返されるだけで。 私の気持ちは報われないのに、いつまで奏斗を好きなんだろうか。 もう、いい加減に現実を見なさいって言う事なのかな。 でも、ずっと好きだったから、今さら奏斗の事、好きなのを止めるなんてできないし──。 ぐるぐると色んな事を考えて。 考えている内に、その日の大学の授業はいつの間にか全て終わっていた。 いつ、学食から戻ってきたのかさえも分からない。 のそのそ、と授業で
last update最終更新日 : 2025-12-04
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6話
大学の門を出て、数歩歩いた時──。 「ちょっ、香月……っ、何帰ろうとしてんだっ」 「ぇ……?」 小声で話しかけられ、腕を掴まれる。 ぐっ、と腕を引かれて立ち止まると、目の前には帽子を目深に被り、黒いマスクをした奏斗の姿があった。 私がびっくりしている事に気付いた奏斗が、おいおい、と呆れたように続ける。 「まさか、俺が来るって事忘れてた?連絡もしてたのに」 少し不貞腐れたように頬を膨らませているのがマスクをしている上からでも分かる。 「昔から香月はおっちょこちょいだよなぁ。なに?何かあった?」 それで、俺との約束忘れてたんだろ、と笑う奏斗に私は手を引かれながら彼を見上げる。 私の手はしっかりと奏斗の手に包まれて、先を歩く奏斗に引っ張られている。 強引だけど、昔から変わらない奏斗の優しさ。 困ったように下がる眉尻。 笑うと目が細くなる姿。 どこも、変わらないのに。 昔から知っている奏斗なのに。 私はぐっと唇を噛み締めて、繋がれていた奏斗の手をそっと払った。 「──は、?香月──」 「奏斗、大学なんかに来ちゃ駄目じゃない。……熱愛報道、出てるんだから……記者に撮られちゃうし……その、彼女さん、が誤解しちゃうよ……」 自分で紡いだ言葉に、自分で傷付く。 奏斗は、私の事をただの幼馴染だと思っているかもしれないけど。 ……私は、奏
last update最終更新日 : 2025-12-05
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7話
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!だ、誰と誰が熱愛だって……!?……は?食事会の移動を撮られてた……!?」 奏斗の戸惑いの声が上がる。 何が何だか、と言うように奏斗は唖然としていて。 それからも、電話相手と何かを話していた奏斗は、暫くして疲れたように電話を切った。 少し乱暴な手つきでスマホをしまうと、合点がいったように何度か頷いてから、私に顔を向けた。 「香月。もしかして、さっき言ってたのって……この熱愛報道の事?」 奏斗は確信を得たように聞いてくる。 奏斗も、知らなかったのだろう。だけど、それを今の電話で知ったらしい。 奏斗も知ったのなら。 否定する事でもない。 私はこくり、と1つ強く頷いた。 「……うん。だから、こんな風に私と一緒に居る所を万が一撮られたらって、思って……」 私の言葉に、奏斗は小さく息を吐いてしっかり私と目線を合わせた。 「あの熱愛報道は、完全なでっちあげだよ。食事会に行く道中で、食事会に参加するモデルの子と一緒に並んで歩いてただけ。それを……」 奏斗は私にそう説明しながら、自分でも熱愛報道の記事を確認しているのだろう。 記事内容を確認している奏斗の眉間が、不愉快そうに寄った。 そして、吐き捨てるように告げる。 「……こんな、ありもしない事だ。こんな記事を香月が気にする必要はないよ。マネージャーから連絡があったけど、この後事務所がはっきり否定の文章を出すって」 「そう、なの……?」 私が、ついつい不安そうな声を出してしまうと、目の前にいた奏斗がふはっ、と表情を崩して笑う。 そして、私を安心させるようにそっと頭を撫でてくれた。 「そうだよ。こんなのは嘘だし、俺に彼女なんかいない。香月が記事を気にする必要なんかないよ」 「……そっか、そう、なんだ」 「うん。そうだ、タクシー呼ぶから家に帰ろう?大分遅くなっちゃったな」 奏斗に、彼女はいない。 奏斗本人が、そうきっぱりと否定した。 私は、ようやくほっとして、タクシー配車アプリを操作する奏斗に近寄った。 奏斗は、慣れたように私の体を自分の腕で引き寄せて、後ろから軽く抱きしめる。 「香月のお母さんが今日は仕事で遅くなるって。晩御飯は適当に頼んでって言ってたけど、どうする?」 「でも、奏斗は外に
last update最終更新日 : 2025-12-05
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8話
「ただいまー」 「お邪魔します」 玄関を開けて中に入る。 私は、ただいま。奏斗はお邪魔しますって言葉を同時に口にする。 奏斗は慣れたように靴を脱ぎ、廊下を通ってリビングに行く。 私は着替える前に、洗面所に向かう。 手を洗いながら、リビングにいるであろう奏斗に向かって、声をかけた。 「奏斗ー!帰ってきたら、手洗ってー!私、着替えてくる!」 「分かったー」 リビングから、のんびりとした奏斗の声が返ってきた。 特にそれ以上奏斗に言う事はせず、私は自室に向かうために階段を上がって行く。 リビングからは、奏斗がテレビをつけたんだろう。 テレビの音が聞こえてくるけど、私はそのまま部屋に入り扉を閉めた。 部屋で部屋着に着替え、私はスマホだけを手にして階段を降りて、リビングに向かう。 すると、ソファに座り、スマホを操作していた奏斗が私が降りてきた事に気づき、ぱっと顔を上げた。 「香月。帰って来て早々、悪いんだけど……」 「はいはい、お腹が減ってるんでしょ?夜ご飯の前に何か……」 私はそう返しながら、戸棚の中を確認する。 戸を開けると、ホットケーキミックスの袋を見つけた。 牛乳も、卵も確かあったはず。 私は奏斗に顔を向けて続けた。 「ホットケーキでもいい?」 「じゅーぶん!お願いします」 嬉しそうに笑う奏斗に、ついつい私も笑みが零れてしまう。 邪魔になるから、と私は自分のスマホをリビングのテーブルに置いて、ホットケーキを作る事にした。 私がキッチンに立ち、奏斗はそわそわと待ちきれないと言うようにこちらを見ているのを感じ
last update最終更新日 : 2025-12-06
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9話
ホットケーキを作り終わった私は、コンロの火を消す。 お皿の上に乗せられたホットケーキは、ふわふわで、上手く膨らんでいる。 きつね色に焼けてて、美味しそうな香りが漂ってきていてその匂いを嗅いでいると、私までお腹が空いてきた気がする。 バターとハチミツを用意して、奏斗が待ってるだろうリビングに振り向いた。 「──わっ!」 振り向いた先に、奏斗が立っていた。 何も言葉を発さずにそこに立っていた奏斗の姿に、さすがの私も驚いてしまった。 バクバク、と心臓がけたたましく音を奏でている。 「び、びっくりしたー……。奏斗、どうしたの?何かあった?」 「香月……、スマホに連絡来てたみたいだ」 「え?本当?ありがとう!」 もう、声をかけてくれて良かったのに!と喋りながら奏斗から差し出されたスマホを受け取って、変わりにホットケーキの乗ったお皿を奏斗に渡す。 お皿を受け取った奏斗は、リビングに戻らずに、じっと私を見つめてきて。 どうしたのだろう?と私が首を傾げると、そこでようやく奏斗は「ありがと」と言ってからリビングに戻って行く。 私も自分のホットケーキが乗ったお皿を手に、リビングに戻る。 テーブルにお皿を置いて、私は奏斗から渡されたスマホを確認する。 連絡が来てたって言ってたけど、なんだろう。 画面を開いて、タップする。 すると、そこには──。 「……えっ」 まさか、合コンのお誘いがあるとは思わなかった私は、その連絡を見てぎょっとして目を見開いてしまった。 そして次に、この連絡を奏斗が見ちゃったのだとしたら。 それで、さっきは少し様子がおかしかったの。 ほんの少しの、期待。 もしかしたら、奏斗はこの連絡を見て、嫌だと思ってくれたんじゃあ……。 そう考えていた私に向かって、前の席に座っていた奏斗がホットケーキを切り分けながら口を開いた。 「香月、ごめん。さっきちらっと通知が見えちゃったんだけど……。見る気は無かったんだよ」 「えっ、あ……いや、大丈夫だよ」 やっぱり、奏斗は合コンの連絡が来ているのを見ていたんだ。 見えてしまったんだ。 ほんのちょっとの後ろめたさ、と。 ほんのちょっとの期待感。 奏斗が、合コンなんて行くな、って言ってくれるかも、と言う微かな期待がむくむくと湧き上がってくる。 だけど、そんな私の期待を嘲笑う
last update最終更新日 : 2025-12-06
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10話
「その、本気じゃないだろ?俺たち子供の頃からずっと一緒だったし……今さら、そんな……」 奏斗の言っている言葉が、理解できない。 理解、したくない。 私の告白を、奏斗は今まで本気にしてなかったんだ。 子供の頃からずっと一緒にいるから。 だから「好き」って言う感情も、それは本当じゃないって思っているんだ。 だから、私の気持ちが本気だった。それが今分かって、奏斗は気まずそうにしているの。 何だか、かくんと体から一気に力が抜けてしまう。 「そう、だね……今さら、だね……」 「そうだよ。俺たちの間に、そんな……」 私の言葉を聞いた瞬間、奏斗があからさまにほっとしたような様子になる。 そして、奏斗の安心したような様子に私は。 「うん……十分、気をつけるよ。変な人には引っかからないようにする」 「──ぇ、」 「私も、大学生だしね……。Kanatoばっかり追いかけてないで、彼氏も作らなくちゃ」 にこり、と無理矢理笑みを作って私がそう言うと、奏斗は何とも言えない表情を浮かべた。 それから、私と奏斗は。 表面上は普段通り。 時折、奏斗から探るような視線を向けられているのは分かっていたけど。 私はこれ以上、奏斗から突き放される事が怖くて。 私の気持ちを否定されるのが、怖くて。 気付かない振りをして、一緒に夕食を食べて、夜には別れた。 奏斗は隣の自宅に。 私は、2階の部屋に戻る。 奏斗を見送って、部屋に入った途端。 私の足からは、力が抜けてずるずるとその場にしゃがみこんでしまう。 「嘘、でしょ…
last update最終更新日 : 2025-12-07
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