義理の妹・内田澪(うちだ みお)の機嫌を取るため、兄の内田翼(うちだ つばさ)は私がずっと憧れてた東都美術大学の合格通知書を、地方の教育大学のものとすり替えた。見慣れない校章の書類が、やけに目に刺さる。そんな書類を目にした親戚たちは顔を見合わせ、すぐにひそひそと話し始めた。「どういうこと?玲奈(れな)は、東都美術大学に受かったんじゃなかったの?」「まあ……教育大学も悪くはないけど、東都美術大学とはレベルが違いすぎるわね」私は服の裾を握りしめて立ち尽くす。頭が真っ白になって、何も考えられない。そんな私に翼が近づいてきて、肩をぽんと叩きながら、困ったような声で言った。「玲奈。澪はさ、大学の共通テストに失敗して何日も泣いてるんだ。それに、澪はアートが好きだけど、お前みたいな才能はないだろ?だから、兄としても辛いんだよ。今回は澪に譲ってくれ、な?あいつを元気づけるためだと思ってさ。そんな心配するなって。これは形だけのことだから。入学までには、ちゃんと元に戻してやるからさ。それに、この家の人間が、お前をあんな将来性のない大学に本気で行かせるわけないだろ?」しかし、リビングは静まり返り、空気は凍りついていた。みんなの視線が、私の手の中にある薄っぺらい合格通知書に注がれる。お茶を飲もうとした叔母がその手を途中で止め、湯呑みの中のお茶がかすかに揺れた。「こ……この大学って……南山市教育大学?東都美術大学と南山市教育大学じゃ……あまりにも違いすぎるでしょ」「教育大もいい学校よ」すかさず伯母が無理に笑顔を作って、その場を取り繕う。「女の子が先生になったら、安定するし」私は顔を上げた。視線を見慣れない通知書から翼の顔へ、そしてその隣にいる私の恋人である小川祐介(おがわ ゆうすけ)へと移す。指の関節が白くなるほどの力で紙を握りしめ、かすれた声で、私は言った。「私の志望校……お兄さんが変えたんでしょ?」翼は私の視線を避けると、グラスを一気に煽った。ごくりと、喉仏が上下する。「ああ、俺だ」グラスを机に置くと、翼は少し苛立ちを含んだ口調で話し始めた。「澪がお前の東都美術大学合格を知ってから、自分はダメだったて落ち込んでさ。何日もご飯すら食べずに泣いてたんだよ。だから、仕方なかったんだ。まずは澪を元気づけな
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