俺は、人生で初めて土下座をした。(最短で信頼を取り戻すなら、これしかないと思った) 形式も、言葉も、全部捨てる。 ”誠意《せいい》だけを見せる”ーーそのはずだった。 そして、その謝罪は思うようには進まなかった。 過去、別の人物への謝罪時、他の手段は上手くいかなかったからだ。 言葉で謝っただけだと、何か裏があるのではないかと疑われ、贈り物を送ったら、印象操作だと思われてしまった。 だからこそあの日は、土下座しか手段が残されていないと思っていた。 そして行った。(段取りも、時間も、言葉も) 現実は上手くいかなかった。「いや、違うな。完璧だった”つもり”なだけだ」 だからこそ、だろう。 とある”成功例”を、俺は知っていた。 だがそれは、物語の中の話だった。 それをあの日、痛感《つうかん》することになった。 時間を空ければ、その分だけ疑いは強くなる。 なら、間を置かずに動くべきだ。 ーーそう判断した。 馬車がとある屋敷の前で停まった。 俺はゆっくりと馬車から降りて、玄関へと向かっていく。 従者はいない。 ペトリコールの匂いが鼻に入ってくる。 雨が降らなければいいが。 扉の前に着いたら、扉を叩いて開くのを待った。「どちら様でしょうか」 この家の使用人が出てきた。 俺の顔を見ても、見当がついていない様子だった。 使用人は扉を開けた瞬間、わずかに後ずさりして問いかけてきた。「レオポルドだ」「え?」 突然言ったからか、気づいていないようだった。「シュナイエ王国、王太子だ」 ”王太子”と言った瞬間、扉の向こうは空気が変化する。 使用人が息を飲んでいるようだった。「お、王太子殿下……大変失礼いたしました」 使用人の謝罪の後に一瞬だけ静寂《せいじゃく》が訪れる。 そして、使用人は驚きながら俺を見ていた。「ほ、本日は、その?」 静寂が破れたのは、使用人の緊張しながらの問いかけだった。「ユリアナ嬢に会わせてほしい」 彼女は公爵令嬢《こうしゃくれいじょう》で、この屋敷に住んでいる。 俺の目的は彼女だった。(ここで言う。理由も全部) そう決めていたはずなのに。 喉が、ひどく乾いている。 言葉を思い浮かべるたびに、何かが引っかかる。 ーー言えば、終わ
Last Updated : 2026-01-24 Read more