俺は、人生で初めて土下座をした。 そして、その謝罪は思うようには進まなかった。(段取りも、時間も、言葉も) 現実は上手くいかなかった。「いや、違うな。完璧だった”つもり”なだけだ」 だからこそ、だろう。 とある”成功例”を、俺は知っていた。 だがそれは、物語の中の話だった。 それをあの日、痛感することになった。 馬車がとある屋敷の前で停まった。 俺はゆっくりと馬車から降りて、玄関へと向かっていく。 従者はいない。 ペトリコールの匂いが鼻に入ってくる。 雨が降らなければいいが。 扉の前に着いたら、扉を叩いて開くのを待った。「どちら様でしょうか」 この家の使用人が出てきた。 ただ俺の顔を見ても、見当がついていないようだった。 まあ、当然だろうな。「レオポルドだ」「え?」 突然言ったからか、気づいていないようだった。「シュナイエ王国、王太子だ」「お、王太子殿下……大変失礼いたしました」 俺がそう言ったら、謝罪の後に一瞬だけ静寂が訪れる。 謝罪の後、使用人は驚きながら俺を見ていた。「ほ、本日は、その……?」 静寂が破れたのは使用人の緊張しながらの問いかけだった。「ユリアナ嬢に会わせてほしい」 彼女は公爵令嬢で、この屋敷に住んでいる。 俺の目的は彼女だった。「分かりました、中へ」 俺は使用人に案内されて、客間へ。「王太子がお越しになられたって!?」「紅茶をすぐに用意しなさい!」 侍女がバタバタと慌てている。 すぐにカップに淹れられた紅茶が出される。 湯気が立っていて、香りが鼻に入ってくる。 だが飲んでいる余裕はない。 椅子に座りながらユリアナ嬢がやってくるのを待っていた。(ここで失敗するわけにはいかない) 時計の針が動く音だけが耳に入ってくる。 後は俺の深呼吸の音だけ。(完璧にしないとな) タイミングを間違えたら失敗する。(俺は”正しいこと”をしに来た)「お待たせしましたわ」 しばらくして、やってきたのは、ユリアナ・フォン・ルイッツホーフ。 前に見たときと変わらない姿をしている。 ドレスを着ていて麗しい。「ユリアナ嬢」「殿下、本日はどういった……」 俺は彼女の言葉を言い終わらないうちに、床に両手と膝をつけて、頭も床につくくらい身
Last Updated : 2026-01-24 Read more