LOGIN王太子に転生した男子高校生・レオポルトは、判断疲れの末に悪役令嬢ユリアナとの婚約を破棄する。 これで全て解決した――はずだった。 だが、なぜか心は晴れず、王都で彼女の姿を見た瞬間、前世の記憶と「推し」だった事実を思い出してしまう。 後悔に突き動かされ、彼は最大級の謝罪として“土下座”を選ぶが、この世界にその意味は存在しなかった。 一方、土下座の意味を知るヒロインが騒ぎ立てたことで、転生者であることが露呈し、事態は思わぬ方向へ。 誤解と文化差が連鎖する中、王太子は本当に守りたいものを選び直すことになる。
View More「レオポルト殿下、ちょっとよろしいでしょうか?」「どうした?」 ある日、クレアがが話しかけてきた。 俺は彼女と二人きりで話し合うことに。 他の人物に聞かれるのは問題あるから。「私、怖かったんです」「何がだ?」 すると最初、クレアは俯きながら、言い淀んでいた。 少しずつ涙を流して、ぽつりぽつりと言葉を発していく。 明らかにただ事じゃ無い。「責められている気がして。私が、ここにいてはいけないみたいで……」 とても悩んでいて、かなり辛そうにしている。 彼女はどうしてここまで。「誰に?」「ううん、私の思いすぎかもしれませんが。空気がどうしても怖い感じで」 確かにそう思うことはありえるだろう。 気まずい気持ちが、自分を追い詰めてしまうというのが。「気にしすぎるな。大丈夫だ」 クレアに優しく言って、落ち着かせようとする。「私、殿下のお邪魔でしたか?」「そんなことはない」 クレアがいてくれるだけで、俺の公務だって少しは楽になっている。 心だって安心できるからな。「でも、”身の程を知れ”って言われている気がして……」「それってーー」 完全に一人しか思いつかなかった。 ーー思いついてしまった時点で、答えは決まっていた。「ち、違います! あの方は私のために言っているのです!」 彼女は正しいことを言っている。 いじめてはいないかもしれない。「だが」「私よりも殿下が感情的にならないでください。私のために殿下が動いては、国が大変なことになります」「……クレア」「私がここにいるかどうかより、国の方が大切です」 クレアは俺を必死に
あの時の俺は、あれが最善の判断だと、本気で思っていた。 時間は数週間前に戻る。 いつものように公務が忙しかった。「この部分だが、君はどう思う?」 俺は王都にあるシュナイエ王国の王宮において、クレアに意見を求めた。 資料の確認をするためだ。「私は、殿下のご判断が最善だと思います」「そうか」 クレアは決断をしなかった。 俺の判断が正しいと言ってくれた。 それは嬉しくもある。 安心できるからだ「君の意見で確信が持てた。ありがとう」「いえ、殿下の考えは正しいですから。あなたは王太子ですので」「王太子、か。確かにな」 俺はちょっとクレアに笑みを見せる。 すると彼女も微笑み返した。「ふふ、そういったところ、魅力的です」「そう言ってくれると嬉しい」 クレアは肯定的に捉えてくれる。 それが俺の心を惹きつけた。 婚約者がいるのにな。 クレアは、迷うことそのものを否定しなかった。 それが、俺にはありがたかった。「そうだよな」 俺は彼女に対して、そう呟いた。 だからこそ、意見を訊くんだよな。(俺だって迷うよな)「クレア、ちょっと良いだろうか?」 何日かして、彼女に意見を求めた。 ちょっと遠慮がちに。「迷われていますのね」「ああ」 彼女は俺の様子を察して、優しく微笑んでいた。 少々安心する。「俺だってただの人間だからな」 先日クレアに言ってくれた事を返した。「勿論ですよ。迷われるのは、真剣だからだと思います」 クレアは頷きながら俺の事を肯定してくれる。「私としてはーー」 そして意見を言ってくれた。 俺は楽になった気持ちになる。「ありがとう。つっかえていたものが取れた気分だよ」
王宮に帰る途中、さらに雨脚は強くなっていた。 それでも俺は馬車の中だったのもあって、濡れることは無い。 馬車で来て良かったな。 俺は馬車の中で椅子に座って、考えてみることにした。 揺れる車内、それでも考える余裕は充分にある。「……失敗した」 ユリアナ嬢は謝罪を受け取らなかった。 拒絶して、『帰りなさい』って言われた。「だが、謝罪そのものが間違っていたわけじゃない」 ”謝罪は不要”って言われたわけじゃない。 受け取る準備はユリアナ嬢にもあった。 俺の準備が悪かっただけ。『はっきりとわたくしに理由をお伝えください』 ユリアナ嬢はそう言っていた。 だから受け取ってくれなかったのは、そこにある。「問題は、説明不足だ」 理由をちゃんと伝えられなかった。 それが敗因。 誰だって理由が分からなかったら、困惑する。「つまりーー説明すればいい」 ちゃんとユリアナ嬢に説明すれば、受け取ってもらえる。 許してもらえるだろう。 そうすれば、完璧だ。 馬車は王宮に着いて、そのまま中に入っていく。「殿下、お帰りなさいませ」 王宮に入ると、作業補助をしている青髪のクレア・ユングホルツと出会った。 彼女は長い間、王宮での仕事をしている。 ある程度は信頼が出来る。「出迎え、ありがとう」 軽く感謝して王宮内を歩いていく。「顔色があまりよくありませんね」 彼女は俺を見て、そう優しく言い表していた。 そう見えるのか。 確かにな、謝罪が上手くいかなかったから。「謝罪が上手くいかなかったんだ」 クレアは俺がどこへ何をしたのか知らない。 簡単に結果だけを伝えた。「あまり誠
俺は、人生で初めて土下座をした。 そして、その謝罪は完全に失敗した。(完璧だったはずだ。段取りも、時間も、言葉も) 俺はそう思っていたのだが、現実は上手くいかなかった。「いや、違うな。完璧だった”つもり”なだけだ」 だからこそ、だろう。 とある”成功例”を、俺は知っていた。 だがそれは、物語の中の話だった。 それをあの日、痛感することになった。 馬車がとある屋敷の前で停まった。 俺はゆっくりと馬車から降りて、玄関へと向かっていく。 従者はいない。 ペトリコールの匂いが鼻に入ってくる。 雨が降らなければいいが。 扉の前に着いたら、扉を叩いて開くのを待った。「どちら様でしょうか」 この家の使用人が出てきた。 ただ俺の顔を見ても、見当がついていないようだった。 まあ、当然だろうな。「レオポルドだ」「え?」 突然言ったからか、気づいていないようだった。「シュナイエ王国、王太子だ」「お、王太子殿下……大変失礼いたしました」 俺がそう言ったら、謝罪の後に一瞬だけ静寂が訪れる。 謝罪の後、使用人は驚きながら俺を見ていた。「ほ、本日は、その……?」 静寂が破れたのは使用人の緊張しながらの問いかけだった。「ユリアナ嬢に会わせてほしい」 彼女は公爵令嬢で、この屋敷に住んでいる。 俺の目的は彼女だった。「分かりました、中へ」 俺は使用人に案内されて、客間へ。「王太子がお越しになられたって!?」「紅茶をすぐに用意しなさい!」 侍女がバタバタと慌てている。 すぐにカップに淹れられた紅茶が出される。 湯