【書記官 ジュゼッペ視点】「外務卿《がいむきょう》、お呼びでしょうか」 この日の昼下がり、私は外務院《がいむいん》に呼び出された。 どうしたのだろうか。「モンペリエ王宮書記官《おうきゅうしょきかん》、突然ですまない。実は、外交文書《がいこうぶんしょ》がルイッツホーフ公爵家宛《こうしゃくけあて》に送られてね」 ルイッツホーフ家。 我が王国でも有力な公爵家。 その令嬢《れいじょう》であるユリアナは、先日まで王太子《おうたいし》であるレオポルド殿下《でんか》の婚約者《こんやくしゃ》だった。「何か問題があったのでしょうか」 王家から出された国内の公爵《こうしゃく》や侯爵《こうしゃく》宛の外交文書は、外務院を通して出される。 それ自体は問題ない。「ああ。その外交文書は、レオポルド殿下《でんか》から公爵令嬢《こうしゃくれいじょう》のユリアナ嬢|個人《・・》へ届けられていてね」 婚約破棄した関係であるが、何故個人宛に外交文章が。 確かに何か問題が起きている可能性がある。「先程、ルイッツホーフ家使用人のサルチャク・ウール氏より、外交文書から私信《ししん》への取り下げを要請してきた。回答は公爵家の規則《きそく》に則《のっと》って明朝《みょうちょう》までにすると」 外交文書を私信にしてほしい? どういうことなんだ。「封筒は外交文書用だったし、王家の正式な印も押されていた。だから、そのまま送ったんだが」 もしかして間違えたのだろうか。 実物を見ていないので分からないが。「侍女のレーナ・ニコシアが、封筒と印から判断して届けたらしい」 変に質問しないよな。 完璧に形が決まっているなら、信じるだろう。「殿下に状況を確認して、こちらに伝えてほしい」「分かりました」 面倒《めんどう》なことになったな。 だがやらないと。(形式だけが先に走る。それが一番、厄介《やっかい》だ) とりあえず王宮
Terakhir Diperbarui : 2026-05-01 Baca selengkapnya