息子の哲也(てつや)が幼稚園から拉致された。見つかった時、彼の小さな体には時限爆弾が仕掛けられていた。私は安井薫(やすい かおる)。夫の伊藤一輝(いとう かずき)は、全国トップクラスの爆発物処理の専門家だ。一輝は急いで現場に駆けつけた。私は車内で、モニター画面をじっと見つめていた。画面には、頭に粗末な麻袋を被らされ、全身が激しく震えている哲也が映っている。一輝の初恋でありアシスタントでもある夏目奈々(なつめ なな)も現場に入っていた。彼女は爆弾処理に行きたいと言い出した。「一輝さん、私にも爆弾処理を手伝わせて!私だって、一輝さんのように人を助けたいの!」一瞬の沈黙の後、一輝は優しい微笑みを浮かべた。「落ち着いて。赤い線を切ってくれ。万一の時は、俺が責任をもつ」奈々は覚悟を決めたように、ハサミを手に取った。一瞬のためらいもなく、彼女はあの青い線を切った。次の瞬間、爆弾のカウントダウンが、10分から一瞬で残り10秒へと切り替わった!一輝と奈々は表情を一瞬で変え、パニック状態でその場から逃げ出そうとした。私は焦り、哲也の元へ駆け寄ろうとした。その時、小さな手が私の裾を引っ張った。「ママ……パパが翔太(しょうた)をきっと助けてくれるよね……?」ふと我に返ると、なんと私のそばに、哲也が立っていることに気づいた。突然、今朝哲也が言ったことを思い出した。「ママ!翔太が今日、どうしても僕と服を交換したいって言うんだ。僕の服の方がかっこいいって!」翔太は奈々の息子、つまり哲也の腹違いの弟である。……去年、一輝の初恋の人、奈々が海外から帰ってきた。彼女の傍らには、一輝によく似た目元の少年がいた。これが原因で、一輝と激しい喧嘩になった。だが一輝は冷たい口調で、ただこう言った。「あれは、数年前に奈々に提供した精子で生まれた子供だ。俺と奈々の間には何もない!勝手に推測するな」この家庭のため、そして哲也にせめてもの幸せな子ども時代を送らせたいと思い、私は耐えてきた。しかし、彼らはつけあがる一方だった。一輝はコネを使い、奈々を爆発物処理班に入らせた。奈々はさらに、翔太を哲也が通う幼稚園にまで入園させた。子供の送迎時、奈々は毎回、敵意むき出しの視線を向けてきた。私
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