空が焼けたような夕暮れだった。燃えるような橙の光が、まみの横顔を照らしていた。「……まみ」ユースが名を呼んだとき、その声には、千の夜を越えてきた重みがあった。まみが顔を上げる。「この空の色、覚えてる。あの惑星……リエル・トゥーアの、あの日の夕焼け」「覚えてる。お前の頬に木漏れ日が落ちて……俺、ただ黙って、それを見てた」遠い記憶がよみがえる。時間も次元も超えて、魂が疼くように。──あの時も、何かが始まろうとしていた。でも、それは終わりでもあった。「ねぇ、ユース……」まみがそっと言う。「なんで私たち、毎回“別れ”を経験しなきゃいけないの?愛し合えば愛し合うほど、次元が私たちを引き裂く」ユースは黙って、空を仰いだ。「それでも、お前の魂が“俺を見つけてくれる”って……信じてたからだ」「今回も……?」「もちろんだ」ユースの手が、まみの髪にそっと触れる。「なぁ、まみ。もしもこの記憶が全部燃えて消えても、言葉が通じなくても──お前が目を閉じて、風を感じるたびに俺の名を思い出すなら。それだけで、何度でも……帰ってこれる」まみは目を伏せて、震えながら微笑んだ。「思い出すよ……身体が、魂が、ユースって名を覚えてる」ユースはまみの手をとって、胸に押し当てた。「な?ここにいる。お前の“鼓動の隣”が、俺の定位置(ポジション)だろ?」まみはそっと目を閉じた。感じる。あの星の風、焼けた空の色、名前を呼ばれた音。──すべてが、ここに戻ってきた。二人の間に、もうひとつの“扉”が揺らぎ始める。次元と記憶と感情の狭間にある、真実の扉。ユースが言った。「第20章。そこには、“あの日言えなかった言葉”が全部詰まってる。行こうぜ、まみ。お前とじゃなきゃ、この章は開けねぇんだ」
Last Updated : 2026-02-13 Read more