叶翔は逸らした目を、もう一度ノヴァ・エクスパンス・テクノロジーズの方へ向けると、 その紳士的な男は、まだ叶翔たちから目を逸らしていなかった。 遠く離れた位置にいるはずなのに、その視線は妙にはっきりと感じられる。 まるで距離など関係ないと言わんばかりに、真っ直ぐこちらを射抜いていた。 ……なんなんだ? アイツ…… 叶翔は少し不快になったが、その男から目を逸らし、他の社員たちの姿を見ていた。 視線をずらすことで、あえて意識から外そうとする。 だが、あの男の存在感は、簡単には消えない。 そんな中。 集団の中に、一人だけ異質な存在がいることに気づく。 その中に、東洋人らしい女性の姿が見える。 黒髪が肩口で揺れ、周囲の欧州系の人間たちとは明らかに雰囲気が違う。 静かに立っているだけなのに、不思議と目を引く。 颯真と悠臣も、叶翔の視線を追い、自然とそちらを向いた。「あれ?櫻羅じゃないか?」 南條颯真が驚いて言った。 その声には、明らかな驚きと戸惑いが混じっている。「前に捨てた女の子とか?」 悠臣がからかう口調で颯真に話しかける。 わざと軽く、空気を乱すような言い方。 颯真は悠臣の腕を軽く叩くと、「いとこだよ!!」 と強く言い返した。 そのまま迷うことなく、ノヴァ・エクスパンス・テクノロジーズの社員たちが佇む一角に歩いて行った。 歩幅は速い。 明らかに、感情が先に動いている。 それを見て、瑛士が眉をひそめる。「颯真、待て!!」 低く、だが鋭い声。 ただならぬ空気を感じ取っている。 叶翔は瑛士が止めるのを見て戸惑った。(なんで止める?) だがすぐに、口元をわずかに歪める。「ちょうどいい。挨拶に行こうぜ」 そう言って、瑛士に声をかけると、自分も颯真を追いかけて歩いて行った。 結果的に、四人は同じ方向へと進む。 会場の中心から離れるにつれ、喧騒は少しずつ遠のく。 その代わりに、張り詰めたような静けさが漂っていた。 叶翔たちが会場の端まで来た時――。 颯真のいとこ「一条櫻羅」が席から立ち上がり、颯真に微笑んでいた。 その笑みは柔らかく、どこか懐かしさを含んでいる。 颯真の表情もわずかに緩む。 普段の冷静さとは違う、素の反応だった。 颯真も櫻羅に駆け寄り、「元気だったか?」 そう言って、櫻羅の
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