結婚式を翌日に控えた夜、婚約者の「女友達」である湯川優里(ゆかわ ゆり)から大量の写真データが送られてきた。写真の中で、彼女は私がオーダーメイドしたオートクチュールのドレスを身にまとい、佐藤陸(さとう りく)の胸に甘えるように寄り添っていた。添えられたメッセージは挑発そのものだ。【新郎とドレス、ちょっとだけお借りしちゃった☆陸くんが言ってたよ。『優里の方が似合う』って♪】直後、タイムラインは二人の写真で埋め尽くされた。キスをする寸前のポーズに、痛々しいポエムのような言葉が並ぶ。【友達以上、恋人未満。もし10年早く生まれてたら、他の誰かが入り込む余地なんてなかったのに】私は指先が白くなるほど、スマホを強く握りしめた。返信もしないうちに、コメント欄は二人の共通の幼なじみたちがお祭り騒ぎだった。【やっぱり優里と陸がお似合いだな!】【これぞ噂の神友情。うらやましすぎる!】【奥さんは気にしないだろ?陸の義理堅さはみんな知ってるしな】私は車の鍵をつかんで陸のマンションへ向かった。道中、この7年間の記憶が走馬灯のように駆け巡る。私、江藤恵那(えとう えな)は江藤グループの跡取り。対して陸は、起業に失敗し続ける貧乏な青年だった。陸のために親との絶縁も辞さず、グループの資産や人脈を惜しみなく注いで彼の道を切り拓いてきた。彼の母が重病を患った時も、私自身のコネで海外の専門医チームを招いた。愛を育んでいたつもりだったが、どうやら私は毒蛇を飼い慣らしているつもりで、実は噛まれていたのだと悟った。マンションのドアを開けると、陸は上半身裸のままカーペットに座り込み、ゲームに夢中だった。ドアの音に、彼は振り向こうともしなかった。一方で優里は、私を見るなり驚くどころか、挑発的に口角を上げた。「恵那さん?こんな時間に、なにか用?」陸がようやく顔を上げ、私の険しい表情を見て、不機嫌そうに眉を寄せた。「明日が式だろ。家で休んでいればいいのに、見張りに来たのか?」私は冷ややかに彼を見据え、スマホを突きつけた。画面には、あの親密な写真が映っている。「陸、これ、説明を聞かせてもらえるかしら?」陸は画面をチラ見すると、面倒くさそうにスマホをソファへ放った。「しつこいな。ただの遊びだよ、青春最後の思い出にしたかっただけ。明日には結婚するんだぞ
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