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第11話

花を残して、修平はいつも通りの向かいに立って、スタジオのドアを長いあいだ見つめていた。そんなある日、スタジオのドアにポスターが貼ってあるのに気づいた。ポスターには、カメラを手に、まぶしい笑顔を浮かべる夏美の写真が載っていた。そこにはこう書かれていた。【松井夏美撮影個展――私が見た世界。会期:来週の土曜日、午後3時から。会場:798倉庫街】修平は通りの向かい側で、そのポスターを見つめた。心臓が大きく一度、脈打った。個展の初日、798倉庫街はたくさんの人で賑わっていた。修平が着いた頃には、ギャラリーはもう人でいっぱいだった。壁にはたくさんの写真が飾られていた。人物写真、風景写真、それに街角のスナップショットもあった。どの写真の下にも、撮影日時と場所が記されていた。一番古い写真は、5年前にリバティニア市で撮られたものだった。公園の落ち葉、大きな橋から見た夕日、バイオリンを弾く老人。そして、もう一枚。白いシャツを着た男の人が、逆光の中、キャンパスの並木道に立っていた。それは、自分だった。二人が、初めて出会った日の写真だ。修平はその写真の前で、長いあいだ立ち尽くしていた。隣で見ていた二人が、小声で話していた。「この写真、すごくいいね。光の使い方が絶妙だ」「うん、このアングルと、この瞬間を切り取るところから、撮った人が本当にこの人のこと好きなんだなって伝わってくるね」修平は何も言わなかった。彼は、さらに奥へと進んだ。その先の写真になるにつれて、撮影された時期も場所も、どんどん遠くへと離れていった。翠嶺市の湖、雲嶺市の雪山、海辺の小さな漁村、都会のネオン。どの写真にも、静かな光が宿っていた。それこそが、夏美の見ていた世界だった。自分がいない、世界。ギャラリーの突き当りは、何もない壁だった。壁には、一行だけ文字が書かれていた。【かつて愛した人へ、そして、やっと見つけた私自身へ】修平はその壁の前に立ち、ふと笑みをこぼした。一度失ったものは二度と戻らないのだと、ようやく理解した自分を笑った。踵を返して去ろうとしたその時、少し離れた場所に夏美が立っていて、こっちを見ていることに気づいた。二人の視線が、交わった。夏美は修平の方へ歩いてくると、その目
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