その日は突然やってきた。俺はいつものように、理久が帰ってくるのを部屋の窓から見ていた。 今日も理久が安心して眠れますように。 俺の願いはただそれだけ。 理久への淡い恋心は、とうの昔に胸の奥にしまい込んだ。 俺は、理久の1番近くに居られればそれでいい。 理久の笑顔を守ることが俺の幸せだ。 理久は俺の事をよく〝番犬〟と呼ぶ。 上等じゃないか。 理久に寄り付くわるい虫を俺が全員追い払おう。 理久に近づいていいのは俺だけだ。 俺は敵意剥き出しで、理久の周りの男たちを排除してきた。 それはこれからも同じだ。 そう思っていた。「おい……嘘だろ……」窓から見える光景は俺の錯覚か? 理久が俺の知らない男に抱き締められている。 この瞬間、俺の淡い恋心は音を立てて崩れ落ちた。その男は誰だ? 今すぐ離れろ! 俺は窓から叫びそうになる衝動を抑えて、階段を駆け下りた。 そして、外へと飛び出し、理久の背後に立った。「理久、遅かったね」俺の声に気づいた男は、気まずそうな表情を浮かべて理久から離れた。「俺はこれで。返事は急がないから」男はそれだけ言うと、足早に駅の方へと走っていった。「さぁ、理久。話を聞こうか?」俺は理久の手首を握り、俺の部屋へと連れ込んだ。「宗介、今日はもう遅いから……」「だめだ。おばさんには、理久は今夜、俺の部屋に泊まるって連絡しておいた」俺が先回りしていたことを知った理久は、諦めたようにベッドに座った。「それで、さっきの男は?」「大学で同じ講義を受けてるひと」「ふーん。それで、返事って何?」「それは......」俺は理久の隣に座って彼を見た。 しかし、理久は気まずそうに俺から目を逸らした。「俺に言えないんだ。しつこい男なら俺が守ってやらないとって思ったんだけど」「あの、実は……告白された」「告白?」俺は理久に詰め寄り、彼を見下ろした。 折角、今日まで理久を守ってきたのに。 他の男のものになるくらいなら、いっそのこと…… 邪な考えが俺の脳を支配した。さて、理久の言い訳でも聞こうか。「でも、友達だと思ってたから、俺もどうしたらいいか分からなくて」「それで、隙見せて抱き締められたって?」理久はこくんと頷いた。「ふっ、理久は押しに弱いからね。仕方ないな」「宗介……」理久は俺の言葉に安堵したのか、顔を上げた。「なんて、俺が言う
Last Updated : 2026-04-15 Read more