Semua Bab 最期の鼓動は、あなたの結婚式を祝う花火に消えて: Bab 11 - Bab 15

15 Bab

第11話

そうすればきっと、彼も柚乃を自分の実の娘だと信じてくれるはずだ。光也はその絵を見たのは、一度だけだった。確かに、自分の画風にひどく似ていた。人物画を描く時、光也は細部へのこだわりが強かった。特に髪の毛の一本一本にまで神経を注ぐ。まるで本物のように。この絵のタッチは、まさにその手法と瓜二つだった。だが、たった四歳の子どもに、これほどの腕前があるはずがない。絵をひったくるように奪い取ると、光也は躊躇なくそれを引き裂いた。「やめ……やめて……っ」鈴夏が制止する間もなかった。無残に破れた絵の切れ端が、一片、また一片と地面に散り落ちた。まるで、砕け散った鈴夏の心のように。胸が鈍く痛んだ。鈴夏はしゃがみ込み、散らばった絵を一枚一枚拾い集め始めた。光也は狼狽する鈴夏を一顧だにせず、冷たく言い捨てた。「四歳の子供にこれほどの絵が描けるはずがない。鈴夏、どこまで人を騙そうとしているんだ」一片たりとも取りこぼすまいと、鈴夏は這いつくばるようにして地面の切れ端を拾い続けた。すべて拾い終え、そっと両手で包み込んだ時には、すでに二、三分ほど過ぎていた。どうすれば光也に信じてもらえるのか、もうまったくわからなかった。それでも、柚乃の行く先がまだ決まっていない。残された力を振り絞って、最後の説得を試みた。急いでバッグから診断書を取り出した。「光也、私は本当に癌なんです。先日まで柚乃の養親になることを承諾してくれていたご夫婦も、耳のことを理由に突然断ってきて……もう本当に追い詰められていて、あなたに頼るしかなくて。鈴野製薬の機密のために戻って来たわけじゃないんです。最近は、咳をするたびに血が混じるようになって……もう、時間がないかもしれなくて……」差し出した診断書は、光也に無情に払い落された。「鈴夏、神様は見ているぞ。自分の目的のために癌だと嘘をつくだけでも飽き足らず、実の子どもまで利用するのか。お前は天罰を恐れないのか。お前の言葉は、何一つ信じない」光也が立ち去ろうとした瞬間、膝の力が抜けて鈴夏はその場に崩れ落ちた。喉が凍りついたように声が出ず、声にならない哀願の言葉を紡ごうと、震える唇だけが動いた。その痛ましい姿は、光也の胸に確かに刺さった。それでも過去の残酷な裏切りを思い返すと、決して心を緩める気にはなれ
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第12話

死にたいなんて、あるはずがなかった。一日でも、一分でも、長く生きていたかった。柚乃が描いてくれた絵は、今の彼女にとって命と同じくらい大切なものだった。その絵を、光也が引き裂いた。深夜、柚乃の寝息が深くなったのを確認してから、鈴夏は静かに起き上がり、バラバラになった破片を一枚ずつ繋ぎ合わせ始めた。幸い、一片も欠けてはいなかった。でもテープで繋ぎ合わせた絵は、皺だらけで、痛々しい有様だった。どうしても元通りにはならない。柚乃が一生懸命に描いてくれた絵だ。まだちゃんとした額縁にも入れていないのに、光也にこんな無残な姿にされてしまった。まるで、柚乃のこれからの人生のようだと思った。どれだけ母親として頑張っても、あの子に真っ当な幼少期も、人並みの人生も、与えてあげることはできない。自分が死んだ後、柚乃の道はこんな風に引き裂かれ、それを無理に繕いながら生きていくしかないのだろうか。我が子がこれから先、どれだけ苦しい思いをするか。それを想うと、母親としてどうして耐えられようか。「……ママ、何してるの?」寝ぼけた柚乃の小さな声がして、鈴夏は急いで涙を拭った。ぼろぼろになった絵を隠そうとしたが、もう遅かった。ぽっこりとお腹の出た、愛らしいパジャマ姿の小さな影が、すでに傍に来ていたのだ。自分が大好きなママのために描いた絵が、なぜこんなにばらばらになっているんだろう。小さな体が、絵を見てショックのあまり小刻みに震えた。「ママ、あたしが描いた絵、どうしてこんなになったの?」鈴夏はなんと答えていいかわからなかった。「…………っ」「ママ、誰がやったの?」小さな唇をへの字に曲げ、泣き出すのをぐっと堪えていた。今にも溢れそうな悔し涙が柚乃の大きな瞳に揺れて、鈴夏の胸をひどく締め付けた。抱き上げた時、息をすることすら辛かった。「ごめんね、柚乃。ママのせいなの。ちゃんとした額縁に入れてもらおうと思って外に持っていったら、野良犬が飛びかかってきて、ぐちゃぐちゃに噛みちぎっちゃったの……」苦しい言い訳だ。自分でもどうしてこんな嘘を思いついたのかわからなかった。柚乃は少し首を傾けて、目に溜まった涙をぱちくりとさせながら言った。「ママ、犬さんはみんないい子なのに、どうしてあたしの絵を噛んだの?」「……」鈴夏
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第13話

ケトルのお湯が六十度になったところで、柚乃はそれをカップに注いで、ママの元へ持ってきた。鈴夏は急いでティッシュを丸め、掌に強く握り込んだ。咳をした時に混じった血を、柚乃に見られるわけにはいかなかったのだ。何日も悩み続けているが、柚乃の引き取り先を、鈴夏は未だに見つけられずにいた。翌日、翔が会員制のクラブに鈴夏を呼び出した。その日は空が鈍く曇っていた。まだ午後四時だというのに、今にも雨が降り出しそうなどんよりとした灰色だ。しかし、その空よりもさらに暗かったのは、冷たい風に吹かれる鈴夏の顔色だった。翔はいつだって、この幼馴染みである妹分のことが心配だった。急いで彼女を個室へ連れて行き、生姜湯を温めながら口を開く。「鈴夏、光也に頼まれて来たんだ」湯気の立つ生姜湯を差し出すと同時に、一枚の銀行カードを添えた。「お前が苦労しているのを見て、少しでも足しになればと、これを渡してくれって。暗証番号は、お前の誕生日だってさ。なあ、鈴夏。誕生日を覚えているってことは、あいつの中にもまだお前への情が残っているってことだ。しかし、事故の後、ずっと傍で支えてくれたのが実奈だったっていう事実はある。でも……過去の恨みはもう忘れて、この金で柚乃と一緒に、しっかり生きていってくれ」鈴夏は力なく苦笑した。今の光也がどれほど冷酷で辛辣かは、自分が一番よくわかっている。これは決して、光也の口から出た言葉ではない。「翔さん。光也が実際に言ったのは、『ちゃんと心を入れ替えて、まともに生きろ。また悪いことをしたら容赦しない』――そういうことですよね?」「……」翔は正面から答えることを避けた。鈴夏の読み通りだったのだ。あの棘だらけの残酷な言葉を、翔は彼女に伝えたくなかった。もう一度、銀行カードを鈴夏の前へ押しやる。「とにかく受け取れ。光也が出すって言ってるんだから、もらっておけ」鈴夏は迷わずそれを受け取った。「光也に、ありがとうと伝えてください」これは柚乃の養育費だと思えばいい。実の父親として、これくらいの養育費は払って当然だ。自分が死んだ後は、このお金を柚乃に残してやれる。翔は、彼女があっさりと受け取るとは思っていなかった。一瞬驚いた顔をしたが、すぐに、彼女がそこまで切実に困窮しているのだと察した。彼女の性格
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第14話

一日でも早く、臨床試験の段階へ進めたい。一日でも早く、多くの人の命を救いたい。翔が実験室の前で彼を待ち受けていたのは、もう夜の十一時を過ぎた頃だった。白衣を脱ぎながら廊下へ出てきた光也が声をかける。「ずいぶん待ったか?」「光也、鈴夏のことで少し話がしたい」翔は隣に並んで歩き始めた。光也は白衣を片手に持ったまま、前を向いたまま聞いた。「金は、受け取ったか?」「ああ。ただ……」「四千万を、迷いもなく受け取ったか。村瀬家からどれだけもらっているかは知らないが」光也はぴたりと立ち止まり、口元に冷たい笑みを浮かべた。そこにあるのは深い侮蔑と、拭い去れない憎しみだ。あの女がまた村瀬家と手を組んで何かを企むなら、今度こそ絶対に容赦はしない。前回、刑期を短くするのに裏で一役買ったのは自分だというのに。あの時、もっと長く服役させておくべきだった。今日の帰り際に見せた鈴夏の痛ましい後ろ姿が、翔の目から離れなかった。あの頃の鈴夏は違った。いつも太陽のように明るくて、よく笑っていた。あのまぶしい面影は、もう今の彼女のどこにもない。光也が再び歩き出すと、翔は諦めずにその背中を追った。「光也、鈴夏の人生がどれだけ過酷なものだったか、ちゃんと考えたことがあるのか。生まれた時に母親が死んだ。二十一歳の時に小宮千恵美と実奈が現れて、井山泰弘の実の子じゃないと突きつけられた。二十五歳で刑務所に入って、その冷たい塀の中で聴力に障害を持った子どもを産んだ。もし今度の癌が本当なら……あいつは本当にもう後がないんだぞ。お前には実奈がいる、それはそうだ。鈴夏を恨んでいる、それもわかった。だけど今一度冷静になって、あいつのことをちゃんと考えてやってくれないか」光也は冷静だった。冷静だったからこそ、万が一自分が誤解していた場合に備え、鑑定を徹底的に秘密裏に行ったのだ。誰も知らない。鑑定結果に誰かが手を加えられるはずなどない。光也は鬱陶しそうに翔を一瞥した。「鈴夏がお前の妻か?桐島静佳(きりしま しずか)が妻だろう。お前は自分の妻より、鈴夏に肩入れしているじゃないか」「口が悪いのにもほどがあるぞ。静佳は俺の妻だ。鈴夏は子どもの頃から見てきた妹みたいな存在だ。お前には良心ってものがないのか」翔は怒鳴りつけた。しかし、光也は彼以上に激しく怒っ
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第15話

間違えたら大変だから、柚乃は慎重に確かめていた。容器のラベルを見て、説明書きも見た。だが、鈴夏はすでに手を打っていた。癌の分子標的薬も鎮痛剤も、すべて市販の風邪薬の空き容器に詰め替えてあったのだ。もし柚乃に自分が癌だと知れたら、あの子の小さな心は崩れ落ちてしまう。こんなに幼い子どもに、これほど重い現実を背負わせたくなかった。いずれは知ることになる。鈴夏もそれは分かっていた。けれど、たとえ一日でもいい、その時を先延ばしにしたかった。柚乃には、ずっと笑っていてほしかった。二人で過ごす残りのわずかな日々を、できるだけ幸せな記憶だけで満たしたかった。その日は日曜日だった。買い物の帰り道、鈴夏は柚乃の手を引いて、道端の移動式花屋の三輪車の前で立ち止まった。そして、一束の紫のトルコキキョウを買った。彼女が一番好きな花だ。アパートに帰ると、二人で並んで花の枝を整えながら、他愛のない話をした。「柚乃、これから先、どんなに辛いことがあっても、生きることを好きでいてね。もし悲しくなった時は、自分の好きなことをして、好きなものをたくさん食べるんだよ」柚乃は傍らで余分な葉っぱを切り落としながら、ママの真似をして花枝をきれいに整えていた。「ママ、ママと一緒にいるのに、なんで生活が辛くなるの?毎日すごく楽しいのに!ママと一緒なら、何があっても柚乃は悲しくないよ」少し前に、パパがあたしを認めてくれなかった。あれは確かに悲しかった。決して軽いショックではなかった。でも何日かかけて、柚乃は自分の小さな心の中で、ちゃんと気持ちを整理していた。パパに認めてもらえなくても、ママがいればそこには全世界がある。柚乃はきれいに整えた紫のトルコキキョウを花瓶に挿し、ふと手を止めたママを、これ以上ないほど幸せそうな瞳で見上げた。「ママ、柚乃ね、ママと一緒にいる毎日が、すっごく楽しいんだよ!すっごく幸せなんだよ!」「…………っ」鈴夏は答えられなかった。その純粋な笑顔に、気の利いた言葉を一つも返せなかった。どれだけ悲しみを抑え込もうとしても、柚乃の何気ない一言ひとことが、鈴夏の決意を鈍らせる。柚乃とあと、どのくらい一緒にいられるのか。三ヶ月?いや、もう三ヶ月すらもたないかもしれない。そろそろ本当のことを話して、心の準備を
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