スマホの画面を見つめながら、俺は深く息を吐いた。 申し込み完了。 たったそれだけの言葉なのに、胸の奥にずしりと重く沈む。 画面越しの文字が、まるで現実そのものになって、こちらを押し返してくる感覚だった。 今週の土曜日に開催される街コン。 自分で選んだわけじゃない。安価で決まった。 掲示板の流れの中で、半ば冗談みたいに決まり、半ば勢いで背中を押されただけだ。 それでも――申し込みボタンを押したのは、他でもない俺自身だ。 スマホを伏せ、天井を見上げる。 見慣れた白い天井。染みも、ヒビも、何一つ変わっていない。 正直に言えば、まだ実感は薄い。 胸が苦しくなるほどの恐怖も、逃げ出したくなるほどの緊張も、今はない。 どこか他人事だ。 未来の自分が行く場所で、未来の自分が何とかする。 そんな、ワンクッション挟まった感覚。 けれど、分かっている。 逃げ場は、確実に減っている。 土曜日はやって来る。 気を紛らわすように、掲示板に戻り、服装の安価結果を確認した。 ◇ ◆ ◇ 175:名前:名無しの使い魔 清潔感あるシャツとジャケット ◇ ◆ ◇(……正直、助かった) 心の底から、そう思った。 銀髪にした時点で、俺はすでに十分すぎるほど目立つ存在だ。 ここで服装まで奇抜だったら、完全に事故だった。 ヴァンパイアだの、白スーツだの、あり得た未来を想像して、背筋が寒くなる。 清潔感。なんてありがたい言葉だろう。 派手じゃない。面白くもない。 でも、だからこそ、今の俺にはちょうどいい。 俺は、画面に向かって小さく頭を下げた。(ありがとう、名も知らぬ誰か) 本気でそう思った。 金曜の仕事終わりに、服を買いに行こう。 シャツとジャケット。
Terakhir Diperbarui : 2026-05-12 Baca selengkapnya