夜明け前の淡い青が、寝所の重厚な窓の縁をじわじわと滲ませていた。 窓の外には手入れの行き届いた広大な庭が広がり、冷たい月明かりの名残が、象牙色の床の上に淡く長い光の帯を作っている。リアンは、ヴァレンの逞しい腕の重みを背中に感じながら、ゆっくりと意識を浮上させた。肌に触れるシーツの冷たさが、まだ支配的な夜の気配を留めている。 昨夜も夜更けまでヴァレンに幾度も求められ、身体の芯には鉛のような重い余韻が残っていた。寝返りを打つほどの力も戻らず、ただ規則的な寝息をすぐ背後で聞き続けている。深く、穏やかな呼吸。近頃のヴァレンは、こうしてリアンを壊れ物を扱うような手つきで抱きしめて眠りに就くようになっていた。 ほんの数刻前まで、ヴァレンの手は飢えた獣のようにリアンの柔らかな肌を貪り、熱い情欲を注ぎ込んでいた。そのはずなのに、今は人の身体の熱がこんなにも穏やかな光を帯び、自分を包み込む安らぎに変わることを、リアンはここに来て初めて知った。 鼻腔を、ゆっくりと冷えた空気が満たしていった。 寝所の隅では白檀の香が焚かれ、細い煙が室内に青白くくゆっている。深く落ち着いた木の香り、その奥に仄かに混ざる枯れた花の甘さ。それは秋の終わりを思わせる、ヴァレンが就寝時に好んで焚かせている静謐な香りだった。リアンも、最初にこの寝所へ呼ばれた夜から、その匂いだけは唯一の救いとして馴染んできたはずだった。 けれども、今、何かが違っていた。 リアンの鼻が、微かに、そして敏感に動いた。白檀の柔らかな芳香の下に、異質な、それでいて知っている何かが薄く潜んでいる。うっすらと甘く、けれども後味に微かな鉄の気配を引き摺る、粘りつくような奇妙な匂い。普段ならば白檀の重厚な深みに完全に紛れて気づかないほどの、極めて希薄な存在感だった。 鼻先の奥で、その匂いの正体を何度も確かめる。 ――甘い腐臭。 その言葉が脳裏に閃光のように閃いた瞬間、全身の血が逆流し、心臓が跳ね上がる感覚に襲われた。 兄セレンが、最期の床で発していた、あの忌まわしい匂いだった。 病の熱に浮かされ、次第に細っていく身体から、死が足音を立てて近づくにつれて立ち昇ってきたあの匂い。リアンはそれを、忘れたことなど一瞬たりともなかった。兄の青白い頬に何度も自分の頬を寄せ、消え入りそうな弱々しい呼吸から、すがるように嗅ぎ取り続けてい
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