オンラインゲームでエースアタッカーの座を譲ったら、彼氏の佐野陸(さの りく)は私・白川紬(しらかわ つむぎ)をいい子だと褒めてくれて、結婚式を早めようと言った。けれど式の当日、陸の初恋の人・橘愛莉(たちばな あいり)が嫉妬で自ら刃物で腕を傷つけてしまった。「陸、私を置いていかないで。結婚なんて、しないで……」いつも冷静な陸が顔色を変えて、必死になって愛莉を救ってほしいと私にすがった。参列者が好奇の視線を向ける中、私は何も言わず静かに花嫁の座を譲った。相変わらずの私の理解ある態度を見た陸は、申し訳なさそうに目を潤ませた。「誓うよ。お前を泣かせるのはこれが最後だ。この結婚式が終わったら、すぐに入籍しよう」けれど陸は忘れている。これが私を裏切る96回目だということを。もう陸との未来なんていらない。祖母の命を救ってくれた恩を、あと3回の妥協で返し切ったら、私は迷わず彼のもとを去るつもりだ。「なんだ、結局あっさり退場したのか?」「しょうがないだろ?どうせ橘さんの代わりだったんだから。やっと本来の主役が戻ったのさ」「見ろよ、やっぱりお似合いだな」参列者の声を聞きながら、私は壇上を見上げた。二人で手を取り合い歩く姿は、まさに絵に描いたようなカップルそのものだ。ただ、肝心の式はまだ始まっていなかった。式場スタッフたちがバタバタと動き回り、会場内の看板や写真の差し替え作業に追われている。あまつさえ、参列者全員に新しい招待状まで配り始めていた。なんと、私の手元にも届いた。開いてみると、新郎の名前は陸のままだった。だが、花嫁の名前に、愛莉と記されていた。陸はそのすべてを見ていた。さっきの自傷行為が、ただ気を引くためのものだと陸も分かっているはずなのに、陸は甘く愛莉の頬をなでていた。「愛莉、わざと困らせるようなことするなよ。もし本当に大怪我をしたらどうするんだ?」陸にとって大事なのは、愛莉の指先がかすり傷ひとつ負わないことだけだ。それが、私の競技人生と引き換えに与えられた結婚式だったことなど、陸はもう気にも留めていなかった。彼は知らない。彼と結ばれたいという願いを、私は毎年の誕生日に紙へ書き、ガラス瓶へしまってきた。誰にも見せられない、たった一つの願いだった。ようやく会場から私の痕跡が完全に消えたの
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