All Chapters of クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です: Chapter 51 - Chapter 56

56 Chapters

51.Side神楽 プロポーズをしてしまった

「そ……そんなのすぐに無理っ!」正直に言えば、自分でも何を言っているのかよくわかってなかった。ただ、紅と一緒にいる空間が気持ちよくて、それを永遠に手に入れたいと思ったから……「今すぐってわけじゃなくて、そんな気持ちが芽生えたんだよ。紅とずっと一緒にいたいって」紅の反応は意外だった。顔を赤くして焦って……もっと余裕で受け流されると思ったのに。「こんな気持ちをどう呼ぶのかといえば、多分恋なんだろうな。……激しい気持ちじゃなくて、もっと優しい気持ちだから、もしかしてもう愛の領域に入ってるかも」「じ、人類愛……ってやつですか」「なんだよそれ。ちゃんと男女の愛だよ」「神楽さんはたくさんの人を一度に愛してきた博愛主義だったじゃないですか。だから、そういう中に私も入ったって報告ですよね?」どうしたらプロポーズをそういう意味に変換できるのか……紅は横を向いてしまった。「今までの俺を知ってるし、深く傷つけたこともあるから、信じられないのは仕方ないし覚悟してるよ」「そうですよ。……ちゃんと、クズでいてくれなきゃ困る」「……ごめん。愛に目覚めて」一瞬こちらを向いた紅。視線が絡み合ったものの、一瞬でブチ切るように、再び激しく顔を背けられた。「……急すぎたんじゃない?」食堂で出くわした京香にため息の理由を聞かれ、紅にまじめなプロポーズをしたことを打ち明けた。「そうかもな。でも、自然と言葉が出て、止めたくなかったんだよな……」「神楽の素直な気持ちか。確かにレアだね。真剣な気持ちを伝えたなら、少し落ち着いて見守るのがいいかもね」もちろんそのつもりだ。自分のやってきたことを思えば、すぐに信用しろと言っても無理な話。「これまで……考えたこともなかった事が頭に浮かぶんだよな」「……どういうこと?」焼き魚定食の塩サバを切り分け、京香は茶碗のご飯と共に大口を開けた。「一緒に出かけるとかさ?ドライブとか映画とか、なんかのイベントとか?」「それ……デートっていうんだけど?」「まぁ……そういうのをしたいっていうかさ」たとえば映画を観て、悲しい場面ではどんな表情をするのか……見晴らしのいい景色を見たら、どんな声をあげるのか。そんな健全な興味を抱いたのは紅が初めてだ。京香は言葉にしない俺の心の声が聞こえたかのように、笑いながらワカメの味噌汁に口をつけた。そ
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52.Side.神楽② 実家にて

「お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます」ここに来るたび、毎回思う。都内とは思えないほど静かな邸宅だが、高台にあるせいで歩いて来たら地獄だと。……この道を、中高の6年間通った。「そう忙しくはないよ。神楽先生が外科をまとめてくれてるから」院長は60代とは思えない姿勢の良さで、窓際に立っていた。家政婦がお茶を出すテーブルの前に、ゆったり腰掛ける母の姿。「神楽さん、颯真さんが帰ってだいぶ楽になったんじゃない?」「……そうですね」母にかけられた言葉は、逆らわず認めておく。実際は、外科をまとめている自覚も事実もないし、颯真も俺を助けるとか病院のためだと思って動いちゃいないだろう。……それぞれの仕事をしているだけだ。「この度は、院長……お義父さんのご心配も知らず、勝手なまねをしてすみませんでした」「3度目の結婚のことかな?」「はい。……それから谷村さんとの結婚をお義父さんは望んでいるようですが、私たちにそのつもりはないのでお伝えしたく参りました」窓を向いていた体をゆっくりこちらに向ける義父を見て、母がスッと椅子から立ち上がったのが見えた。視線をやった次の瞬間、頬に冷たい痛みが走る。「お義父さまのせっかくの好意を、あなたはどうしてそう無下にするのですかっ?!」頬に飛んでくる手は自分よりずいぶん小さくなったのに、痛みは子供の頃から変わらない。見上げてくる険しい視線を捉えながら、この人はいつもこんな目で自分を見ていたことを思い出す。……もう20年も前のこと。小さなアパートの一室で、父親の怒声が響いた。「……何だってお前は、そんなに勝手な事が言えるんだよ、」声だけで、涙が含まれていることを感じた。さっきまで一緒にボールを蹴り合っていた父親が、一足先に家に帰った時のこと。サッカーチームの仲間とアパートの前で別れ、昼ご飯を食べたらまた集合だと約束してボールを膝でコントロールしながら入った家の中はひどく冷たい雰囲気……「だって、このままこんな生活するなんて、私には耐えられないもの!」「普通に暮らせてるだろ?俺だって、休日は日曜だけにして、土曜日は出勤してる。その分貯金も増えて、神楽が中学生になったら家を買おうって話あったばかりだぞ?」「もう……チマチマ節約するような生活、嫌なのよ!」母親の金切り声がした直後、ガラスが割れるよう
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53.楽しいデート①

「明日、ドライブに付き合ってくれないか」「え……」「海辺の高級レストランで食事付き」朝食の席で、神楽にいたずらっぽい笑顔を向けられた。「もうひと声……ですかね」「はぁ?!……」呆れながらも、少し考える神楽。「ブランドショップでデートに着ていく服を買ってやる。……もちろん靴もバッグも」思わず眉をしかめて見上げてしまった……まさかこんな簡単に、金に物を言わせる案を出してくると思わなかった。……思わずため息が出る。「なんだよ?!俺はそういう方法でしか女を喜ばせたことがない。何か希望があるなら言ってみろよ?!」「デートに誘っておいてノープランですか。……一昨日おいでと言いたいところですが、仕方ないですね。アイディアを出してあげます。ぜひ、今後女性を誘う時の参考になさってください」「……今後誘うのは紅だけだから」「……っ!」聞こえないふりをして、まずは食べかけの朝食を平らげる。……ちなみに今朝のメニューは焼き鮭のお茶漬けと焼き鮭のおにぎり、そしてインスタント味噌汁。神楽は小さく「ご飯&ご飯……」と呟いていたが当然無視した。「海まで行くなら当然海水浴!」「……げ」「何ですかその反応?!」「俺の美肌が陽射しに耐えられるかどうか……」確かに男性にしてはキメの細かいお肌ではあるが、言い方が気にいらない。「今どきラッシュガードは当然だと思いますけどね。別にいいですよ、神楽さんはテントの番でもしていてください」紅はお茶碗を片付けながら席を立つ。「とりあえず、明日出かけるのはOKだな?」「……はい。別に、何も予定ないし」「よし!それじゃ早朝から出かけようか。そのつもりでいてくれ」嬉しそうな神楽の表情に少し落ち着かない気持ちになり、紅は先に玄関を出る。……そういえば水着なんて持ってたかな?!「……え?!海水浴の持ち物?」昼休み、紅は坂谷を捕まえて昼食に誘った。よくよく考えてみると、海水浴なんて子供の頃に行ったかどうか……?という曖昧な記憶しかない。「必需品とか、あると便利なものとか……ほら!坂谷さんならファミリーで散々行ったんじゃないですか?」「そうねぇ……確かに夏休みの我が家は毎週末海に行ってたけど……必需品といえばサメだったかしら」「サメ……」「空気を入れてパンパンに膨らませて、海に浮かべてかわりばんこに上に乗るわけ
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54.楽しいデート②

「な……なんですか?」 玄関先でハグされて、紅はどうしたものかと腕の中で神楽を見上げた。 「今見上げないでくれる?」 「……はぁ??」 ますます謎だ……何をしたいというのだろう。こんな、人の自由を奪って。 しばらくして腕を緩めた神楽は、紅に着せたシャツのボタンをしめる。その顔は少々赤い気がするが……もう何も言わないほうがいいような気がしてされるままになっていた。 「わぁ……海だ」 シーズンだというのに道路はたいした混雑もなく、スムーズに2人を海岸へと連れて行く。 「海風が気持ちいいかもしれないな」 窓にへばりつくようにして外を眺める紅を見て、神楽はエアコンを切って窓を開けた。 潮の香りがさらに海を感じさせ、紅を子供のような笑顔にしていく。 神楽の運転する車は、海辺にそびえるホテルへと入っていった。エントランスで待ち構えるスタッフが、神楽の指示で荷物を運び出し、2人もロビーへと案内される。 「え……すごい、全面ガラス?」 ロビーの正面に広がる青い海と白い砂浜……色とりどりのパラソルと、かすかに聞こえる波の音。 「すぐに海岸に行く?それとも飲み物でも……」 紅はガラスに近づいていく。 まるで水族館で悠々と泳ぐイルカを見るように、海辺の景色に釘付けになった。 それを見た神楽は、スタッフに外へ行くと告げる。 「ここまで来ると、日本の海も綺麗だな」 ふと隣に立つ神楽。自然と腰に手を回し、普段では考えられないほど距離が近い…… 「海外……行ったことないです」 「そう?今度連れて行くよ。長めの休みを取ろう」 当たり前のように言われたが、紅は一瞬返事に困り……神楽の視線を感じた。 「二階堂様、ご用意できましたのでこちらへどうぞ」 「ありがとう」 スタッフが指し示す方へと、神楽は紅をエスコートした。 何の用意なのかわからないままついて行くと、そこは屋外のサンデッキ。 ホテルのマークが入ったおしゃれなパラソルとデッキチェア、ビーチベッドにテーブルが配置されている。 「こちらから海へとご自由に行き来できます」 スタッフはにこやかに立ち去り、辺りを見渡した紅は、用意してきたアイスボックスの中に、いつの間にかたくさんの飲み物が冷やしてあることに気づいた。 「食べ物でも何でも
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55.楽しいデート③

「……そ、そういうとこ、見てるんですか?」「当然、嫌でも目に入るだろ」中断したコートで立ち尽くす紅に近寄り、細い肩についた砂を払いながら神楽は続けた。「正直に言えば、今まで女性の体は娯楽のようなものだった。でも紅は違う。男の色眼鏡で見るのは失礼だと思うし、君をそんな目で見る男がいたら殺したい」「……ショートパンツ、はきます」殺したい、まで言わせて希望を無視する私じゃない。一旦サンデッキに戻ることになった。「あの、貸して下さい」「……ん?」「ハーフパンツ。神楽さん、来るときはいてたやつ」しばらく固まる神楽……「そんな準備はしてこなかったんです。パレオはスカートみたいなものだから、そんなものはいたら遊べないし……」手を差し出す紅。早くハーフパンツをよこせ、という意味。神楽は目を閉じて、片手で胸元を押さえた。……少し息を整えているように見えるけど、変なこと言ったかな。「天然が怖い……」言われた通り自分のハーフパンツを差し出し、紅がはくのを待ってから、先ほどのスタッフを呼んだ。「薄い素材の涼し気なタンクトップをいくつか持ってきてください。……彼女に水着の上から着てもらいたい」スタッフは言われて紅に視線を向け、笑顔になった。「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」「あ……ちょっと待って」立ち去ろうとしたスタッフを神楽が呼び止めた。「陽射しを避けておとなしく寝そべってる人じゃないんだ。……まだまだ遊びたいみたいだから、動きやすいものを選んで」スタッフはさっきよりもっと笑顔になって……紅の頬は赤く染まる。「少し水分補給をしようか。このあたりは湿気は少ないが、陽射しは強いからな」アイスボックスから出したのが医療用の経口補水液だったのを見て笑ってしまった。……キャップを開けて渡してくる表情がちゃんと医者だ!「ありがとうございます。……それじゃ神楽さんも」ちょっとふざけて、スイカジュースなるものを手渡してみる。スイカ模様が派手に描かれたボトルは子供向けのようで神楽には似合わない……「うん。うまい」なのに躊躇なく受け取り、飲みはじめた。「この商品、去年俺が監修して商品化したんだよ。……夏休みの小学生の熱中症対策ってコンセプトでな」「そんなこともしてるんですか?……毎日忙しいのに、どこの時間を使ってそんなことを……」「
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56.楽しいデート④

「と、突然言われても……っ」「考えたら明日は当直だから、夕方遅い時間の出勤なんだよ」「あー……私は当直とかありませんので」少しホッとして答える紅に、神楽は少し妖しい視線を向ける。「それなら……休みを変えたらいい」「は?そんなこと勝手に……他の方の迷惑になります」「大丈夫。専属クラークは担当医師の仕事に合わせて休みを変更できるから……」担当医師なら神楽の他に颯真もいると反論しようとして、すでに神楽が携帯を耳に当てていることに気づく。「外科の神楽。颯真先生に繋いで」紅は天を仰いだ。京香との結婚が決まって、颯真は今、一番機嫌がいいはず。神楽の話など二つ返事で承諾するだろう。「……そう。明日は片桐を休みにして、明後日から続く手術に備えてデータを整理させたい。……そういうことだ。あぁ、頼んだ」途中からこちらに視線を向け、半笑いになる神楽。……どうやら颯真は予想通り骨抜きの軟体動物と化しているようだ。「……別にいいですよ?泊まるくらい」究極、寝て起きるだけの話。寝るまでの間に何があるかが問題なのだが、そこは見ないふりをする。「良かったな!……じゃあ今日は夕方になっても日が落ちるまで遊べるぞ?」テーブルの向こうから大きな手が伸びてきて、ガシッと脳天に置かれる。それはまるで小さな子供に言ってるようで、それはそれで気に入らない……サンデッキに戻ると、タイミングを計ったかのようにスタッフが何やらど派手な飲み物を運んできた。「フルーツフローズン・ブルーハワイモヒートでございます」広口のガラス瓶に砕いた氷と綺麗な青い液体が入っていて、上に桃やシャインマスカット、洋梨やマンゴーなどのフルーツがこれでもかと盛られている……「このホテルの名物カクテルなんだよ。山盛りに見えるけど、意外と食べられるから。……ね?」「おっしゃる通り、当ホテル自慢のフルーツカクテルでございます。特にこのマンゴーは、ホテル専用の農園で従業員が育て、収穫したものになります」「うん。……今年もうまい!去年より甘くなってるね」楽しげに話す神楽とスタッフだったが、紅の胸は一瞬チクリと痛んだ。……神楽はすでにこのホテルのVIPで、きっとこれまでたくさんの女性を連れてきたのだろう。それに話しぶりを聞く限り、契約結婚の期間中であった去年も来たらしい。確かに何度か、学会や出張という
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