クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です

クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です

last updateLast Updated : 2026-06-08
By:  桜立風Updated just now
Language: Japanese
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美貌の外科医、二階堂神楽31(にかいどうかぐら)と1年間の契約結婚をした片桐紅29(かたぎりべに) 理想の妻を演じ、きっかり1年後、契約満了で豪邸を出て行った。 ところが……残された神楽の心に残る紅。 実は契約結婚は紅で3度目の神楽。 以前の妻たちは契約を守らず、神楽を愛し、体を開いた。けれど紅は思い通りにならない。 それが神楽は悔しくてならない。 実は紅も、神楽との契約結婚には、ある思いを持って臨んでいた。 神楽は覚えていないものの、2人は因縁の関係で、この契約結婚は、紅とって復讐、そしてやり返しの意味があったのだ。 離婚しても形を変えて2人は繋がり続け、攻防戦は激しさを増していき、結果、2人の着地点は…

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Chapter 1

1.契約結婚

「今夜の料理も美味いな」

「本当ですか?嬉し……」

「玉ねぎが入ってなきゃね。言わなかったっけ?俺、玉ねぎが苦手だって」

ピリっと張りつめる空気……とても仲良し夫婦の夕食風景には見えない。

射抜くように向けられた視線から逃れたくて、反射的に下を向いた。

ガラスのダイニングテーブルは透明で……夫が足を組み替えたのが見える。

「そうでしたね。……ごめんなさい」

「いやいいよ。普通の男なら満足する味だ。……普通の男ならね?」

頬杖をついて私に向ける視線は……確実に不愉快だと伝えている。

「明日は必ず……満足していただけるように頑張ります。私、料理は得意なので、今度こそ」

リベンジを誓う私を見つめ返す瞳の色が、明らかに変わった。

唇の端を歪めたのは、笑顔を作ろうとしたのか……口元のホクロが際立つ。

「明日なら無理だ。夕方から手術が入っている」

「……それじゃ、冷めても美味しい夜食を作っておきますね」

「無理するな。期待はしていない」

口元をナプキンで拭い、席を立つ夫……二階堂神楽《にかいどうかぐら》、31歳。外科医。

「……恐れ入ります」

聞こえても聞こえなくてもいいひと言をつぶやく私は二階堂紅《にかいどうべに》、29歳。主婦。

私たちは、1年間の契約で結婚した偽装夫婦だ。同居して間もなく半年になる。

「明日の手術の準備がある。君は先に休みなさい」

「はい。ありがとうございます」

神楽は長い足を見せつけるように動かし、書斎へ向かう。ドアを開けながら、さり気なくこちら向いて……嫌味なほど整った顔を紅に向けた。

「おやすみ。俺の美しい奥さん?」

「……おやすみなさい」

ずっと目で追っていて良かった。

振り向いた時自分を見ていないと、神楽は少し不機嫌になる。

機嫌を損ねたお仕置きは、夜中の呼び出しか……翌朝の朝食に持ち越されるかのどちらか。

何度か経験して知ったが、そのどちらもひどく、面倒くさい……

「どうしても腕が痛いんだ。……ちょっとマッサージしてくれないか?」

すでにベッドに入っていた私を、携帯で呼び出す神楽。

「……わかりました」

どんなことがあっても、嫌な声は出さない。嫌な顔はしない。

契約妻になって、心に誓ったこと。

けれど、契約結婚をするにあたり、夫婦としての体の関係は無しと言っていたはずだ。だから私たちの寝室は別なのだが、呼び出されたのは……神楽のベッドルーム。

ほのかな明かりだけの薄暗い部屋で、腕とはいえ……素肌に触れるのは緊張する。

彼の香りでいっぱいで、クラクラと酔いそうになのにいつまでも解放してもらえず、ベッドの傍らで座ったまま眠ってしまった。

目を覚ました時の神楽の複雑な表情は忘れられない……

「ごめんなさい、私、契約違反ですね」

慌てて部屋を出る紅……神楽は何も言わずに見送る。

そんなお仕置きが翌朝になる時は、仕事が忙しい場合に限るようだ。

「……今朝は味噌汁と焼き魚の気分なんだけどな」

「はい……すぐに作り直します」

スクランブルエッグと手作りのロールパン、有機野菜のグリーンサラダという洋食を下げ、和食を準備する。

……もちろん、反対も然り。

機嫌を損ねて難癖をつけられ、すべて作り直しをさせられる朝を思えば、

気を抜かず注目しておいて良かったと心から思う。

そんなわけで、ドアが閉まってからもきっちり15秒……紅はドアを凝視した。

そしてやっと、体の力を抜けるのだ。

遅くまで起きているであろう神楽の飲み物を用意しておくのは、入浴を済ませたタイミングで。

こんな時飲むのは薄めのほうじ茶と決まっているらしい。でも神楽はすぐに好みを教えてくれなかった。

さり気なく様子を伺いつつ、初めは色んな飲み物を用意した。温かいものや冷たいもの、結局ほどよいホットが好きだとわかったのは契約結婚3ヶ月めの頃。

以来、書斎にこもっている時は、こうしてポットに入れ、すぐに飲めるよう準備をしておく。

自分でも喉が渇いて……冷蔵庫を開けた。食後に出そうと思っていたゼリーが目につく。

これは自信作だったのに、そういうものに限って、神楽は食べてくれない。

夜食にちょうどいいのに……けれど神楽は冷蔵庫など覗かないだろう。

当然、明日の朝食や夕食に出す事も許されない。

半年前のあの日、神楽に言われた言葉を思い出した。

「医者は体が資本なんだ。だから食事には人一倍気を使ってほしい」

契約結婚を持ちかけた神楽から、提示された条件はそれだけだった。

「料理は得意なので大丈夫だと思います。……でもどうして契約結婚をなさるんですか?」

手料理なら、愛する女が作ったものが最適なはず。

「仕事柄か、うちの病院の名前のせいか、見合いや政略結婚の話が後を絶たなくてな。……短い期間で離婚すれば悪い噂が立って、独身を通すより、結婚話は減るだろうという期待だ」

結婚などまっぴらだと言ってのける神楽と出会ったのは、東京のある料亭でのこと。

勤めていた企業を辞めたばかりの私は、食いつなぐために配膳のアルバイトをしていた。

「神楽先生……おひとつどうぞ」

「二階堂総合病院は、この先も安泰ですな……」

そんな会話を小耳に挟みながら料理を運び、酒を運び、空いた皿を下げていた時……人からは見えないところで、突然手首を掴まれた。

「……っ?!」

なんでもない表情で周りに笑顔を振りまく神楽。彼の口元にはホクロがあり、私はこんな場面なのに釘付けになった。

「戻ってくるから、待っててくれるか?」

耳元で、コソっとつぶやく艶めいた声は、拒否される可能性など考えていないとわかる。

アルバイトを終え、私は言われた通り、料亭周辺で神楽を待った。

……それは何故なのか。

戻ってきた神楽はまったく驚かず、待っていてくれたことの感謝もなかった。それはきっと、彼にとって当然のことだから。

自分を拒否する女はいない、という圧倒的な自信に満ちていたのだ。

「契約結婚をしよう」

こちらの心のひだに、何か隠れてはいないか、想像する習慣はないらしい

「……はい」

ニッコリ笑って、まさに二つ返事。

多くを聞かずに受け入れる私に、神楽は気を良くしたようだ。

私の……本当の狙いも知らないで。

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1.契約結婚
「今夜の料理も美味いな」「本当ですか?嬉し……」「玉ねぎが入ってなきゃね。言わなかったっけ?俺、玉ねぎが苦手だって」ピリっと張りつめる空気……とても仲良し夫婦の夕食風景には見えない。射抜くように向けられた視線から逃れたくて、反射的に下を向いた。ガラスのダイニングテーブルは透明で……夫が足を組み替えたのが見える。「そうでしたね。……ごめんなさい」「いやいいよ。普通の男なら満足する味だ。……普通の男ならね?」頬杖をついて私に向ける視線は……確実に不愉快だと伝えている。「明日は必ず……満足していただけるように頑張ります。私、料理は得意なので、今度こそ」リベンジを誓う私を見つめ返す瞳の色が、明らかに変わった。唇の端を歪めたのは、笑顔を作ろうとしたのか……口元のホクロが際立つ。「明日なら無理だ。夕方から手術が入っている」「……それじゃ、冷めても美味しい夜食を作っておきますね」「無理するな。期待はしていない」口元をナプキンで拭い、席を立つ夫……二階堂神楽《にかいどうかぐら》、31歳。外科医。「……恐れ入ります」聞こえても聞こえなくてもいいひと言をつぶやく私は二階堂紅《にかいどうべに》、29歳。主婦。私たちは、1年間の契約で結婚した偽装夫婦だ。同居して間もなく半年になる。「明日の手術の準備がある。君は先に休みなさい」「はい。ありがとうございます」神楽は長い足を見せつけるように動かし、書斎へ向かう。ドアを開けながら、さり気なくこちら向いて……嫌味なほど整った顔を紅に向けた。「おやすみ。俺の美しい奥さん?」「……おやすみなさい」ずっと目で追っていて良かった。振り向いた時自分を見ていないと、神楽は少し不機嫌になる。機嫌を損ねたお仕置きは、夜中の呼び出しか……翌朝の朝食に持ち越されるかのどちらか。何度か経験して知ったが、そのどちらもひどく、面倒くさい……「どうしても腕が痛いんだ。……ちょっとマッサージしてくれないか?」すでにベッドに入っていた私を、携帯で呼び出す神楽。「……わかりました」どんなことがあっても、嫌な声は出さない。嫌な顔はしない。契約妻になって、心に誓ったこと。けれど、契約結婚をするにあたり、夫婦としての体の関係は無しと言っていたはずだ。だから私たちの寝室は別なのだが、呼び出されたのは……神楽のベッドルーム。
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2. 神楽の変化
「契約期間は1年。親への挨拶はしなくていい。新築した家が都内にあるから引っ越してきてくれ。契約結婚にかかわるすべての経費はこちらで持つ」車の中で行われた話はとてもスムーズで、簡潔だった。「仕事関係者や交友関係に君を紹介することはない。ただ、結婚した事実だけが欲しい。婚姻届は出し、同居することで、実態を伴った結婚だったと後になって周りが認めればいい」「……わかりました。私も両親とは距離を置いていますので、挨拶などの心配はいりません。ひとりっ子ですし」「それは助かる。……あの料亭で働けるということは、それなりに信用のおける人物だと理解しているが、一応身分証を見せてくれるか」求められるまま身分証を見せながら付け加える。「父はトオキ屋という老舗和菓子メーカーの跡取りです」「トオキ屋って、京都の有名な和菓子屋だね。東京にも進出してずいぶんになると思うが、それじゃ君は……」「いえ、跡継ぎは男子に限られるので、従兄弟が継ぐと思います」そんな話だけで、身分の心配は吹き飛んだようだ。きっと後で調べられると思うが、嘘ではないので痛くも痒くもない。「引っ越して来たら、すぐに婚姻届を提出したい。その日から1年後が契約満了の日。契約金は500万。……ただし」タブレットを操作して、画面を見せられた。「契約結婚の禁止事項だ。これらを破ったら、最悪途中で解消となる」画面に表示されている文字を追うと、簡潔に3つのことを禁止事項にしているとわかった。恋愛感情を持たない部外者と接触しない互いの部屋を行き来しない言いたいことを想像して、つい笑ってしまった。「……1年後に別れることが決まっている。恋愛感情や体の関係を持って、互いの心の領域に踏み込みたくない。部外者と接触しないというのは、外に恋人を作らないということだ。もちろん、契約結婚中は割り切った関係もなし」「違反した場合は?」即座に問う紅に、神楽は視線を向ける。「……それは、心配があるということか?」「そうではありません。でも……神楽さんはとても魅力的ですから、外で女性に会ったりしないか、少し心配です」膝の上で両手を組んで、少し下を向く。……運転席からじっと見つめる視線を感じた。「違反したら、まずは話し合おう。契約金をプラマイして調整してもいいが、できれば契約満了して、君に得をしてもらいたいと思ってる
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3.紅の目的
先に部屋を出た紅は、冷蔵庫を開け、冷えたミネラルウォーターをグラスに注ぐ。飲みきって息をつく紅の後ろに、部屋から出てきた神楽が近づいた。こういう時は……どんな態度を取ったらいいか。「あの、神楽さんも飲みますか?ミネラルウォーター……」「いや、いらない」肩からふわりと薄いショールがかけられた。「夜は少し冷えるからね」グラスをシンクに置いた紅の唇を、親指でひと撫でしてから手を取った神楽。……キスを拒んだのに、機嫌を損ねなかった?いや、面白くはないはず。寝室で見せた獣のような目を思い出し、紅はそっと笑った。「悪いな、遅くなった」「いいよ!神楽が最後に現れるのはいつものことだ」連れて行かれたのは、カジュアルなイタリアンバルながら、そこはかとなくラグジュアリーな雰囲気を漂わせる飲食店。集まっていたのは、神楽の友人だという3人の男性だ。……紅の目に、そのうちの1人、三田洋平《みたようへい》の顔が焼き付いた。「……で?すごい美人なんですけど」「……妻。結婚したんだ」「は?また……」言いかけた1人の口を、隣に座った男がふさぐ。別にいいのに。全部知ってるんだから。それより、三田洋平がこちらを見る視線が気になる……「はじめまして、三田洋平と言います。神楽とは高校時代からの付き合いで、他の2人は大学の同期なんだ」「……あ、よろしくお願いします」「全員医者なんだけど、俺はちっちゃい会社経営してます」三田洋平の言葉に盛り上がる2人の友人。神楽は笑顔を浮かべ、やり取りする友人たちを眺めた。それは、紅に向けるものとはまったく違う笑顔。……わざと名乗らなかったことは、三田には気づかれていないようだ。紅も神楽を見習い、いかにも心を開いた笑顔を見せた。テーブルの下で手を握る神楽に、そっと視線を向けながら。「……連れて行かれたのは仲間内の飲み会か」「うん。大学の同期って人が2人。……あと、三田洋平がいたわ」「え、それヤバいじゃん?!」高校時代の親友、小池亮子《こいけりょうこ》が遊びに来て、3ヶ月前の出来事を話した。「大丈夫よ。わざと名乗らなかったし、その後神楽の様子に変化はないし」「さすが紅!鉄の心臓だわね」それにしても……と、亮子は改めて身を乗り出した。「顔はもちろん背も高いし、見た目は200点満点よね。……惚れないの?一緒に
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