崖の上にそびえ立つ古城。 その主塔にある一室にて、白髪の男性が立っている。 白を基調とした室内には、同じく白く輝く調度品が多数飾られている。申し訳程度に、金銀の装飾も施されているが、ほぼ白に支配されたその部屋は、やや質素とも思えた。「何用だ?」 そんな部屋に、全く似つかわしくない声。「来たか...ジャカン」 バルコニーに立ち、星空を見上げていた白髪の男が、太い声に反応して振り返る。 重い足音が、一歩、また一歩と響く。 月明かりに照らされた先。 そこには、やはり部屋の雰囲気には全く合わない、筋肉の塊のような男が立っていた。 歳の頃はおそらく5、60歳。顔に刻まれた皺から、老齢なのは間違いない。しかし、その首から下は、顔からは想像もできないほどに鍛え上げられている。 黒い武道着から覗く胸元は、いかなる剣さえ通さないように分厚く、強固に見えた。 破れた袖から伸びる腕も、大木のような太さを持ち、脚もまた同様だった。 ただ、その身長は極端に低い。浅黒い肌と大きな耳から察するに、大地の種族ドワーフだと思えた。「お前に、「聖女」の身柄確保を頼みたい」「「聖女」…だと?」 ジャカンと呼ばれた男が、その太い眉の片方を大きく上げる。 明らかに不服そうな様子だ。「そんな些事《さじ》のために、ワシを呼んだのか?」「些事とはご挨拶だな」 対する白髪の男性は、極めて穏やかな声で話す。 見た目も雰囲気も全くの正反対の2人だが、そこには奇妙な親しみのようなものがあった。「我らの悲願のために、「聖女」は必要不可欠であろう?」「然《しか》り…されど、たかが小娘1人…如何様《いかよう》にもなろう」「そうとも言えないのだよ」 白髪の男性は、小さくため息をつき、ジャカンと呼ばれた男の前に立つ。 長身故に、2人が並ぶとその身長差は大きく、まるで親子ほどもある。「「聖女」と共にいるのは、「巨人討伐者《ジャイアン
最終更新日 : 2026-08-07 続きを読む