竜剣聖伝 ─死の魔王と赤の聖女─ のすべてのチャプター: チャプター 11 - チャプター 12

12 チャプター

第四章 前編 「予兆」

 崖の上にそびえ立つ古城。 その主塔にある一室にて、白髪の男性が立っている。 白を基調とした室内には、同じく白く輝く調度品が多数飾られている。申し訳程度に、金銀の装飾も施されているが、ほぼ白に支配されたその部屋は、やや質素とも思えた。「何用だ?」 そんな部屋に、全く似つかわしくない声。「来たか...ジャカン」 バルコニーに立ち、星空を見上げていた白髪の男が、太い声に反応して振り返る。 重い足音が、一歩、また一歩と響く。 月明かりに照らされた先。 そこには、やはり部屋の雰囲気には全く合わない、筋肉の塊のような男が立っていた。 歳の頃はおそらく5、60歳。顔に刻まれた皺から、老齢なのは間違いない。しかし、その首から下は、顔からは想像もできないほどに鍛え上げられている。 黒い武道着から覗く胸元は、いかなる剣さえ通さないように分厚く、強固に見えた。 破れた袖から伸びる腕も、大木のような太さを持ち、脚もまた同様だった。 ただ、その身長は極端に低い。浅黒い肌と大きな耳から察するに、大地の種族ドワーフだと思えた。「お前に、「聖女」の身柄確保を頼みたい」「「聖女」…だと?」 ジャカンと呼ばれた男が、その太い眉の片方を大きく上げる。 明らかに不服そうな様子だ。「そんな些事《さじ》のために、ワシを呼んだのか?」「些事とはご挨拶だな」 対する白髪の男性は、極めて穏やかな声で話す。 見た目も雰囲気も全くの正反対の2人だが、そこには奇妙な親しみのようなものがあった。「我らの悲願のために、「聖女」は必要不可欠であろう?」「然《しか》り…されど、たかが小娘1人…如何様《いかよう》にもなろう」「そうとも言えないのだよ」 白髪の男性は、小さくため息をつき、ジャカンと呼ばれた男の前に立つ。 長身故に、2人が並ぶとその身長差は大きく、まるで親子ほどもある。「「聖女」と共にいるのは、「巨人討伐者《ジャイアン
last update最終更新日 : 2026-08-07
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第四章 中編 「鬼神」

「ここか…!」 マークが感嘆の声を上げた。 巻物に書かれていた鉱山跡は、思い他あっさりと見つかった。道なき道を進んだ先に、廃墟と化した採掘遺構が唐突に現れたのだ。とはいえ、地図がなければその発見は困難だったかもしれない。 かつては大勢の人々がここで採掘に勤しんでいたのだろう。半ば崩れた家屋がいくつも並んでいる。 微妙な生活感を残した遺構は、どこか物悲しさを感じさせた。「あれが入口だな」 太い角材で補強された、大きな穴がぽっかりと、岩肌に口を開けていた。 鉄格子が嵌められ、施錠もされているようだったが、そんなものは熟練の斥候《スカウト》にかかればお手のもの。ものの数秒で封印は解かれてしまった。「ただの鉱山跡地だから、罠の類はないと思うが…念の為、慎重にな」 ケーベストの言葉に、全員が無言で頷く。普段はだらしないが、こういう時の彼には従うのがベストだと、もう分かりきっていた。 隊列はケーベストを先頭に、次いでマークとセイザンが並び、その後ろにレイナとアスリィ、そして殿《しんがり》をアルバが担当した。 古びた鉱山の内部。ところどころが木枠で補強されてはいるが、崩れている箇所も少なくない。 レイナの杖の先に灯った魔力による光と、ケーベストが持つランタンの灯り。2つの光源が、延々と続く岩肌の壁を照らし出していた。「こういう洞窟探索も久しぶりだな」「罠もなさそうだし、魔獣《モンスター》もいないんでしょ? 楽勝ね」「あんまり気を抜いちゃダメだと思うけど…」 セイザン、アスリィ、そしてレイナ。それぞれが思い思いに言葉を紡ぐ。 張り合いがない、というと語弊があるが、障害らしい障害のない鉱山内部の探索で、一行はいつもより緩い雰囲気になっていた。「…穴に落ちるぞ」「え?」 不意に、最後尾のアルバが口を開いた。寡黙で、普段はほとんど何も話さない彼の言葉に、アスリィは振り返りながら目を丸くした。 瞬間、彼女の足元が崩れた。「きゃあっ
last update最終更新日 : 2026-08-14
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