เข้าสู่ระบบ「ここか…!」
マークが感嘆の声を上げた。 巻物に書かれていた鉱山跡は、思い他あっさりと見つかった。道なき道を進んだ先に、廃墟と化した採掘遺構が唐突に現れたのだ。とはいえ、地図がなければその発見は困難だったかもしれない。 かつては大勢の人々がここで採掘に勤しんでいたのだろう。半ば崩れた家屋がいくつも並んでいる。 微妙な生活感を残した遺構は、どこか物悲しさを感じさせた。「あれが入口だな」 太い角材で補強された、大きな穴がぽっかりと、岩肌に口を開けていた。 鉄格子が嵌められ、施錠もされているようだったが、そんなものは熟練の斥候《スカウト》にかかればお手のもの。ものの数秒で封印は解かれてしまった。「ただの鉱山跡地だから、罠の類はないと思うが…念の為、慎重にな」 ケーベストの言葉に、全員が無言で頷く。普段はだらしないが、こういう時の彼には従うのがベストだと、もう分かりきっていた。 隊列はケーベストを先頭に、次いでマークと「ここか…!」 マークが感嘆の声を上げた。 巻物に書かれていた鉱山跡は、思い他あっさりと見つかった。道なき道を進んだ先に、廃墟と化した採掘遺構が唐突に現れたのだ。とはいえ、地図がなければその発見は困難だったかもしれない。 かつては大勢の人々がここで採掘に勤しんでいたのだろう。半ば崩れた家屋がいくつも並んでいる。 微妙な生活感を残した遺構は、どこか物悲しさを感じさせた。「あれが入口だな」 太い角材で補強された、大きな穴がぽっかりと、岩肌に口を開けていた。 鉄格子が嵌められ、施錠もされているようだったが、そんなものは熟練の斥候《スカウト》にかかればお手のもの。ものの数秒で封印は解かれてしまった。「ただの鉱山跡地だから、罠の類はないと思うが…念の為、慎重にな」 ケーベストの言葉に、全員が無言で頷く。普段はだらしないが、こういう時の彼には従うのがベストだと、もう分かりきっていた。 隊列はケーベストを先頭に、次いでマークとセイザンが並び、その後ろにレイナとアスリィ、そして殿《しんがり》をアルバが担当した。 古びた鉱山の内部。ところどころが木枠で補強されてはいるが、崩れている箇所も少なくない。 レイナの杖の先に灯った魔力による光と、ケーベストが持つランタンの灯り。2つの光源が、延々と続く岩肌の壁を照らし出していた。「こういう洞窟探索も久しぶりだな」「罠もなさそうだし、魔獣《モンスター》もいないんでしょ? 楽勝ね」「あんまり気を抜いちゃダメだと思うけど…」 セイザン、アスリィ、そしてレイナ。それぞれが思い思いに言葉を紡ぐ。 張り合いがない、というと語弊があるが、障害らしい障害のない鉱山内部の探索で、一行はいつもより緩い雰囲気になっていた。「…穴に落ちるぞ」「え?」 不意に、最後尾のアルバが口を開いた。寡黙で、普段はほとんど何も話さない彼の言葉に、アスリィは振り返りながら目を丸くした。 瞬間、彼女の足元が崩れた。「きゃあっ
崖の上にそびえ立つ古城。 その主塔にある一室にて、白髪の男性が立っている。 白を基調とした室内には、同じく白く輝く調度品が多数飾られている。申し訳程度に、金銀の装飾も施されているが、ほぼ白に支配されたその部屋は、やや質素とも思えた。「何用だ?」 そんな部屋に、全く似つかわしくない声。「来たか...ジャカン」 バルコニーに立ち、星空を見上げていた白髪の男が、太い声に反応して振り返る。 重い足音が、一歩、また一歩と響く。 月明かりに照らされた先。 そこには、やはり部屋の雰囲気には全く合わない、筋肉の塊のような男が立っていた。 歳の頃はおそらく5、60歳。顔に刻まれた皺から、老齢なのは間違いない。しかし、その首から下は、顔からは想像もできないほどに鍛え上げられている。 黒い武道着から覗く胸元は、いかなる剣さえ通さないように分厚く、強固に見えた。 破れた袖から伸びる腕も、大木のような太さを持ち、脚もまた同様だった。 ただ、その身長は極端に低い。浅黒い肌と大きな耳から察するに、大地の種族ドワーフだと思えた。「お前に、「聖女」の身柄確保を頼みたい」「「聖女」…だと?」 ジャカンと呼ばれた男が、その太い眉の片方を大きく上げる。 明らかに不服そうな様子だ。「そんな些事《さじ》のために、ワシを呼んだのか?」「些事とはご挨拶だな」 対する白髪の男性は、極めて穏やかな声で話す。 見た目も雰囲気も全くの正反対の2人だが、そこには奇妙な親しみのようなものがあった。「我らの悲願のために、「聖女」は必要不可欠であろう?」「然《しか》り…されど、たかが小娘1人…如何様《いかよう》にもなろう」「そうとも言えないのだよ」 白髪の男性は、小さくため息をつき、ジャカンと呼ばれた男の前に立つ。 長身故に、2人が並ぶとその身長差は大きく、まるで親子ほどもある。「「聖女」と共にいるのは、「巨人討伐者《ジャイアン
再び、時間を少し遡る。 セイザンとアスリィの2人は、サイレスの私室の扉をゆっくりと開けた。 今は深夜である。サイレスはおそらく貴族らしく、大きな寝具に体を横たえて寝ている。そう思っていた。「な…に…?」 セイザンが目を見開く。 そこには、ソファの上で踏ん反り変えりながら、ニヤニヤとした笑みを浮かべた人物がいたから。 イズナー卿から聞いていた通りの、やや肥満体質の30絡みの男性──サイレスに間違いなかった。 さらに、そのそばには涼しげな顔をして立つ、やけに色白な青年の姿があった。「よう、お出ましかい」「ど、どういうこと…?」 ゆっくり立ち上がるサイレス。まるで自分たちが来ることを知っていたかのような物言いに、アスリィは恐怖にも似た感覚を覚える。 彼女を庇うように、セイザンは剣を構えて前に立った。「あんた、サイレス卿…だよな? 俺たちが来るのを知ってたのか?」「あぁ、知っていたとも」 サイレスは傍に立つ謎の青年の隣に立つ。 そして、唐突にその身体から力が抜けたように倒れた。「えっ…?」 セイザンも、そしてアスリィも、目の前の状況が分からない。 サイレスは意識を失ったように、横たわったまま動かない。呼吸はしているようだったから、生きてはいるらしい。「もう、彼は用済みなので、眠ってもらいました」 穏やかな声。 色白の青年は、その真紅の瞳で足元に倒れる男性を見下ろす。 長い黒髪と、同じく黒の装束に身を包んだ、20代と思われる風貌。しかし、その異様なまでに白い肌と、そこにうっすら浮かぶ青い血管のような筋。 それらに、セイザンもアスリィも見覚えがあった。「ま、まさか…あんた、魔族か…?」「…あぁ、そうですよ」 セイザンの質問にあっさりと答えると、青年はその目の色を変える。赤黒く変化した眼球が、ゆっくりと揺らめく炎のように変化した。それは、あの遺跡で見た魔族と同じもの。 さ
深夜。虫たちの声だけが小さく響く。 マークたち一行の姿は、王都の郊外、イズナー卿の弟──サイレスの屋敷を望む丘の上にあった。 イズナー卿からの依頼を受けてから2日後。準備を整えた5人は、ついに屋敷への潜入を開始することにした。「なんでも、サイレスってやつは凄腕の用心棒を雇ってるらしいぞ」 セイザンの言葉に、マークは少し心を踊らせていた。 街で聞いた話では、サイレスは兄であるイズナー卿とはあまり仲も良くなく、屋敷の自室にこもっていることが多い、内向的な人物らしい。 他人に対する興味も薄いため、使用人も最低限しか雇わず、私兵と呼べるものもいない。それ故に、自衛のために用心棒を1人、雇っているということだった。「凄腕か...こんな時じゃなければ、ぜひ剣を交えてみたいもんだぜ」「残念、剣じゃなくて格闘技を使う用心棒って話だったな」 腰の剣に手を置き、ワクワクした様子の親友。セイザンはそれに軽口で返す。「さて、じゃあ、手筈《てはず》通り、3手に別れて行動開始だな」 潜入任務なら当然、斥候《スカウト》であるケーベストの専売である。各人のスキルを考慮し、彼は手分けしての屋敷潜入作戦を考案していた。「まずは...音を消すぞ」 セイザンが新たに習得した、風の精霊魔術である「静音《サイレンス》」を発動させる。空気の流れを操作し、音を外部に漏らさないようにする術だ。「次は私...透明《インビジブル》...!」 続いてレイナが、姿を見えなくする言語魔術を発動する。 5人の音を消え、姿も見えなくなった。これでよほどのことがなければ、潜入がバレることはない。 とはいえ、それぞれの魔術は一定時間で効果が切れる。素早く潜入して、短時間で調査を終え、迅速に脱出。まさにスピード勝負。 それ故に、イズナー卿から事前に受け取っていた、サイレス邸の間取り図をもとに、3箇所を同時に調べるという作戦を立てた。 内訳はマークとレイナ、セイザンとアスリィ、そしてケーベスト単独。 それ
「封印が弱まってきている」 月明かりが照らす夜。 切り立った崖の上に立つ古城。高くそびえ立つその主塔のバルコニーに、1つの人影が立っていた。 黄金の錫杖を手にした、白髪の男性。しかし外見は若い。せいぜい30代といったところか。「魔族たちはさらに活性化するだろう」 白髪の男性は眼下に広がる海原を見ている。波がうねりを上げ、岩盤を激しく叩き削っていく。 長い長い年月をかけ、ほんの少しずつ侵食されていく岩肌。それはまるで、竜たちによって施された封印が、徐々に弱まっていく様子を表しているようだった。「封印を解く鍵...「聖女」を探せ」 その声は男性から発せられたものではない。そして近くに、他の人物の姿もなかった。 何処からか囁くその声に、男性はじっと耳を傾けている。「全てはお前の「望み」を叶えるため...」「私の、願い...」 小さく、男性が呟く。表情のなかったその目に、少しずつ感情の光が灯る。 ただしそれは、深い憎悪に満ちた、黒い光とも言うべきものだ。『人間を、抹殺する...!』 男性の声と、謎の声。2つが重なり、同じ言葉を放つ。『探せ、捕らえるのだ...「聖女」を...!』 その声に応えるように、1匹の蝙蝠《こうもり》が月夜の空を舞っていった。 あのゴブリン掃討作戦から、半年の月日が流れていた。 マークたち一行は、「巨人討伐者《ジャイアントバスター》」としてそれなりに名が知られるようになり、様々な依頼をこなしていった。 ある時は、森に住み着いた凶悪な魔獣《モンスター》を討伐。 またある時は、夜の街を騒がせる連続殺人犯《シリアルキラー》を捕縛。 さらにある時は、古代文明の遺跡にて、物珍しい品を多数発見。 それらを通して、マークたちは自らの成長を確かに感じていた。新たな装備を購入・入手したのもあるが、より肉体や精神が研ぎ澄まされていった自覚があった。 セイ
「こ、こいつは...ゴーレム...なのか...?」 雰囲気だけだが、1ヶ月前の遺跡調査の際に遭遇したゴーレムに似ていると、マークはふと零した。色こそ異なるが、魔力の光を放つ目などはそっくりだ。しかし、その威容は比べ物にならない。「ハハハァッ!古代ノ対魔族用ゴーレムダッ!」 巨人の足元に、あのシャーマンがいるのが見えた。勝ち誇ったような笑みを浮かべ、汚い歯を剥き出しにしている。「...厄介なものを...」 小さく呟き、青髪の騎士がゴーレムの前に立つ。そして手にする剣を大きく振りかざした。 次の瞬間、竜が象られた剣は、その形を変えていた。「なっ...?」 マークだけでなく、5人全員がその目を疑う。片手半剣《バスタードソード》と呼ばれるサイズだったはずのそれは、瞬きをする間に二回りは大きい大剣《グレートソード》へと変わっていた。 伝説に聞く竜が象られた剣。ただの虚仮威《こけおど》しではないだろうとは思っていたが、形が変化するなど誰が予想したか。「無駄ダ無駄ダ! ヤレェッ!」 シャーマンが手を掲げ命令を下す。見ればその手に、赤く輝く宝玉のようなものを持っている。それでゴーレムを操っているのか。 考える間もなく、ゴーレムはゆっくりと動き出す。一歩ずつ、その巨大な足が地面を踏みしめ、大きな足跡を刻む。次いで、胸部に描かれた紋様のようなものが赤く輝き始めた。「な、なんか分からないが、一旦離れろ!」 セイザンの叫びと共に、マークらはゴーレムから一斉に距離を取った。しかし、青髪の騎士はその場から動かない。「ダメ、逃げてっ!」 レイナが叫んだ。 そして、ゴーレムの胸部から真っ赤な閃光が迸《ほとばし》る。「ギャアァァァッ!」 わけも分からずその場に留まっていたオーガが、悲痛な声を挙げながら燃え上がる。ゴーレムから放たれた光。それは凄まじい熱量を持つ、熱線とも言うべきものだった。 青髪の騎士も、その赤い奔流に巻き込まれる。







