会社に新たな投資家が現れた。容姿端麗で、能力も家柄も申し分ないその人物の話題で、社内は持ちきりになっていた。その投資家とは、常盤駆(ときわ かける)だった。私・瀬戸柚羽(せと ゆずは)の夫である。投資側が彼だと知った時、柳雪乃(やなぎ ゆきの)との声なき戦いはすでに私の負けが確定したのだと思い知らされた。給湯室では、同僚たちが新たな投資家の噂話で盛り上がっていた。「今回の投資元、常盤グループのCEOらしいよ。常盤家の御曹司だって」「これは絶対に逃せない大チャンスだよ!もし私たちのチームのデザインが目に留まれば、今後のノルマは心配無用だね」「でもたぶん、雪乃さんのチームに持っていかれると思うな。聞いたんだけど、常盤社長の憧れの人がうちのデザイン部にいるらしいの。それが雪乃さんなんだって」「雪乃さんと常盤社長は大学の同級生で、お互い初恋同士なんだって。今回の投資も完全に雪乃さん目当てらしいよ」その言葉を耳にした瞬間、心臓がぎゅっと締め付けられ、ひどく落ち込んだ気分のままオフィスへと戻った。駆が投資家だという噂はすでに広まっていた。大林部長が私と雪乃を呼び出した。「瀬戸さん、柳さん。今回うちのプロジェクトに出資してくれるのは、常盤社長だ。君たち二人はそれぞれのチームを率いて企画案を一つずつ作成し、一ヶ月後に提出してくれ」部長は意味深な視線を雪乃に向け、あからさまな感嘆の色を浮かべていた。彼も例の噂を耳にし、常盤グループがうちの会社を選んだ理由を察したのだろう。オフィスを出る前から、こちらのチームが作る企画案は無駄骨になるだろうと予感していた。雪乃と競ったところで、ただの当て馬で終わる可能性が高い。オフィスを出ると、雪乃が立ち止まった。私たちは真正面から向き合う。視線が交差すると、彼女は微かに口角を上げた。得意げで、ひどく挑発的な笑みだった。「柚羽、正々堂々と勝負しましょう」そう口では言いながらも、その態度はすでに勝利を確信しているようだった。私たち二人の間で、駆が間違いなく自分を選ぶと分かりきっているからだ。堂々と歩き去っていく彼女の背中を見つめ、私も踵を返した。デザイン部はお祭り騒ぎになっていた。もし私のチームの企画案がボツになれば、今後のプロジェクト期間中、
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