警視庁第一課臨時警部、という胡散臭い肩書きが手渡された名刺に記されていた。聞いたこともない役職だ。しかも臨時ってなんだよ? と、鈴代賢季は困惑しつつ、目の前にいる刑事を歓迎する。自分と五つ六つしか年が違わないであろう二十代後半のエリート警部、平井柊太を。「鈴代賢季さんですね。鈴代夕起久殺人未遂事件について少々お時間を……」 「構いませんよ。僕が疑われているのは自分でもわかっていますから」 平井が言い切る前に、快く応じる賢季。彼は応接室の主人椅子に腰掛け、改めて平井と向き合う。それも、楽しそうに。 逆に、疑われているというのに、それを不快とも思わず、むしろ面白がっている青年に、平井は苦笑を浮かべる。 ……こいつは一筋縄ではいかねぇな。 貴族然とした振る舞いは鈴代一族の血を受け継いでいるからか、どこまでも自然で、平井も醸し出される彼の気品に魅了されてしまう。 鈴代賢季。鈴代財閥を牛耳る鈴代夕起久の甥に当たる。現在私立青阪学院大学理学部在学中の二十二歳。漆黒の髪と猛禽類のように鋭い灰色の瞳を持つ青年だ。「それで、どこまで調べているんですか?」 単刀直入に、賢季は尋ねる。命に別状はないにしろ、伯父は故意に何者かに狙われたことに違いはない。できることなら警察組織にとっとと犯人を捕まえてもらいたいものだが……伯父を殺そうとした凶器は不明、何らかの毒が肩口から体内に侵入した、という説明だけではまだ何もわかっていないのと同じではないか、と賢季は思う。 そんな賢季を見越したように、平井は口を開く。「凶器はおそらく針状のものでしょう。先端に遅効性の毒を塗ったものと思われます。毒成分はあいにく、解析してみたものの、たんぱく質によって溶けてしまったからか、つきとめることができなかったのですが……神経性の毒でしょうね」 毒性は強かったようだが、微量だったため、被害者は命を落とすまでには至らなかったと言う。訥々と語る平井に、賢季は頷きながら。「遅効性の毒、という根拠は」 「現場にいらしたのは被害者の実娘である泉観さんと、二人の
Terakhir Diperbarui : 2026-07-14 Baca selengkapnya