地獄を抜けた私に、子連れ元夫が縋る のすべてのチャプター: チャプター 11

11 チャプター

第11話

「圭介、失ってから気づく気持ちなんて、何の価値もないわ。そもそも私とあなたの間には、愛情なんて最初からなかったけど。あなたたちが今さら私を必要としてるのだって、ただ不便になったからでしょう。私がしてきたことなんて、気の利く家政婦を一人雇えば済む。すぐ慣れるわ。これで最後。息子を連れて帰って。もう二度と、私の前に来ないで」私の言葉があまりに容赦なく冷徹だったせいか、あるいは圭介にも男としてのささやかなプライドがあったせいか、それきりあの親子の姿が私の前に現れることはなくなった。私は心底、せいせいした。それからの毎日は穏やかだった。家でイラストの依頼をこなし、時々話題のカフェや観光地を巡り、母の見舞いにも通った。母は無事に退院する際、実家にも、私のマンションにも帰りたがらなかった。「療養施設に入りたいわ。あそこなら人も多いし、おしゃべりする相手も見つかりそうだから」母の気持ちはよくわかった。私と同じで、母も人が好きなのだ。療養施設に入ってからは、個別にヘルパーも手配して、身の回りの世話を頼んだ。怪我がすっかりよくなった頃、また会いに行くと、母は陽の当たる庭で何人ものおばあさんたちと楽しそうにおしゃべりをしていた。これまで見たことのないような表情で、肩の力が抜けた、心からくつろいだ笑顔だった。ここでの暮らしが、本当に楽しいのだろう。おしゃべりが終わって談話室に戻った母のところへ行き、もうすぐ海外を拠点に活動するつもりだと伝えた。「そう……あなた一人で、向こうに行くのね。ちゃんと自分の体、大事にするのよ。こっちは何も心配しなくていいから、大丈夫だからね」「わかってる。3か月に一度は必ず帰ってくるし、出張のついでに戻れることもあると思うわ」「そう、それならいいわ……」私はそっと手を伸ばし、ティッシュで母の頬を伝う涙を拭った。自分の目にも、じんわりと温かい涙がにじんでいるのがわかった。「もう泣かないで。今、こうしてこんなに穏やかに過ごせているんだから、それで十分よ」私が海外へ出発するまでの1か月の間に、私の知らないところで、いろいろなことが起きていた。圭介の会社で重大な情報漏洩があり、事業計画書が盗まれた。最終的に犯人は姫花だとわかったが、被害はすでに取り返しがつかないところまで進んでいたらしい。ラ
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