Alle Kapitel von 結婚記念日に愛人とデート?こんな夫は離婚一択: Kapitel 1 – Kapitel 8

8 Kapitel

第1話

初恋の相手・葉山萌香(はやま もえか)と一緒になるために、桐谷俊輔(きりたに しゅんすけ)が離婚を要求してきたのは、これで38回目だった。私・桐谷梨乃(きりたに りの)は俊輔がペアの水着を購入したことに気づいた。俊輔は平然とした顔で言った。「結婚記念日にサプライズをしようと思ってたんだ。もう知ってしまったんなら、当日は海で楽しもう」あの日、私は早めに待ち合わせ場所に行ったけれど、結局砂浜で俊輔を一晩待ち続けることになった。スマホを見ると、萌香がインスタを更新していた。【海は見に行けなかったけど、あの人と世界旅行に来ちゃった。最高に幸せ】昔の私なら、きっと騒ぎ立てて、無理やり俊輔に謝らせていたはずだ。けれど今回ばかりは、ふと、もう何もかもどうでもよくなった。……砂浜で一晩中冷たい風に当たり、私は熱を出してしまった。ホテルに戻ろうとした時、突然スマホが激しく震え、俊輔から何度も着信があった。私は顔をしかめながら、電話に出た。電話越しに、俊輔のうんざりした声が聞こえてくる。「梨乃、おじいさんに何を吹き込んだんだ?」私は眉をひそめた。「本当のことを話しただけよ」何も嘘なんてついていない。俊輔の祖父・桐谷裕貴(きりたに ゆうき)に、私たちがどうやって結婚記念日を過ごしたか聞かれたのだ。俊輔が萌香を連れて世界旅行に行っていたことを伝えただけだ。俊輔は苛立ちを隠さずに言った。「ホテルで待ってろ。迎えに行く」私が海に来ていることは知っていたんだ。私を一晩中ここで待たせていた自覚だってあったのに。それでも俊輔は黙って、萌香と世界旅行に行っていたんだ。もしかすると、萌香と二人で私のことを「愚かな女」だと笑っていたかもしれない。実際、私は愚かだった。俊輔が改心してくれるかもしれないと期待するなんて。黙り込む私に、俊輔が話を続けた。「世界旅行は中止になった。萌香がひどく落ち込んでいるんだから、今度はちゃんと謝りに行ってくれよ」笑わせるな。正妻である私が、愛人に謝らないといけないんだなんて。私はスマホを強く握り、掠れた声で答えた。「断るわ」それを聞いて、俊輔は鼻で笑った。「またおじいさんに泣きつくつもりか?いつもそのやり方だな。卑怯な女だぜ」呆れた私は、そのまま電話を切
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第2話

点滴が終わると、私はベッドから降りて医療費を払い、そのまま病院を後にした。海沿いの風は体に冷たく突き刺さり、思わず身震いをした。タクシーを呼ぼうとしたその時、目の前にマセラティが止まった。派手な赤色は、俊輔のお気に入りだ。助手席の窓がゆっくりと開き、人当たりのよさそうな笑みを浮かべた、萌香の顔が現れた。彼女は笑顔のまま挨拶をしてきた。「梨乃さん!ちょうど直美さんが私と買い物に行きたいとおっしゃったから、俊輔くんが私を乗せてくれたの」桐谷直美(きりたに なおみ)は、俊輔の母親だ。直美は萌香を溺愛しており、俊輔と私が結婚して8年経っても、まだ萌香を桐谷家の嫁にしたがっていた。桐谷家で私に親しく接してくれるのは裕貴だけで、それ以外の人間はみんな冷たい目を向けてくるのだ。最初は落ち込んでいたが、今ではどうでもよくなった。俊輔は私を嫌そうに見やり、「早く乗れ。時間を無駄にするな」と言った。萌香が後部座席に移動する気配も全くなかった。私はその場から一歩も動かなかった。私が動かないのを見て、萌香は首を傾げ、平然とした様子でこう言った。「梨乃さん、後部座席に座ってくれない?ちょうど今、俊輔くんと会社の件で打ち合わせをしなくちゃいけないの。ごめんなさいね」私は萌香を冷ややかに見下ろした。「副社長である私じゃなくて、ただのモデルであるあなたと会社の話をするの?」萌香はすぐに顔を引きつらせた。俊輔も苛立った様子でサングラスを外し、私を睨みつけた。「梨乃、いい加減にしろ。俺たちはわざわざ迎えに来てやってるんだぞ。その態度は何だ」隣で萌香が笑顔を作って言った。「梨乃さん、私たちはもう長い付き合いなのに、どうしてまだ私のことが気に食わないの?もし私が俊輔くんと一緒になりたかったら、もうとっくにそうしているでしょ?」私は萌香をじっと見たが、何も言わなかった。当時、萌香と俊輔が別れたのは、彼女の素行に問題があったからだ。そして裕貴は、そんな人間が大嫌いなのだ。裕貴と私は、萌香がどのような下劣な人間なのか分かっていた。あいにく、俊輔だけがそれを理解していないのだ。私は一歩後ろへ下がり、車から距離を置いた。「迎えはいらないわ。タクシーに乗って帰るから」俊輔が眉間にしわを寄せた。「梨乃、またなにか企んでる
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第3話

「離婚するのか?」背後から、俊輔の声が響いた。振り返ると、俊輔が険しい顔で立っていた。俊輔の目の前で、私はデスクに向かい、署名欄にサインをした。そして、記入済みの離婚届と離婚協議書を手に、俊輔のもとへ歩み寄る。「ずっと離婚したかったでしょう?望み通りにしてあげる」俊輔は私に歩み寄り、冷たく吐き捨てた。「頭がおかしいのか?おじいさんの前で被害者ぶるのはもうやめろ」私は言い返した。「もうどうでもいいわ。本命の女が外で待っているでしょ?」私が本気であることを感じ取ったのか、俊輔は離婚の書類を奪い取るとゴミ箱に投げ捨てた。「やめろ、梨乃。萌香は何も悪くないだろ。彼女に怒ってどうするんだ。それに今日は、結婚記念日の埋め合わせがしたいんだよ。離婚だなんて縁起の悪い話はやめてくれ」そう言いながら、俊輔は私の腰に腕を回そうとしてきた。鼻を突くような不快な香水の匂いが、彼の体から漂っている。萌香が一番好きな匂いだ。しかも俊輔の首元には、萌香のリップと、同じ色のキスマークが残っていた。俊輔が黙ったままの私の手を引き、リビングへと連れて行った。テーブルには豪華なケーキが置かれている。俊輔は得意げにそのケーキを指差した。「ほら、東区までわざわざ梨乃の好きな店に行って買ってきたんだぞ」私は一歩後ずさりし、距離を取りながら冷ややかな笑みを浮かべた。「結婚記念日の埋め合わせ?私がいちごアレルギーであることも忘れて、よく言えたわね?」私が重度のいちごアレルギーであることは、幼い頃に俊輔が一番に知ったのに。小さい頃、二人でいちご狩りに行って、夢中になっていちごを食べていた。すると、その夜に全身に蕁麻疹が広がって高熱を出し、私は意識を失ってしまった。病院へ運ばれ、ようやく自分が「いちごアレルギー」であることを知ったのだ。俊輔は深く後悔し、何日も眠らずに看病してくれた。それ以来、いちごは私の生活から消えた。あの日、萌香が現れるまでは。萌香はいちごが大好物で、何でもかんでもいちご味のものを食べていた。いつの間にか、俊輔は私のアレルギーのことなんて綺麗に忘れ、萌香の好みだけを優先するようになったのだ。私の言葉を聞いて、俊輔はハッとして、説明の言葉が見つからない様子だった。私は鼻で笑った
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第4話

桐谷家を出てから、大学の同窓会までは、俊輔と顔を合わせていなかった。本来同窓会に行くつもりはなかったけれど、入江律(いりえ りつ)も来ると聞き、私は顔を出すことにした。律は、学生時代の学級委員だった。卒業後すぐに留学し、法律の博士号を取った優秀な人だ。そして、離婚案件を専門に扱っていた。今や若くして名高いトップクラスの弁護士だ。律が戻ってきたのなら、この好機を逃す手はない。会場に入った瞬間、私はすぐに律の姿を見つけた。律はカウンターの端に座り、同級生たちと楽しげに話している。私はグラスを手に持ち、彼の方へ歩み寄った。私と目が合った律は、一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうに顔をほころばせた。私は持っていたグラスを一つ彼に差し出し、軽く乾杯をした。「久しぶりね。同窓会に出席したなんて卒業してから初めてじゃない?」律は笑って返した。「君も初めてだろ?」私は言葉に詰まった。これまでの同窓会は、すべて俊輔が主催していたのだ。そして彼の隣には、いつも決まって萌香の姿があった。私はわざわざ屈辱を味わいに行きたくなかった。律は黙ったままの私を見つめ、再びグラスを掲げて合わせてくれた。「回りくどい話はしなくていい。今回来たのは、やはり桐谷との離婚の話か?」「バレてるわね」と私は小さく頷いた。律と私はもともと仲が良かった。俊輔と付き合う前は、最高の友人同士だったから。ただ、俊輔が律のことを嫌っていて、会うたびに律の陰口を言っていた。私が俊輔と付き合ってから、次第に律と連絡を取らなくなった。律はそれ以上話を続けず、会場の入口へ視線をやった。私も思わず振り返る。そこには、萌香を連れた俊輔の姿があった。二人はお揃いの色の礼服に身を包み、まるでお似合いのカップルといった様子だ。俊輔は萌香の腰に手を回し、非常に親しげな態度で入ってきた。二人が現れた瞬間、室内の空気が変わり、皆の視線が一斉に私に集まった。私が騒ぐ様子を期待しているのだろう。しかし私は落ち着いた表情で二人を見やると、すぐに視線を律へと戻した。律も二人から目線を外し、私に向かって静かに言った。「あんなクズ男、さっさと別れた方が身のためだよ」私もその意見に深く同意した。「じゃあ、離婚のこと
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第5話

個室が静まり返り、みんな一斉に俊輔のほうを見た。俊輔も、萌香がそんな質問をするとは思っていなかったようだ。だが彼はちらりと私を見ただけで、首を振った。「もちろんだ」個室の空気が凍り付いた。全員の視線がまた私に集中する。萌香が挑戦的な眼差しを向けてきた。それでも私は、全く動じなかった。同窓会がお開きになり、お酒に酔っていた私は、タクシーを呼ぼうとした。すると俊輔が私のそばに来た。「まだ前と同じところに住んでるんだろ?送ってくよ」私は彼を一瞥した。「別にいいわ」私がさっきのことで怒っていると勘違いした俊輔は、弁解し始めた。「萌香が言ったことに乗っかって、冗談のつもりで言っただけだぞ?怒るなよ」怒っている?そんな可笑しなこと言わないでほしい。私は首を振った。「怒ってないわ。あなたが葉山さんと何をしていようが、私にはもう何の関係もないわ」俊輔は私に近づき、手を引こうとした。「分かった。萌香とは距離を置くようにするから。だから、怒らないでくれよ」俊輔が何を考えているのか、私にはどうしても理解できなかった。俊輔は私との離婚を拒みながら、萌香とも別れたくないのだ。私は彼の手を振り払った。「触らないで。気持ち悪い」俊輔は不機嫌になった。「梨乃、俺は寄り添ってあげたんだぞ。これ以上騒ぎ立てるなら、もう陽太に会わせないからな」こんな時になって、まだ子どもをダシにして脅してくるなんて。私は動じなかった。「陽太は桐谷家の人間で、幼い頃から私と一緒に暮らしてこなかったわね。彼だって私を母親とは認めてないんだし、会わなくてもいいよ」私が陽太を諦めるなんて、想像もしていなかったのだろう。俊輔は眉をひそめて聞き返した。「本気なのか?」私が答えようとしたその時、律が隣に来た。律は俊輔に自分の名刺を差し出した。「私の依頼人との離婚交渉についてはすべて私に一任されています。以降のやり取りは、そちらの弁護士から私へ連絡を入れる形にしてください」俊輔は律の名刺に見向きもしなかった。律を指さしながら、私に向かって怒鳴り散らした。「俺と離婚しようとしてるのは、こいつのせいか!お前、浮気でもしてたのか!」私はその発言に呆れた。浮気しているのは誰なのか、言わなくてもわかるでしょう?律が不快
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第6話

同窓会が終わると、私はすぐに律に連絡し、離婚するための準備を始めた。ところが、俊輔は手続きに応じてくれなかった。陽太で私を脅すのは無駄だと気づくと、今度は人事部を通じて、私を会社から解雇しようとした。出産してから、副社長の肩書きは、名ばかりになっていたからだ。私が仕事をしたくなかったわけじゃない。俊輔がなにもやらせてくれなかったのだ。俊輔には、私にこれ以上会社の運営に口を出させる勇気がなかった。父と深い仲の役員たちが、私を次期社長に押し立てるのを恐れたからだ。何せ今の会社の成功は、私の実家――白川家のおかげなのだから。解雇通知をもらった私は、すぐに服を着替えて会社へ向かった。俊輔の社長室へ向かうと、彼の秘書が私を止めた。「奥様、いらしたのですか。あいにく社長はただ今不在でして……」私は秘書の目が泳いでいることに気づき、全てを察した。動揺が顔に出すぎよ。私は部屋の中に目を向けた。ドアもブラインドも閉ざされていたけれど、ドアの隙間から、萌香の甘ったるい香水の匂いが漂っていた。私は隠し持っていたボイスレコーダーを作動させると、胸ポケットにそれを隠し、そのままドアに向かった。背後で秘書が必死に私を止めようとした。私は気にせず、ドアを押し開いた。ソファの上に、俊輔が腰を下ろしていた。その膝の上には萌香がまたがり、俊輔のネクタイを掴んでいた。私の姿を捉えた瞬間、俊輔は萌香を突き飛ばし、青ざめた表情でこちらを見た。彼はあわてて私の元へ歩み寄り、おどおどとした様子で尋ねた。「梨乃、どうしたんだ?」私はそこにあった椅子に腰を下ろし、冷ややかに告げた。「人事部から連絡をもらったわ。会って話そうと思って来たけれど……お邪魔だったかしら?」ソファに座り直した萌香が、笑みを浮かべて言った。「邪魔だって分かってるなら帰れば?」俊輔は後ろを振り返ると、鋭く萌香を怒鳴った。「黙れ!」萌香は信じられないという顔をした。「どうして、私に怒るの?」俊輔は萌香を一瞥もせず、私の方に向かって膝をついた。「梨乃、違うんだ。こいつが勝手に寄ってきただけで……俺はちゃんと断っていたんだ。信じてくれ」激昂した萌香が俊輔に飛びかかり、シャツを掴んだ。「何言ってんの?私が帰国した時に連絡してきたのはあなた
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第7話

俊輔は離婚に同意しないし、株式の返還にも応じたくなかった。もちろん、彼の思い通りにはさせない。萌香が海外のファッションショーへ向かった日のことだ。私は迷わず、録音していたデータをネットに流した。それまで、ネット上での萌香への評判は良いものばかりだった。そのため、私の投稿はまたたく間に大きな波紋を呼んだ。【有名企業社長の俊輔が、人気モデルの萌香と不倫。会社を乗っ取るため、妻であり副社長の梨乃を解雇】【その不倫相手の萌香は愛人でありながら本妻を挑発するなど、あまりにも悪質だ】この2つの話題はネット上で瞬く間に広がった。ファッションショーの主役として登場を控えていた萌香は、運営サイドから、舞台には出るなと知らせられた。さらに、株価の急落に危機感を抱いた経営陣は、俊輔に圧力をかけ始めた。「株式をすべて梨乃さんに返せ」と。そもそも、俊輔が経営権を握れたのは、父と私の判断を信じてくれた株主たちの同意があってこそのことだ。もう私の両親もいない今、会社をただの他人である俊輔に渡すわけにはいかない。ネットでの炎上から1週間経ち、私は再び俊輔と会った。彼はボロアパートに身を隠し、世論が落ち着いてから私に会いに来たのだ。家の前で再会した俊輔は、もはや別人のようだった。わずか1週間で見違えるほど白髪が増え、肌にも深くしわが刻まれていた。まるで一気に数十歳、老け込んだかのようだった。見栄っ張りな俊輔にとって、華やかな生活こそがすべてだった。しかし今の俊輔は、身なりも構わず、無精髭を生やした姿でそこに立っていた。私を見つけるとすぐに近づいてきて、目を真っ赤にしてこう言った。「梨乃……本当に、もうやり直す余地はないのか?会社なんて捨てて、全財産をくれてやってもいい。ただ梨乃と一緒にいたいだけなんだ」私は首を振って答えた。「あの日、伝えたはずよ。もうあなたを愛してはいないし、やり直すつもりもないの」俊輔は涙をこぼし、すがるような目をした。「なぜそんなことを言うんだ?何年も、あんなに耐えてくれていたじゃないか?」私は冷ややかに笑い、その続きを口にした。「耐えてくれていたって?そうね。でも、私が耐え続けた結果、あなたは改心しないどころか、毎日私を傷つけてきた。だから、もう限界なの」私はバッグから
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第8話

離婚届が受理された日、空はとても晴れ渡っていた。役所から出ると、私は俊輔を一度も振り返ることなく、そのままタクシーで空港へ向かった。友人たちが、ようやく俊輔から離れられた私を祝おうと旅行を計画してくれたのだ。俊輔は昔から私が友人たちと遊ぶことを許してくれなかった。離婚した今、心ゆくまで楽しむことにした。旅行中、私はすべての悩みを忘れ去った。まるで子どものように友人たちとはしゃいだ。日の出を見たり、夜の街に繰り出したりして朝まで踊り明かした。自由気ままに、新しい生活の始まりを楽しんだ。そんな生活を1ヶ月ほど続けて、私はようやく帰国した。東都に到着した日、律が迎えに来てくれた。律を見た友人たちはひそひそと笑い合い、空気を察してすぐに解散してくれた。律は自然な様子で私のスーツケースを持ち、少し困ったような表情で私を見た。「梨乃、僕は都合のいい人間じゃないんだぞ」私は何のことか分からず、「え?」と聞き返した。律は失望したように首を振る。「離婚の手続きが終わったらすぐ1ヶ月も海外へ飛ぶなんて。僕から連絡しなきゃ、僕のことなんて忘れてたんじゃないのか?」やっと律が怒っている理由が分かった。私は苦笑して返した。「律は仕事で忙しい大物の弁護士さんでしょ。邪魔はできないと思って」律は眉をひそめた。「普段、僕の仕事なんてちっとも気にしていないくせに」私は律と軽口を叩きながら、私の自宅へ向かって車を走らせた。家の近くまで来ると、突然律が真剣な表情になった。彼は私の方を向いて聞いた。「桐谷のことだが、最近何か聞いてるか?」私は首を振った。「連絡は全然してないわ。どうかしたの?」律は少し沈黙し、言葉を選んで口を開いた。実は2日前、警察が萌香の遺体を発見したらしいんだ。死体の状態からして、生前に虐待を受けた可能性があり、身元の確認すら困難だったそうだ。遺体発見直後、俊輔が自首したという。「萌香が先に自分を殺そうとしてきたから、反撃した」というのが俊輔の言い分だった。警察の調べでも、その主張を裏付ける事実があった。ただ、俊輔の行為は正当防衛の範疇を超えていた。完全に殺人罪が適用されるようなことをしたのだ。現時点では、無期懲役となる可能性が極めて高いということだった。私はその
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