8回目の結婚記念日の朝、私、神谷莉子(かみや りこ)のもとに、神経を逆なでするメッセージが届いた。夫の神谷慧(かみや けい)が支援している女子大生、結城朱音(ゆうき あかね)からのものだった。写真の中の彼女は、私の結婚指輪をはめ、陽性反応の出た妊娠検査薬を手にしていた。【莉子さん、私たち、遊びじゃないんです。慧さんと別れてもらえませんか】【子どもも産めないのに、慧さんのそばに居続けるつもりですか?】私は画面をそのままスクリーンショットに収め、返信する代わりに慧へ送った。ほどなくして慧から電話がかかってきた。出るなり、頭ごなしに怒鳴りつけてきた。「朱音はちょっとふざけただけだろ!そんなことでいちいち騒ぐな。大人げないにもほどがある。お前のそういうところ、ほんと気持ち悪いんだよ!」電話の向こうからは、朱音のすすり泣く声も聞こえてきた。私は何も言わず、そのまま電話を切った。慧をブロックする前に、最後に一言だけ送った。【じゃあ、離婚しよう。これでもう、気持ち悪い私と一緒にいなくて済むでしょ】……トイレでさんざん吐いたあと、妊娠検査薬に出た陽性反応を見つめ、ようやく現実を受け入れた。ついさっきまで「子どもも産めないくせに」と罵られていた私が、妊娠している。「……ふっ」笑ったつもりだったのに、涙が頬を伝って落ちた。「どうして今なの……。パパはもう、ほかの人が好きなのに」私はその場にへたり込んだ。ようやくトイレを出ると、リビングのソファには慧が険しい顔で座っていた。かなり前から待っていたらしい。私が口を開くより先に、スマホの画面を目の前に突きつけてきた。「莉子、いい年して、あんな若い子相手に何やってるんだ。みっともないと思わないのか。今すぐ朱音に謝れ」私の額にはまだ冷や汗がにじんでいた。それでも、8年連れ添った夫は、私の様子など目に入っていないようだった。朱音を庇うことしか頭にないらしい。画面に目を落とすと、案の定、私を挑発したメッセージはすべて消されていた。残っているのは、朱音がしおらしく謝り、許しを乞う言葉だけだった。「慧、8年も一緒にいたんだから、私が理由もなくあんなことを言うと思う?先にあんなメッセージを送ってきたのは朱音よ。私は言い返しただけ。知らないふりしてるの?それとも、本当に何も知らな
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