「黒羽、お前それは……」「そうだよ。さすがにちょっとやりすぎだって……」 夕焼け空が広がる放課後の学校の屋上で、黄金色に染められた男子二人が一人の女子に対して口にした。隠し切れない戸惑いと、そして、これから目にするであろう悍ましい光景を想像しながら。「は? 何それ。やりすぎ? 別にどうってことないじゃない。それに、私は何もしてないし」「何もって、お前……さすがに」「さすがに、何? コイツが勝手に死ぬって言ってるだけじゃない。自分の意思で勝手にね」「勝手にって……」 ニヤケ顔の女子――黒羽霧は長い黒髪をさらりと手で流しながら飄々と言い放った。 僕――因果崎神と糸賀律は、そんな黒羽を見て背筋をゾッとさせた。コイツが今から律にさせようとしていることが本気であると確信したから。 僕達だけではない。小林と三井も同様だ。いつもは黒羽のマリオネットような二人だが、しかし、今はまるで違って見えた。 徐々に体温を失っていき、そのまま氷のように冷たくなるのではと錯覚してしまいそうになる程に怯えて見える。l「ねえ、どう? 因果崎? 大切な恋人がこれから目の前で死ぬところを見られる気分は」 まるで用意された台本をただただ読み上げるかのようにして、黒羽は言葉にたった一ミリも、塵程度も、黒か白かも判別できない燻み切った色を含んだ声音で訊いてきた。 何を言っているんだと思った。どうだって? ふざけるな。律は僕にとって大切な恋人だ。それをお前はこれから殺そうとしているんだ。答える気になれるはずもないだろうが。「大丈夫だよ、神くん。ねえ黒羽。私が死ねば二度と神くんのことをイジメないんだよね? 苦しい思いをさせたりしないんだよね?」 黒羽に再度確認した律の足元には、つい先程、無理やり書かされた遺書と脱いだ革靴が丁寧に揃えられて置かれていた。「バカ言うな律! コイツの言うことを本気にするな! 頼むから……頼むからそれだけはやめてくれ!!」 ゆっくりと、律は頭を振った。 僕の瞳の奥にある『何か』を確かめるようにして見つめながら。「いいの。神くんのためなら何だってできるから。だって私、神くんの彼女だもん」「だったら僕の言うことを聞いてくれよ! 何だってできるんだろ! それに、お前が死んだ
Last Updated : 2026-07-10 Read more