私は、客間へ御門智久を案内した。初めて足を踏み入れる美園家ではあるが、美園玲美の記憶が間取り図を私の頭の中に浮かばせている。 「御門様、お一人になりますが、ごゆるりと」 先ほど、御門智久が父に渡していた家宝の茶器を炊事場へと運ぶ。 「玲美様」 剣持烈に呼び止められ、振り返る。 「どうかしたか? 烈」 何やら、言いにくそうに私を見ている。 「言いたいことは、何でも言うといい」 私の言葉に、剣持烈は一呼吸置いてから口を開いた。 「はい。本日の玲美様は、以前の玲美様とは異なるお方のように思えてなりません。会場へ向かう車内で眠りにつく寸前、『痛い、熱い』と小さく呟き、瞳を閉じられました。あのような苦悶の表情を、私は見たことがありません」 私は、自分の唇から零れ落ちたはずのその言葉を、耳にはしていなかった。 きっと、あの声は美園玲美のものだ。私がこの身体に入り込む瞬間、かつて私が味わった炎の熱さや、刃に刺された痛みが、器である美園玲美の魂と合致してしまったのかもしれない。 「心配かけたな。ただの悪夢だ。案ずるな」 私は努めていつもの美園玲美を装い、背を向けた。 剣持烈の言葉は続く。 「玲美様、そのお言葉遣いもそうです。誠二とも、帰りの車内で話しておりました。今の玲美様は、私たちが幼い頃からお守りしてきた美園玲美様ではないのではないかと……」 剣持烈はそこで言葉を切った。疑念だけでなく、かつての美園玲美への愛情と、今の私に対する奇妙な信頼が混ざり合っているそのような瞳をしていた。 敏感な者には気づかれるか。甘かったのか。それとも彼らの忠誠心が私をそう見させるのだろう。 「けれど……」 剣持烈はいつも、言葉を区切る。私が傷つく言い方を最小限にしようとするところは、時にじれったささえ思えるが、それがこの剣持烈という男の魅力だ。 「けれど?」 今の私にとって彼らは、父を打つための重要な相棒だ。美園玲美ではないと断定されたとしても、私の言葉に従うならば、それでいい。 「今の玲美様が、私たちの新しい主であるならば、私はどこまでも従います。それがどのような形であれ」 「そうか……私が入れ替わっていても忠誠を誓う、と」 私は突きつけるように問いかけた。 剣持烈はわずかに呼吸を止めたが、深く頭を
آخر تحديث : 2026-07-15 اقرأ المزيد